プロローグ 6
プロローグ6
━━━要塞都市コペルニクス地下搬入路━━━
明かりが灯らない鉄の無機質な道、窓が一切なく漆黒の闇が支配する冷たい通路、迷路の様に入り組んだ通路は地下水染み出し滴り落ちる甲高い音が耳を刺す、ころころと囀る水路の水の音が木魂する。
ヘッドライトの限られた光だけが頼りの暗闇をゆっくりと慎重にバギー形態に変形させたメカノイドで静かに移動していた。
「博士、取り敢えず揺動に成功したけどこれはどのくらいもつの」
青い軍服の青年、スレイヤーが1人コックピット内で呟く
ハンドル中央部に取り付けられたスマホが明るく成る。
「それは、神のみぞ知るところだ。まだ灯りがついていないところを見ると今の所は大丈夫な様だが急ぐにこした事はない」
博士は、電子の声で車内スピーカー越しに語る。
彼らは、慎重に歩みを進める。
要塞内はAIによるハッキングで電力供給がカットされ予備電力で上層部だけが活動している。
ライトの灯りに照らし出された四角い何かが近づくそして
「博士行き止まりだよどっち?」
「左に曲がって次に右だ」
「博士」
「何だ」
「そもそも博士がマップを表示してくれたら済む話じゃないかな」
「電力供給がカットされシステムが使えんGPSも当然使えん、それに端末がハンドル中央部に有るから見づらいだろだから、こうして説明しているのだ。そして、そこを右だ」
「はいよ。じゃ端末をハンドルに付け無ければ良かったんじゃないの」
「この機体は高機動兵器だ高速運用時に操作がハンドルでできる方が便利だろう」
「確かに便利だ。じゃフロントガラスに映せないの」
「あっ!」
「有るんだね」
「……」
無言でフロントガラスに地下搬入トンネルまでのマップが映しだされた。
━━━地下搬入トンネル入口━━━
入口と呼ぶには、広大な空間だった。
暗闇の中ヘッドライト光だけではその全容を計り知る事は難しかった。
沢山のコンテナが3段に積まれ横に並べられている。
そしてコンテナの列の隣を線路が通って居て暗闇の先まで続いている。
上を見ると線路の上に梁が有り同じ様に暗闇の先まで続いている。
反対側の梁は、コンテナで見えないが天井クレーンが数台乗っている。
コンテナが積まれ並べられた俗にコンテナの山と呼ばれる方に進むとフォークリフトがコンテナの山の間に点在しているのが見えた。
「博士、とんでもなく広いねトンネルまでかなり有るよ」
「ここは要塞都市の生活物資を搬入、貯蔵をする施設だ。例え海が荒れていようが安定して供給される。ここは要塞都市の生命線、軍と市民を支える為にこの広さは必要だ」
「敵に遭遇しないところを見ると揺動が上手くいってこのままトンネルから逃げれば終わりだね」
「そうはいかない様だ。何処に居るか解らない我々を逃さない為に流通を止めるだろう。そうなればトンネルに入って入口も出口も塞がれては終わりだ」
「じゃぁ博士どうする。みんな倒して脱出」
「しっ隠れろ誰か来る」
メカノイドをコンテナの影に隠すと貯蔵ホームに灯りが灯り、その全容が明らかに成っていった。
博士は明るく成るのを確かめて、一体化したメカノイドのヘッドライトを消した。
数人の兵士が現れ、トンネル入り口付近を調べだした。
「博士、何か調べてるよ。何も出て来ないと思うけど」
スレイヤーは、小声で問いかける。
「……」
博士は、沈黙した。
ガシャガシャガシャガシャンと遠くで金属が引っ張られぶつかり合う音が聞こえる
「ちょっと待って、博士何か来るよ。」
奥から貨物列車がやってきた。
先頭に機関車が無く貨物だけが列を成して進んでくる1両そして1両そして……最後尾に機関車が連絡され貨物を押していた。
貨物列車は、トンネルに吸い込まれそして機関車が貨物と切り離された。
パッパッパッパッパッパッパン
トンネルの奥から連続する乾いた反響音が聞こえた。
貨物列車の車輪が爆破されトンネルは塞がれた。
「これで君のプランに乗るしか無くなったな」
「でっ具体的にどうする。こんな閉鎖空間じゃ直ぐに一網打尽だよ」
「本来ならトンネルを使って脱出する筈だったが仕方が無い、プランBで行こう」
「博士のウィルスさっそく駆除されちゃったしね」
「彼ら優秀さには脱帽したよ、少々彼らを侮っていたようだ」
「でっこれからどうするの、予定は、潰されちゃったし本当にあるのプランB」
「いささか不本意たが有る。まさか、システムの乗っ取り失敗するとは……」
「済んだ事を後悔しても仕方が無い 」
「では、ここから移動しよう」
「どこえ」
「地上だよ。ここでは、戦え無いだろ」
「どうやって」
「簡単だよコンテナ用のエレベーターを使う」
「出た所狙い撃ちじゃないか」
「心配要らないシステムをハッキングしたときに都市システムを切断している。彼等は今、軍事システム以外は制御していないし仮に発見されてもプランBを発動するから大丈夫だ」
「プランBって一体何なんだ」