怪しい人物 2
最早自業自得過ぎて、ですよねって感じる私がおかしいのだろうか……。
当の本人は、お姫サマはおしゃべりだし、王子サマは見る目ないですよねぇ、と笑いながらも何故かティエリア・ウィッツ・カッフェルタとノア・ウィッツ・カッフェルタにやれやれと言わんばかりである。
なんでだ。
私だって自分の部下がお客様と言う名の要人に明らかになんかしてたら言うわ!普通に報告するわ!
疑われるのは妥当だよ!むしろ疑わない方がどうかしてるよ!
もう、さ、人のことおちょくって来る罪で一回捕まってカッフェルタの牢で自分の言動について反省するといいと思う。いい機会だし。ね?
だからさ、だからもう分かったから……カッフェルタの王族の悪口言うのはやめて!
王族って頭悪いか腹黒かのどっちしかいないんですかねぇ?とか私に聞くのやめて。そして私に同意を求めるのもやめて。
「……二人とは誰のことだ」
「あ、この話は終わりですか?」
「……」
「ひん曲がった性格の奴と元聖騎士隊長サマです」
「理由は」
「そうですねぇ、王子サマに直接聞いた訳じゃないんで王子サマの考えは分からないので多分ですけど、分かりやすく後ろ暗いからじゃないですか?あとの二人は白ではないけど、黒とははっきり言えないじゃないですか。なので、明らかに何か裏のありそうなのを潰すって言う分かりやすさ重視の短期決戦のつもりじゃないですかねぇ。だからと言って、残りの二人が怪しいには変わりないと思うんですけどねぇ……。まぁ、嘘の情報で統率をぐっちゃぐちゃにした騎士は謹慎と言うか監禁されて尋問と軽めの拷問の最中なんですけど~」
「……そう」
そうですか、監禁で拷問の最中ですか、そうですか。
……さらっと言ってくれやがって。こえぇわ。
軽めの拷問ってなんだ。拷問に軽めも何もなくない?
何、軽めって。軽く小突くとかなの?いや、軽くと言っても拷問だぞ。拷問がそんなモノの訳がないじゃんか、バカなの私。だったら……って、待て待て私。怖いこと考えるな私。本題は拷問ではないから。
こめかみの辺りを指先でグリグリと揉みながら拷問云々を頭から追い出して息を吐く。
「それで、もう一人は放っておくつもりか?」
「そばかすクンですか~。そばかすクンについては、ちょっとした時間を見計らって僕がディアンとして接触してオトモダチになってみようかな~って思ってます。ほら、僕はこの通り人に必要とされて人に好かれる人間じゃないですか~」
「……」
クライは見てくれとばかりに両手を大きく広げて、こてんと首を傾げた。
……ん?
え、ん?なん?なんて?人になんて?
もしかして今、人に好かれるとか聞こえたけどそう言った?聞き間違いじゃなくて?あ、そうですか、聞き間違いじゃなかったんですか……へぇ。
表情筋が死んでいたお陰で真顔は維持されていたからほぼずっと同じ顔だったけど、ムズッと開きそうになった口を貝のように閉じて堪えてなかったら、おま、何処が!?的な突っ込みを入れるところだったぞ。
アレだよ、真顔のまま本性が飛び出るおかしなことになるところだったよ。危ない危ない。
リュミナスとリュミナスの狭間の何とも言えない目でクライを見ていると、ちなみにディアンはお姫サマの護衛以外の時、必要時以外はグーグーと寝ていてお部屋から一歩も出ない予定なので、その手を使うことにより、代わりに僕は晴れて自由の身となりイデアで人気の店に酒を飲みにお出かけする予定です、と至極真面目そうな雰囲気を出しながら締め括った。
……いや、知らないし!
そんなニヤつく口元を引き結んでキリッと真剣そうな雰囲気を醸し出されても困る。内容が内容なだけに真面目さを微塵も感じないんですけど。
え、何?最終的に言いたいことはディアンさん(本人)は生きててぐっすり寝てますって話なの?クライがお出かけするって話なの?
あと、取ってつけたように女神サマも一緒にお酒どうです?って誘うな。行かないよ。
というか話がまたおかしな方向に向かっていってるから必要ないことを混ぜて話さないで欲しい。私、割と流される方だからやめてくれ。
特にクライのお出かけ話とか要らないから!本題は何処に行った!
「……四人が城から頻繁に町に出ていたという理由は調べがついているんだろうな」
「これもダメですか~」
「……私は調べはついているのかと聞いているんだが?」
「まあまあ、事の始まり前の話と彼らの知り合いに聞き込んだ程度のことでしたらお教え出来ますから焦らないで下さいよ~」
「うるさい。知ってることは全て吐け。言っておくが次にくだらない事を言ってみろ。二度と私の前で話せない様にしてやる」
脅しじゃないぞ。そう……私もやる時はやるんだ。
盾魔法で盾を張って近寄れない様にな!
ノーズフェリの城と宰相様に作ってるくらいの盾をオーバーヒートで鼻血を垂らそうが吐血をしようが死ぬ気で作って、ガンガン弾いて、少なくとも私の半径一キロは近寄れない様にしてやるんだからな。
なんだったら私がイデアにいる限りクライは城の中にすら入れなくするんだからな。
だからこれ以上、返事に困る発言をするんじゃない!
「イヤですねぇ。ちょっとした世間話で場を和ませようとしただけじゃないですか」
「……」
「ふむ……それじゃあ、真面目な話します?」
「……」
「知ってる事はなんでも話しますからそんな睨まないで下さいよ。それで、どれから聞きたいですか?」
問答無用とばかりに盾魔法を展開させるべくスッと手を上げるとクライは速攻で両手を降参とばかりに上げてまた軽い謝罪を口にした。
謝るくらいなら初めからそうして!こっちも命掛かってるんだからね!
この気持ちどうしてくれようか、と睨み付けながらも、盾魔法を展開するのために向けた手をグッと握って堪え、ゆっくりと手を下ろして、何でもいいからさっさと話せ、と一語一語の語気を強めて伝えた。
「それじゃ、順番にひん曲がった性格が顔に滲み出ている男の、あ、名前は知りたいです?」
「要らん」
「じゃあ、長いのでひん曲がりクンとしておきますね。で、そのひん曲がりクンなんですが、たまに実家に顔を出しに行って、大体ナンパをしに町に繰り出してました」
「……何?」
「ナンパです」
「……」
「ナンパをしに町に出てました」
いや、そんなに念を押すようにナンパナンパ言わなくても二回目を聞いた時点で理解したたけど……え、内乱の貴族が云々って話だったはずじゃないの?え、ナンパ?
いや別に、どんな風に人が人に好意を伝えるかっていう方法については私は気にしないけど、今回ナンパ関係あるの?
ノア・ウィッツ・カッフェルタだって、清廉潔白な印象を大事にしてるっぽいカッフェルタの聖騎士がナンパしに出かけてるって聞いたら、そりゃ、その、ひん曲がり君?の騎士としての態度としては微妙な気持ちになるけど……ハッ!もしかして、ナンパには何か裏が?
ナンパ相手が実は内乱を起こそうとした貴族と裏でつながりが……と口元に手を添えてジッと考えていると、クライは補足とばかりに口を開き続けた。
「ひん曲がりクンの近しい同期の騎士たちに聞き込みしたんですけど、ひん曲がりクンってばかなりの美女好きらしくてですねぇ、名ばかりの貴族っていう身分を振りかざしてこの町一番の美女を口説き落として、自分のモノにしようと相当お金をつぎ込んでいるらしいです。つまり……クズですね!クズ!」
「……」
「でもですねぇ、とある事情によってひん曲がりクンの家ってまともに使えるお金がないはずなんですよ。なのにひん曲がりクンは女にお金をつぎ込んで、ひん曲がりクンの家も変わらない融資を受けて貴族の端くれをやり続けているわけです」
「……」
「では、どうやって融資を受け続ける約束をしてお金を得ているか」
「……」
「もちろん調べましたよ~。まずは事前情報としてすこ~し前までとある領地に堅実なお仕事をするまともな領主サマがいたんです。けどですねぇ、きっかけは前妻サマがお亡くなりなったことでしょうねぇ。領主サマが意気消沈して仕事に手もつかなくなってしまったんです。そこで立ち上がったのが、前妻サマの息子サマ。息子サマは奮起して右も左も分からない中、頑張って切り盛りしていらっしゃいました。心温まりますねぇ。しかし、そこへ明らかに前妻サマの後釜を狙って後妻になった後妻サマが!後妻サマは、弱った領主サマに付け込んで、前妻サマの息子サマと同い年のひん曲がりクンを連れて後妻サマに収まりました。そして、父の為、領民の為に頑張る息子サマを気遣うふりをし、言葉巧みに遠~くの学校へと追いやり、後妻サマが領主の代理と名乗りあれやこれやと口出しをするようになり、ここからがさぁ大変!」
「……」
「領民の為にと使う筈だったお金で自分の溺愛する息子のひん曲がりクンを領主にせんと彼方此方に根回しをするわ、湯水のように散財するわで、遠くの学校へと追いやられた息子サマが気付いた時には、あっという間にカーロ家は火の車。戻られた息子サマはすぐに領主サマから許可を得て後妻サマの口出しを禁止され、一切の金の使用を禁じられました。でも、そこで諦める様な見栄っ張りな後妻サマではありませんでした。そうだ、ひん曲がりクンを騎士にして武勲を立てさせて、領主サマの爵位をひん曲がりクンに引き継がせ、今一度ひん曲がりクンを領主の地位へ!と。そうして、後妻サマはひん曲がりクンが夫の亡き後、あ、死んでませんよ?……亡き後、次の正式な領主はひん曲がりクンになると噂を振りまき、ひん曲がりクンが領主になった暁には個々のお隣にあるカーロ家の領地を~、と美味しい話をチラつかせ、ほんのりと後ろ暗いことをしている、とある貴族を口説き落とし、見事!融資を得たのでした~。めでたしめでたし」
シーンとした中に、パチパチパチと乾いた拍手の音が響く。
……全然めでたくない。
息子様が可哀想すぎるし、後妻の人が酷過ぎる。そして、ひん曲がりクンもなんなの!酷過ぎる!
しかし、なんだ。
クライの喋りが途中から語り口調になった上に、私には起こりえない話過ぎて、どう聞いても若き領主が領地を立て直す壮大な物語にしか聞こえないんだけど。主人公は間違いなく息子さんだった。
物語の規模はテオドール物語とは違って領地内の話だけど、続きが気になる。
本はいつ出る予定なの?私全巻買う……じゃない!
そうじゃなくて、ひん曲がり君とお母さんである。
ひん曲がり君が声を掛けてる相手の女性には裏があるんじゃ……とか考えすぎていた私恥ずかしい。
ナンパ以外の情報なかったけど、ということは本当にナンパだったってことなんでしょ?最低だな……うん、最低だな!
大体、ひん曲がり君のお母さんどうなってんの?頑張り所が違ってませんか?
お金でどうにかする前に……って言うかお父さんだよ!お父さん頑張って立ち直って!前の奥さんが大好きだったのは分かるけど、息子さんが、息子さんがスゴイ大変な目に遭ってるよ!
むしろ、私が息子さんの援助に───って、なんでだよ!なんで心打たれて敵の貴族の援助に乗り出そうとしてるの私!
ぐむむ、と顔を顰めている私を置いてクライは次の人物について話し始めた。
「それじゃあ、次はそばかすクンですね」
「……」
「そばかすクンの基本情報も話しておきましょうか。そばかすクンは市井の、このイデアからの出の騎士です。志望動機は父の仇に~って言うのもあるでしょうけど、表向きは国境で自国を守る騎士に憧れたからってことになってます。気が弱いらしくて前線に立つこともなくてもっぱら裏方ですけどねぇ。とは言っても、聖騎士隊に入れる程度の力はあるんですけど」
「……」
「それで、お出かけの理由ですけど、そばかすクン、色んな所を回って歩いてるんですよ~。例えば、足腰の弱いおばあさんの家とか、孤児院とか、頑固なオヤジのいる肉屋とか、兎に角地元だからなのか顔が広いんですよねぇ。あ、騎士たちの中でも評判は悪くないですよ。ただ気が弱すぎるって意見が多いんですけど。聞けば聞く程、そばかすクンってば場への馴染み方が本当に僕らのような仕事に向いてますよねぇ」
「……そいつの何処が怪しいんだ」
「気持ち悪いくらい顔が広すぎるんですよねぇ。元々そばかすクンは出歩いていたし、最近よく出かけるようになった理由も、聞けばイデアの端辺りに住む友人が体調を崩したのが心配だったからって聞きましたし。だからなんですかねぇ?騎士隊に入った時から町への顔出しはずっとやってることだったし、他人からの評価も悪くないから外されたんでしょうか?僕からすると複数の場所を経由することで本命をカモフラージュしてるみたいに見えるんですけどねぇ。───まぁ、こんなことになるなんて思わなかったし、あんまりにも平凡過ぎて山も落ちもないし、つまんなかったんで僕、そばかすクンのことこれ以上のこと調べるのやめてすぐ切り上げちゃいましたけど」
こんな面白いことなるならもっと調べたんですけど、後が詰まってましたんで仕方ないですよねぇ、とクライはケラケラと笑い声をあげた。
さっきの語り口調はなんだったんだってくらい一番まともで真面目な見解だと思ったらコレである。
何故私は上げて落とされるみたいな気分を味わわなきゃいけないんだ。なんか勝手に酷く裏切られた気分になったわ。
「えー、次は嘘情報の騎士クンでしたねぇ。なんか、長いですから彼の一番印象的な所が眉毛だったんで、太眉クンと呼びますね。で、その太眉クンなんですけど~、どうやら病気を患ったようで、そのことを上の人間に隠してコッソリと町の病院に通ってました」
「病気……」
「町の医者も中々なもので病名は全然吐いてくれなくて正確には分からなかったんですけど、多分、聴力系でしょうねぇ。まだ聞こえているみたいですけど弱って来てるんだと思いますよ。呼び声に反応しなかったことが多々ありましたし。たまに聞こえなくなるんでしょうねぇ。僕、仕事中に何度か近付いて仕掛けて確かめてみたんで間違ってないと思いますよ~。その時はボーっとしていたって誤魔化してましたけど、あれは聞こえてなかった反応でしたねぇ。聖騎士隊専属の医者にかからず、町の病院にかかっていたのも隠したかった為でしょうし。町に出る理由も耳のことは一切触れず、年取った親が心配だから様子を見に行くって言っていたらしいですから。この仕事って命が掛かってますからねぇ、いざという時に指示が聞こえなかった、って言うのは通じないですし」
「……だったら何故未だに働いている。病気を知った時点で前線から引かせるべきだったろう」
「え?そんなの僕が報告してなくて誰も知らないからに決まってるじゃないですか!やだなぁ~女神サマってばアハハッ」
やだなぁ~じゃないわ!
ソレは報告すべきでしょうが。
別に辞めさせなくても、耳が回復するまで、もしくは聞こえなくなっても補助とかそっちに回ればいいんだし、そのまま戦場に立ち続けたら危ないじゃん。カッフェルタっていうか、クライは何考えてんの。
そもそもクライはカッフェルとスクレットウォーリアのどっちの味方のつもりなの?
今更だけど、めちゃくちゃスクレットウォーリアに加担してるようにしか見えないんですけど。
今のこの状況もそうだけど、率先してめちゃくちゃ内部情報を敵の一番教えたらダメな人間にペラッペラと話してるし。いや、外の状況が全く分からない上に、カッフェルタの事情を知らない私的にはありがたいことだけれども。
だけど、そんなカッフェルタに不利なことし続けてると謀反の疑い掛けられるし、それでいいのかと髪に隠れた目をジッと見ていると、クライは不気味に歯を見せて笑った。
───コワッ!急にコワッ!
「そんな頭がイカレてる奴を見る様な目で見ないで下さいよ~。面白そうなことになってたから、今後どうなるかな~って泳がせていただけなんですから」
「……何?」
「いえね?ひん曲がりクンが狙っている美女がいるじゃないですか?その美女は、どうやら太眉クンが好きみたいで。ほら、もうそれだけで面白いじゃないですか~。だからしばらくしたらどう進展したかを見に行こうかと思って放置してただけですよ」
……ねぇ、その優先順位おかしくない?ねぇ!
カッフェルタの騎士たちの命が脅かされるかもしれない事態とその三角関係の行く末みたいなのだったら断然前者だよね?前者の方が優先順位が高いよね?違うの?
うちの子たちの悪女(男)作戦の時もなんか異様に食いついてたけど、なんなの。女子か!恋愛ゴシップ大好きか!
ビックリするくらいくだらなくて脱力感が否めない。なんなの……。
「それでは最後に元聖騎士隊長サマ……元聖騎士隊長サマだけ仮名が元聖騎士隊長サマって言うのは仲間外れっぽくて可哀想だし長いですから、そうですねぇ……ちょっと目が落ち窪気味なんで落ち窪サマですかね。どうです?」
「どうでもいい」
「じゃ、落ち窪サマで。あ、その落ち窪サマのことですけど、女神サマと一緒で戦場には出ないタイプの人なんですけど……存在は知ってます?」
「当たり前だろう」
「あぁ良かった。流石に王子サマが来る前までは戦ってた相手ですからねぇ!忘れられたら可哀想過ぎますし!まぁ、忘れられていたらいたで僕としては面白いからいいんですけど、アハハッ」
「……」
「おっと、コホンッ。えーっと、その落ち窪サマの怪しいところの話ですね!落ち窪サマは元とは言えイデアの騎士をまとめていた人だし、可も不可もない護り方ですけどスクレットウォーリアの刃がカッフェルタに届かないようにしていた人ですからイデアの人間たちからすると悪い印象はないですよ。ただ、落ち窪サマの顔を町中で見るのは滅多にないって感じですね。出かけるとなるとやっぱり顔は知れ渡ってますから、昼間だと何をしていたとかバレちゃうでしょうし、立場が立場ですから出かけなかったんでしょうねぇ。なので僕は行動を起こすなら夜だろうなぁと思って主に帰宅後の行動を調べました」
「……」
「特にコレと言ったこともなかったようですが、この頃は、友人からカードに誘われているとか言って、スクレットウォーリアが愛用する暗闇に紛れるような真っ黒な馬車に乗ってお出かけでし始めたらしいです。ま、その一回で終わっていればソレで終わりだったんですけど、何度も同じ言い訳で出かけて行ったそうです」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……で、何だ」
「終わりですね!」
……は?
すごいあっさりとした終了宣言だったら思わずそんな声が出てしまった。
此処からクライの若干イラっと来る話と共に本当は何処に行っていたとかの話が続くと思っていたのになんで急に?
明らかに、他の三人とクライが調べた密度が違うし、なんだろう……話し方の問題なの?なんか、フワッとしてるんですけど。
解せないんですけど、と視線で訴えかけるようにクライを見ると、クライは嘘じゃないですよ、とヒョイッと肩を上げた。
「コレ、僕が調べたんじゃなくて落ち窪サマの奥サマから聞いた話なんで此処までなんですよ。いやぁ、ほら、僕、必要とされてて引っ張りだこな人じゃないですか~。」
「……」
「たまにおつかいとかも頼まれたりしますけど、僕の任務って内部調査ですからねぇ。ここで働いている騎士たちのことを調べなきゃいけなかったんですよ。で、上から順番に調べたので落ち窪サマは当然初めの方に調べましたよ?つまり、王子サマが此処に赴任した頃ですね。だけど、此処で働いてる騎士の人数は見ての通りじゃないですか。だから取り敢えず、効率重視で調べやすそうな指揮官としての能力不足って所を調べることにしました」
「……」
「結果、さっきお伝えした通り、可も不可もない、こっちが押せば次はそっちが押すって感じのつまんない戦い方でここぞって所で決定打に掛けていたってことが分かりました。騎士たちもまぁ、こっちが優勢の時には此処で攻めた方がっていう声を上げたりしたそうですが、落ち窪サマは神経質なのか心配性なのかただ威張りたいのか、自分の言うことが聞けないのか、と許可しなかったそうです。そうこうしている内に形成が逆転していたりとかして、一部の騎士たちの中ではあの時一斉に攻めればと思ったことが多々あったらしいです」
「……」
「まぁ、負けている訳じゃないですし、イデアの人間からは騎士たちは自分の身を犠牲にしても守ってくれているって感謝して尊敬されてるもんですから騎士たちも自尊心ってのは満たされて満足だったんでしょうねぇ。そりゃお金も生活も保障されてるなら、戦争をしていて血を見ない日はなかったでしょうが、平和と言えば平和なんで苦痛ではなかったんじゃないですか?───ま、そんなんだったんで僕は、指揮官としてっていう点については落ち窪サマのことを狭小な雑魚って評価しましたけどね!当時の騎士たちも落ち窪サマ然り雑魚ですけど。更に言うと、そいつらまだ此処で働いてて落ち窪サマに付いて此処にいるんですけどね!アハハッ!雑魚って分かってからはま~ったく興味が失せちゃって、今日に至まで落ち窪サマのことはノータッチですよ」
「金回りなどの身辺についての調査はどうしたんだ……」
「そうですねぇ。落ち窪サマってばなんでかこの地に固執してる人なんですけどね、それでも、その当時に付き合いがあった貴族は腐る程いましたよ。女神サマを討てば敵陣に一気に進攻出来ますからね。援助しておいて自分も立役者の仲間入りするつもりだったんでしょうねぇ。今考えると、内乱の首謀者も中には入ってましたねぇ。……なんにしても根回し上手ですよねぇ。ひん曲がりクンのお母サマと違って。だからこそこうして此処にいられるんでしょうし」
……もう、頭痛過ぎて気持ち悪くなってきた。
なんなの。
こんなこと言うの嫌だけど、めんどくさいよ。カッフェルタめんどくさい!
なんでこんな面倒なことになってるの!何度も言ってるじゃん、私、うちの人たちのことで手一杯って言ってるじゃん!
やだもう!
 




