学習スル狂気
魔王の間の扉が開く。
同時に魔王は自分の周囲に30の光球を召喚し周囲に浮遊させた。
エインが雄叫びを上げ迫る。
魔王はまず15発の光弾を、エインへ向け放った。
対し、エインの体が発光した。
「!?」
エインへ向け放たれた光弾が、着弾する前にすべて爆ぜた。
粉塵を突き抜けエインが魔王との距離を詰める。
対して魔王、周囲の残った15発の光球がエインへ向け放たれた。
同時、魔王は後方へ大きく飛ぶ。
そして先ほどの発光を意味を知る。
魔王の目がとらえた。エインの体から放射状に放たれる雷撃を。
それが、迫る光球をすべてを蹴散らしたのだ。雷光による目くらましの効果も、この距離になって初めて魔王は知った。
目を細める魔王へ向け振るわれる刃を、魔王はすんでのところで避ける。
この勇者、ただやみくもに襲ってくるだけではなく、学習能力が備わっている
この事実に魔王が舌打ちする。
放射上に拡散した雷撃にそこまでに威力はない、しかし、目くらましと若干のダメージが鬱陶しい、加えて先の戦闘で有用だと判断した光球の戦果が期待できない。
また一から戦術を組み立てなおさなくては
エインの振るう刃を屈んで回避、勇者は勢いもそのままに体を回転させながら、第二、第三の斬撃を次々繰り出してくる。
まるで黒い竜巻のように体を回転させ、二刀の刃が際限なく魔王を襲う。
その二刀の刃を魔力を込めた腕で捌き、エインの懐へ踏み込む魔王。
同時、エインが放射雷撃、超至近距離からのその攻撃に、魔王の体が刹那の間停止する。
その一瞬の隙―――しかし、魔王の放射暗黒呪文が、エインの体を吹き飛ばした。
床を滑りながらも足を踏ん張り、エインの体が停止―――矢のように迫る魔王の蹴りが、エインの腹部に突き刺さった。
口から血を吐き出しながら、エインは後方へ吹き飛び壁に体を激突させる。
魔王は以前と同様、連続蹴りで終わらせようとするが――
「ち」
エインの移動は早かった、激突した壁の反動を利用して移動し、魔王から距離を取る。
先ほどの蹴りを後方へ飛ぶことでダメージを軽減し、回避できる余裕を持ったようだった。
(同じ手は通じない? ならば、次の手を出すまでだ)
喉を鳴らすような唸り声をあげ、魔王の出方をうかがうエイン。
対し魔王は屈みこみ、自分の影の中に手を入れた。
影からすくい上げられる等身大程に巨大な斧。禍々しい装飾の施された、漆黒の魔力をほとばしらせる斧だ。
エインはその危険性に本能的に気が付いたのか、じりと半歩後退した。
その背後に、魔王
「!?」
魔王は後方へ飛び、斧を振るう。
斧の刃は勇者に触れない、しかし斧から放たれる黒い斬撃の衝撃波が、エインの体に直撃した。
黒い魔力がほとばしる、漆黒の爆発の爆心地、黒い煙を上げながらエインの体が膝から崩れ落ち地面に倒れた。
魔王軍に捉えられた人々は、皆魔王城地下の牢獄に詰め込まれた。
しかしロドラルは皆とは別の独房に入れられる。
一人になったロドラルは、魔物に無残に殺された人々を悼み、捕まった人々の無事を祈ることに一日の大半を費やしていた。
ある日ロドラルの独房が開き、乱暴に連行される。
連行された独房の前で、ロドラルは目を瞠る。
数々の呪いを重ねられた青年が、鉄の錠で拘束されていた。
ロドラルの傍らには、長身の男が立っていた。
黒髪長身の男、禍々しい魔力を放つその男が言う。
この男の呪いを解呪しろと。
ロドラルは従わなかった。 魔物の命令に従うなどそれ以上の背信行為があるだろうか?
それにこの青年は、呪の気配から感知しにくいが勇者であることがロドラルには分かっていた。
やはり戦っていたのだ。
こうなった経緯は分からない、しかし一つ分かっていることはこうやって自分を頼らざる得ないほどに魔族は苦しんでいるという事だった。
そこまでわかっていて協力するなど、それほどの女神様への裏切りがあるだろうか?
女神様の前で、そんなことは出来るはずがなかった。
その日より、ロドラルと拷問との闘いが始まった。




