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fall wall

作者: ここあみ。
掲載日:2018/02/04

「fall wall」


僕たちは、出会った瞬間から“恋人”だった。



その時の僕たちは、決して「主役」なんかではなかったけれど。


寒空の下で煌びやかな光を帯びている、いかにもデートコースというようなビル街で僕たちは出会った。



「撮影、長引きそうですね」


このドラマの主演は今人気の俳優と女優で、タイトなスケジュールの間を縫って撮影に挑んでいるらしく、待ち時間はかなり長そうだ。


「そうですね、寒いから風邪引きそう…」


彼女B、と名付けられた君は、観測史上最低の気温を記録したらしい今宵でも、手袋をつけられずにいた。


「手袋、衣装にないんですね」


「そうみたいです、ここまで冷えこむとは誰も思いませんからね…」


ううむ。

なんとなく弾まない会話を噛み締めながら、リハーサルを迎える。


“はい、じゃあお願いしますー”


スタッフの掛け声とともに、エキストラが動き出す。


「じゃあ、手繋ぎますか」


「ですね」


彼女の手は、冷たくかじかんでいた。


「心が、暖かいんですね」


「まあ、そんなところです」


衣装の白いマフラーにうずめた君の頬は、赤く染まっていた。




“はい、OK!本番いきまーす”


時の流れには逆らえない。


本番が終わる、ということは

彼女との一夜限りのこの “関係” も終わる、ということだと気づいたのは、スタッフのその掛け声がかかった時だった。


どちらからともなく手を繋ぐ。

今日だけで五回は手を繋いだのに、明日からは隣を歩くことすらない。

ましてや君の名前さえ知ることはない。


やっぱり、不思議だ。



「これ、、、あげます」


「カイロ、、??」


僕は咄嗟に、ポケットに入れていたカイロを渡した。


「手、、、寒そうだったから」


「ああ、ありがとうございます」


「お疲れ様でした」


「こちらこそお疲れ様でした」




カイロに書かれた拙い文字は、君の元に届いただろうか。


白いスヌードにうずめた僕の頬だって、きっと赤く染まっていたに違いない。


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