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意識の誘導

(さて転移呪文を使って武器を呼び出す、面白い使い方だ……ではあの大量の武器にはどんな意味がある?)


 魔物を目を通して武器群の中央に立つ勇者を見つめるジュガン。


(……こちらの出方を窺っている……? やはりこの殺気は気のせいじゃない)


 ジリジリと間合いを詰める魔物の群れの動きに、エインは緊張を高めた。


 この武器展開の最大の理由は敵に対して大量の情報を与えることでその動きを制限するためであった。


 こちらの思惑通り敵の動きが鈍ったことで、エインは敵の中に獣を超える知性の存在を確信する。


(……魔王か? いやこの感じは何か違う、魔物を操るタイプの幹部型か?)


 だとすれば司令塔を潰せば瓦解させることができるが、敵の指令の流れがエインには見えなかった。 武器展開からの静止の動作が一律であり、指示が飛んだ痕跡がない。


(思念で一度に命令を飛ばしている? ……)


 エインはこの思考に対して引っ掛かりを感じたが、すぐに頭を切り替え目の前の敵に集中する。


 いずれにしろスペックではこちらが圧倒している。 戦術すら必要ないほどに。単純な力押しで殲滅は可能だった。


 敵に動き出す気配がない事を察したエインは、まずこちらから仕掛けることにした。


 傍らに突き刺さった一本の槍を抜き出すと、全力で投擲する。


 紫電を巻き上げ直線状を貫通する槍。 それは500匹の魔物を蹴散らし30キロ前方の雪山の斜面に突き刺さった。


 続いて斧を抜き出し、同じように今度は横殴りに投射する。


 円盤のように回転する斧が進行方向上の魔物を切り裂いてゆく。


 どの武器にしても呪の装備には劣るが高性能な武器である。


 魔物の群れの中から狼型の魔物と飛龍が50匹ほど飛び出した。


 地上を駆ける30匹の銀狼、空を滑空する20の飛龍。


 その後方から魔物の魔導部隊が放つ炎弾が、空中に弧を描きエインへと迫る。


「……」


 エインは小さく息を吸う。


 そして体から紫電が弾けると同時にその場から消えた。


 駆ける銀狼を一瞬で切り裂き、その先魔物の大群に突っ込むと放射雷撃を放った。


 勇者を中心に放たれる全方位の雷撃が100を超える魔物の命を一瞬で飲み込んだ。


(!?)


 ジュガンはその動きに眉を寄せた。


 自分の作り出した領域から出た? 


 投擲をはじめた様子から、あのエリアから出ることはないと読んでいたジュガンは面食らった。


(……あの派手な武器展開は囮、こちらの意識を誘導するのが目的か? だとするとあのわずかな動きでこちらの介入を察したということか)


 後ろでジュガンの様子を見ていたシーキューブはふむと顎を指でさすった。


 ジュガンの駒が次々と消し飛んでゆく。


 エインに削られながらも敵の陣形が変化する。 前衛を耐久の高いトロルやオークが担い、その後衛で魔導軍が呪文攻撃を放つ。


 火矢の呪文攻撃がエインの肩に着弾する。


(……敵の陣形が安定してきたな)


 肩から煙をふきながらエインは目の前の敵を切り伏せてゆくが、その表情は険しかった。


 切り伏せても次々と前衛に出てくる肉壁、その背後からの魔法攻撃が徐々にであるがエインを捕らえ始めていた。


 一撃一撃の威力はそこまででもないが、前面の景色を吹き飛ばしてもすぐにこの形に戻り、継続的にこちらの魔力を削っている。


(敵の戦力は残り6万弱、この陣形に使用する魔物の数は200体ほどか?)


 一度崩せば再形成までに数百体は葬れるが、敵の全体陣形は散開しており、範囲呪文の効果が意図的に抑えられている。


 仮に敵が絶滅するまで呪文を打ち尽くすこともできなくはないだろうが、結果予測では自分の魔力が持つかどうか限りなく微妙だった。


(となれば、敵の頭を潰すのが手っ取り早い)


 エインはその場から高く跳躍する。


 空中待ち構えていたように飛龍がエインを囲み、炎弾を放った。


 着弾し空中で爆ぜる炎弾群。 その花火の中央、自身を囲うようにバリアを張りそれをしのいだエインは、自身が招集した武器群地帯へ向け、雷を落した。


 エインは情報の伝わる流れを確認するため、この落雷で敵の意識を一点に絞ろうと試みる。


 前半の武器展開がまだ敵の意識を割いていることはここまでの戦闘で感じていた。そこに別のアクションを起こせば思念波の気安さならば間違いなく指令が飛ぶはずだった。


 通常魔物が伝令を飛ばす手段は主に遠吠え、ジェスチャー、口伝、思念波の四つであり、上位の魔物になるほど手段は後者側となる。


 いずれの手段にしても発信源は存在し、遠くの部隊ほどその伝達は遅れる。今回の伝達スピードと痕跡の少なさから思念波にあたりをつけた勇者は注意深く大軍を観測した。

 

 いかに最速の伝達手段である念波といえど、発生源からの距離によるラグが間違いなく発生するはずであり、それは司令塔を中心に波紋状に拡散する。


 敵の挙動を見ればその中心が割り出せるはずだった。


 しかし


 瞬間、その一瞬、すべての魔物の意識が同時に雷の落ちた場所へ向いた。


(――!?)


 どこか既視感を覚えながらもその様子にエインは目を瞠る。


(まさか……すべての魔物を一斉に操っているのか?)


 一介の魔物にそんな芸当が可能だろうか? いや、この違和感はやはり……


 エインは覚悟を決めた様に目を細めると、そのまま重力に従い落下し、また陣形の中央に着地する。


 襲い掛かる魔物を放射雷撃で吹き飛ばすと、口を開いた。


「ここの魔王とは別の魔王が介入しているな?」


 エインの言葉に、魔物の動きが止まった。



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