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集中する魔力

(何か感づいたか?)


 歯を食いしばり手刀を全力で受け止めるエインを見つめ、魔王は測るように目を細めた。


「――ッっ」


 即死級の攻撃を前にエインは思考を中断し、魔王との鍔迫り合いをやり過ごすと後方へ飛んだ。


 魔王の追撃の軌道にアウルが立ちふさがる。


 激突する戦士の斧と魔王の拳に、大気が震えた。


 魔王と距離をとったエインは、 呪文を唱える。


「皆雷陣強化呪文」


 その呪文は戦士、僧侶、魔法使い。 勇者の仲間の魔力を集め勇者を強化する呪文である。


 呪文の発動の結果勇者の体から魔力がほとばしった、頭髪が発光し重力に逆らうように逆立つ。


 魔王との殺陣に舞っていたアウルの口元が僅かに緩む。


 勇者エインの奥の手にして最強の戦闘形態。 そのたのもしさを背中で感じた結果であった。


「!」


 横に飛び前方を開けたアウルと入れ違うように魔王の眼前にエインが迫る。


 今までとはくらべものにならない圧倒的な初速で繰り出された一閃を、魔王は屈むことで避けた。


 続く第二閃、勇者によって放たれるそれは、やはり今までの比でない速度と威力をもって魔王に迫る。


 魔王は魔力を腕の前腕に集中させ、繰り出される閃撃を腕をクロスさせることで防いだ。


 しかし、その威力を相殺できず、体が大きく後方へ吹き飛ぶ。


 続く三閃、音速の空中滑空の最中迫るその閃撃を、魔王はまたしても前腕で防ぐ。


「……!」


 四閃、五閃、六閃、刹那の間に繰り出されるその攻撃を魔王は腕の挙動のみで対処しきった。


 吹き飛ぶ魔王と並走するエインによって振るわれる剣撃と、魔王の腕撃の激突により、二人の通る空間には漆黒と稲妻の衝撃波だけが取り残され。まるで二人を追従するように次々と爆ぜてゆく。


 魔王の背が壁と激突する、それによって停止する体の滑空、目前には、伝説の剣による刺突が迫っている。


 対し魔王は、両の手の平で白刃取りした。


「!」


 白刃取りの衝撃波が黒と雷の魔撃を放出しながら波紋上に周囲を駆け抜けた。その中心、エインの腹部に、魔王のつま先がめり込む。


「……ッ」


 魔王に蹴り上げられ、上空にかちあげられるエイン。


 同時、アウルが投射したアックスが、ランの極聖呪文が、イリスの極大呪文が―


 ―三方から魔王へ迫った。


 対し魔王、漆黒の魔力を球体状に展開し、魔力のバリアを張った。


 すべての攻撃が、魔王へ届くことなく、バリアに阻まれる。


「究極皆雷撃呪文」


(詠唱時間を稼ぐことが狙いか)


 魔王の視線の先


 上空――エインから迸る魔力が、一瞬にして体から離れ周囲に拡散する、そして勇者の掲げた手のひらに収束、まるで光線のような極太の雷撃が、雷速でバリアを貼った魔王へ向けと降り注いだ。


「……!」


 勇者の全魔力を放出した一撃が、バリアを貫き魔王に直撃する。


 光のドームに包まれる魔王。


 やがて光が拡散する。


 同時、着地するエイン。


「……くそ」


 エインは着地と同時、顔を歪めた。


 そこには、傷つき、口の端から血を流しながらも、直立する魔王の姿があった。


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