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順応スル自我

 光球が、放射雷撃によって爆散する。


 そのタイミングで魔王の影が本体から分離し、光と衝撃に紛れてエインの背後へと回り込む。


 魔王の能力の一つ、自身の影を分離させその地点にワープする。


 その移動の際、物理的な余波は一切発生せず移動時間もゼロに等しい。


 しかし現状の勇者の野生の勘は侮れないものがあり、砕けた斧や、このような派手な攻撃をフェイクにし魔王は影を紛れ込ませていた。


 この方法で2度勇者を沈めている。


 しかし魔王は慢心しない。


 いつでも反応できるよう、特に移動直後には細心の注意を払い今回もワープを発動する。


 ワープ、同時、エインの刃が魔王の眼前に迫った。


(やはり)


 覚悟をしていた魔王は、その攻撃を体を斜めに傾け避ける。


 何か目の引く攻撃があった直後瞬間移動があることに、直観的に感づいているのだろう。


 避けに回り、体制を崩した魔王へエインの追撃が襲いかかる。


 嵐のような二刀流の乱舞。


「っ!?」


 その攻撃の鋭さに魔王は魔力を込めた手刀で受けきれなかった。 防御を抜け脇と腿に傷が走る。


 勇者の剣技がここにきてさらに荒々しさと鋭さを増していることに、魔王は顔をしかめた。


 咄嗟に影移動でその場から離脱。


 しかしエイン、すぐに転移した魔王へ飛びかかる。


「――!?」


 その対応の速さに魔王は目を瞠る・


(移動の母体が影であることまで気が付いている!? )


 想定を超えた勇者の動き、知能がそこまで高い印象は今までの戦闘ではなかった魔王に動揺が走る。


 本能のみで戦う存在が、そこまで注意力を払えるものなのか?―――と


 ワープ直後、複数の想定外の自体に魔王が混乱したコンマ数秒――


「……!」


 魔王は見た、勇者の髑髏兜の闇の奥――意思を持った瞳の煌めきを――


(まさかこいつ――意識を保った状態で――)


 魔力を込めた呪刃の双閃が、魔王の左上腕を切り飛ばした。


「ッ――」


 腕――余の――


「――キィサマァァァッ!!」


 激痛と共に、魔王の意識が怒りに飲まれた。


 右手から放たれた最大出力の暗黒呪文が、エインを一撃のもと消し炭にする。


「――しまった!」


 怒りによどんだ魔王の瞳が次の瞬間には正気に戻る。


 左腕の断面から吹き出す血を筋肉を圧迫することで止血する。


 血を流し過ぎたらしく、魔王は一度ふらりと立ちくらみした。


「……ッ」


 魔王の背筋に悪寒が走る。


(まずい……この状況は――)


 魔王は逡巡する。


 この状況、次の展開は容易に想像できる、ではどうする――どう――


 魔王の間の扉が勢いよく開き、全回復した勇者が襲いかかってきた。

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