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重なる後遺

 勇者の放つ雷撃呪文が直線状に突き進み地平の先まで埋める魔物をまとめて吹き飛ばす。


 北の雪原地帯、体から紫電を噴き上げ、魔物の大軍を睨み付けるエイン。


 腰に差した妖刀を逆手で抜き出し、その場から消える。


 蹴り出しにより爆裂する大地を背景に、エインは矢のように体を加速させた。


 陣形の中央に風穴を開けられ混乱する魔王軍の前衛、防具に身を固めたオークの首吹き飛ぶ。


 噴き出す血が刃の形に変形し、直線状を切り裂いてゆく。


 エインの持つ妖刀《血飛沫》は切り裂いた血液を自在に操る呪いの刀剣である。


 この刀剣に込められた呪により使用者は常時強烈な殺人衝動に苛まれることになるが

 

 幾重にも呪を受け続けた後遺症か、


 はたまた魔王から受けた半年にも及ぶ拷問による精神の摩耗か、


 明確な理由は定かではないが今のエインは呪の装備一つであれば理性で制御することができた。


 通常の武器ではエインの戦闘に耐えることができず、伝説の剣を失った今となっては呪を纏った武器が勇者のメインウエポンとなっていた。


 呪の装備は頑強でありその威力は強力で。 たった一振りで前衛20匹を屠った。


 敵を切り裂くたびに血が噴き出し、噴き出した血が刃となって周囲を切り裂く。


 白髪を揺らし、血走った目で何かに追われるような切迫した顔で、エインは目の前の敵を切り裂き吹き飛ばす。


 大量の赤い血液が龍のように空間をうねり、敵の前衛を薙ぎ払ってゆく。


 空から飛龍部隊が炎弾を放つ。 対しエインの放つ雷撃の光線が炎弾を貫き飛龍の頭を吹き飛ばした。


 貫通した光線がそのまま雪雲に消えると、雲が黒雲へと変貌し、周囲一帯に雷を落す。 空を浮遊する飛龍が10体、地上部隊が100体ほどその稲妻の餌食となる。


 敵を切り裂き溢れ出した血を刀身に集め、10メートルほどの巨大な血液の刀身へと変貌させる。


 空から襲う雷に混乱した魔王軍へ向け振るわれる大刀が、エインの目の前の景色を平らに変えた。


 胴体から分断され血を噴き出す30体の魔物。 エインは紫電を散らしながら体を回転させ血を巻き取りながら斬撃を繰り返してゆく。


 赤い竜巻は瞬く間にその大きさを増し直径200メートルを超えた頃不意に崩れるように周囲に散らばった。


 雪原を赤く染める。 その台風の目に位置したエインは、砕け散る妖刀をじっと見つめる。


(無茶をさせすぎたか)


 崩れるように手から零れる刀を見つめ、エインは目を細める。


 まだ呪の武具は残っていただろうかと、そんなことを考える。


 10万を数えようかという大軍に対してエインの魔力量だけでは殲滅まで足りず、大軍相手の場合はこうして呪いの武具で殲滅数に下駄をはくのがエインの常であった。


 この一本で魔力を抑えながら3万匹ほどの成果を上げたと考えれば十分役目を果たしたと言えるだろう。


 竜巻を逃れた魔物達が、エインの様子をうかがう。


 その目つきが不意に変わった。


(……! 空気が変わった?)


 エインは視線を前方へ移す。


 敵軍に動き出す気配がない。


(いつもならここらで撤退がお約束だが……やはり妙だな)


 エインは両手をバキリと鳴らすと転移呪文を唱えた。


 地平線の先から無数の光が伸び、エインの周囲に突き刺さる。


 それは槍であり、剣であり、斧だった。その数132本。


 今までの旅で集めた武器を自分の周囲に転移させ、その中から剣を抜き出しながらエインは敵の動きを見つめる。




 大魔王城を囲うように立つ七つの石造りの祠、その内の一つの中にて。

 

 祠の中にそびえ立つ祭壇の最上部中央に、青い渦を巻いた球体が浮遊していた。


「ふーん、面白いじゃん」


 目を閉じてその青い渦に手をかざした魔王が一人、ジュガンは不敵に笑う。


 その背後、腕を組んだ姿勢でシーキューブがその様子を見つめていた。

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