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新たなる局面

 勇者拘束10日目


 ルドルは7日おきにに戻ってきていたエインが帰らない異常事態をすぐさま国王に報告した。


 事態を深刻に受け止めた王により緊急会議が開かれたが、人間側の残存兵力などを理由に難色を示され勇者奪還作戦は前向きには進まなかった。


 防衛優先派と救出優先派に別れ意見が対立し、国防側が優勢のままその日の会議は終わったってしまった。


 国防側の主な意見として


 まだ現状勇者が捕まったと決まったわけではない。


 強力な呪い装備による戦略を魔族である魔王が攻略できるとは考えられない。


 最後に勇者を目撃した神父の話によれば今までにない速度で魔王城へ踵返した事実から、対魔王戦において急いで戻る必要があるほどのチャンスがあったと考えるのが妥当であろう。


 であれば感染する暇すら惜しんで魔王へ戦いを挑んだとしても不思議はない。


 つまり勇者は魔王を倒し狂化したまま魔王城を彷徨っている可能性も高く、救出にしろ回収にしろ捜索隊の派遣は危険と言わざるを得ない。 


 いずれにしろ魔王軍の動向を知ってからではないと現状動くことはできない。


 というものだった。それは現状の判断材料から見れば筋は通っていたが、ルドルにはエインが助けを求めているように思えてならなかった。






 魔族に従いながら、なぜあの神父は神系呪文が使えた?


 わからない


 解呪やオルガの治療から少なくとも神父は、女神様への信仰を捨てずに魔王に従ったことになる。


 どうやって?


 わからない


 ……なぜ女神様は……神父に力を与え続けている?


 わからない


 捉えられてから10日が過ぎた、拷問はない……何もしてこない、なぜ?


 わからない


 神父の最後の言葉の意味は…


 …わからない


 わからないことが多すぎた


 エインはただ恐怖した。


 ギィと牢が開く音がした


 エインはビクりと視線を上げる。


「勇者、元気そうだな」


 そう話すゼアクスの傍らには、小汚い布の服を着た若い女がいた。


 女は恐怖と戸惑いの入り混じった表情を浮かべながら、あたりを見渡している。


 エインはこの女性に見覚えがあった。 かつて旅の途中で救った村の娘だ。


「この女に、貴様の面倒を見てもらう」


「……?」


「入れ」


「ヒッ」


 女は、エインのいる牢の中に突き飛ばされた。


 牢が閉まる。


「せいぜい世話をしてもらうといい」


 ゼアクスはそういうと、踵を返し去って行った。


「……」


「……」


 エインは、女を見る。


 痩せた、頬のこけた女、その女は目を合わせると弱弱しく微笑んだ。


「勇者様…こんな形ですが、またあえて光栄です」


「…」


 エインは、猿ぐつわを外すよう目で促す。


「勇者様、残念ですがそれはできません、勇者様からは見えませんが、それ鉄で錠がされとります……それにおらの親兄妹が人質になっとります、ただおらは、勇者様の世話ば命じられただけです」


「……っ」


「ふつつかもんですが…よろしくおねげぇします」


 エインは、またわけがわからなくなった。


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