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勇者と魔王


「二人は信仰を捨てた、それだけのことだ」


 エインの問に対し、魔王はどこか誇らしげに応えた。


「そんなバカな…」


 エインは一瞬、魔王が用意した偽物の可能性も考える。


 転生からここに戻るまで約3時間、エインの脱走発覚から二人をダミーと差し替えるまでには十分な時間だろう。


 しかし、魔王の自信に満ちた顔が、その考えが甘いモノだと告げているようにも勇者には思えた。


「でたらめではないさ、現に死んでいるだろう?」


「……リールは…どこだ」


 エインはもう一匹の仲間のことを訪ねると同時に、思考を進める。


 差し替えるメリットは自身の動揺を誘うためだろう。


 だが圧倒的な戦力差のある相手に対してここまでの小細工をする必要はない。


 自分が魔王の立場であればこんな手間は絶対にかけないだろう。 


 それに


 本当に死んでいれば差し替える必要などないのだ。


「リール? ああ、あの銀狼か、奴ならもうこの世界にはいない」


「もういない……どういう――」


「そんなことよりもだ」


「!」


「そんなことよりも勇者よ、この二つの死体に、どうやって信仰を捨てさせたか教えてやろうか?」


 魔王はにやりと笑った。


 その顔を見たエインは、観念したように腐った死体へと視線を向けた。


 確認は簡単だった。 その腐肉の塊にはアウルの黒い毛髪とイリスの赤い髪がこびり付いていた。


 その造形はどう見ても急造で用意できるものではない。


 魔王の自信が


 二つの肉塊が


 エインに二人の死を嫌がおうにも自覚させた。


 そしてそう自覚するとともに湧き上がる事実がある。


 想像を絶する拷問が、あったのだと。


 信仰を捨てるほどの


 使命を捨てるほどの


 それは一体、どんな――


 エインの視線は、笑みを浮かべる魔王へと戻った。


「やっと簡単な事実を飲み込んだか?」


 魔王のその言葉を聞いた瞬間、それまで理詰めでなんとか抑えていたエインの理性が吹き飛んだ。


「――――魔王ォォおぉっッ!!」


 咆哮と共にエインは地面をける。 激情と共に剣を振り上げる。


 魔王は手刀で受け太刀。


 剣が折れた。


「――」


 魔王の拳がエインの腹部にめり込んだ。


「がッ」


 エインの体がくの字に曲がり浮き上がる。


 一瞬でエインの背後に移動する魔王。


 そして放たれる蹴りがエインの背に着弾。


 エインは海老ぞりに体をそらせ、ソニックブームをまき散らしながら吹き飛び、壁に激突した。


 口から血を吐き出し、白目をむき、体をピクピクと動かしながらその場に倒れるエイン。


「拷問から抜け出したばかりで、戦闘の勘も鈍ったお前が、一人で、伝説の武具もなしに、敵を前に激情し、理性を失うとはな……貴様、どうやって余と戦うつもりだったのだ?」


「……」


 アウル……イリス……――


 薄れゆく意識の中で、エインの目に変わり果てた二人の姿が映り、やがて闇に閉ざされた。

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