プロローグ 4
プロローグ4
島を囲む四方の海は流れが激しく時化で波が高い、打ち寄せる波はしぶきを作り豪雨の様にザバザバと岸壁に降り注ぐ。
曇天の空に浮かぶ厚い曇が辺りを暗く淀ませる。
見渡す視界は非常に悪く陸地を見つける事も難しく、なんだか絶界の孤島を彷彿させる。
―要塞都市コペルニクスー
コペルニクス島は当初、資源採掘を目的に建造されたのだが資源の埋蔵量が莫大だったが為に一般から作業員が多く雇用された。そしてもう一つは丘にもっとも近く要所でもある為に軍事利用が検討される事により都市機能も果たす巨大要塞へと変貌した。
この要塞から脱出する為には、眼下に広がる大海原を超えなければ成ら無い。
そして今、島内は完全警戒態勢が引かれ外界との交通が一切遮断され、サイレン音をけたたましく響かせている。要塞はサーチライトの閃光に照らし出されていた。
━━━作戦司令室━━━
体のラインを強調した漆黒の軍服を着た大女クイーンは、その大きな胸を揺らし部屋を後にしようとした。
「大佐、緊急事態です。既に基地にもマルウェアが混入されていた様です。」
画面を見ていた兵士が冷静に異常を知らせる。
その場に数秒の沈黙が支配し凍りつく時間が過ぎる。
兵士達全員が事の重大性を理解した。
マルウェアそれは、一般にコンピュータウィルスと称される悪意あるソフトウェアの総称である。
ならんかの方法でマルウェアのファイルがシステムにインストールされ、ある操作したが為にシステムが奪われた。
クイーンは、踵を返すと
「重要なデータは速やかに隔離、直ちにパッチ制作に取り掛かれ」
兵士にわ号令をかける。
「「「 了解!! 」」」
兵士達は、慌ただしく作業に取り掛かった。
どうしても出来てしまう第三者が悪用可能なシステムの欠陥即ち脆弱性を修正する為のプログラムがパッチである。
「クイーンお嬢様こちらのシステムの脆弱性はお見通しの様ですね」
脇に控える執事服の老紳士フォルスマンは言う。
「彼は良く働いてくれたわ。新型メカノイドは今100%完成した様だし、それにシステムの脆弱性は人が作っているのだから無くならないわ」
「確かにおっしゃる通りでございます。では、お嬢様これからどうされるおつもりですか?」
順調にも見えた作業が突如、次の瞬間に画面が一斉に本来 映し出す筈の重要な情報を一瞬のうちに消し去り呪文の様な大量のアルファベットとアラビア数字で画面を埋め尽くした。そして……
画面が代わり一面黒の背景に白抜きのロゴが写し出された。
ーDr.Rー
「やぁークイーン楽しんで貰えたかな」
室内に有るスーピーカーは、軽薄な口調で重なった声を発した。
「ええ、楽しませて貰ってるわ。Drブラック・スミス、それともDrロイ・ギルバートと呼んだらいいかしら」
クイーンは、不適な笑みを顔に浮かべた!。
尚もスピーカーの声は、軽薄に言葉を続けた。
「それに就いては、保留にさせて貰うよ、今は情報を制限した方が有利だからね。さて、これから我々が脱出する迄の一時を存分に楽しんで頂こう」
「それは残念だけど不可能ね、既に貴方の研究室は占拠して新型メカノイドとそれに関するデータは押収したし、脱出に使った搬入エレベーター出口は、部下が砲撃準備を整えて居るわ。もう、貴方は終わりよ。出来ればこのまま投降薦めるわ」
クイーンはニヤリと口元を歪めた。
「お嬢様、以前システムの80%が操作不能の状態です。」
執事服で身を固めた老紳士は、耳元で囁いた。
クイーンは、椅子に座り直しそれを聞いた。
「そうか、それは不味いな、だが折角自由がコレから手に入ろうとしているのだせいぜい悪あがきをさせて貰う。」
焦るでもなく余裕の声色でそう言い残し室内の明かりが消えた。
「直ちに非常用電源に切り替えろ」
支持を出しクイーンは、立ち上がった。
「はっ、通常運用ならば今から48時間電源を維持が可能です。」
兵士は短く応え作戦司令室奥の一室に有る発電設備を起動し
要塞の明かりが復活した。
「それだけ有れば充分だ。」
言うとクイーンは踵を返した。
「お嬢様、どちらに」
「決まっている。第一研究室だ。」
クイーンは未だシステムがDrの支配下に有り扉を開けようにも扉は沈黙したままだ。
腰に下げた異様な剣引き抜き構えた。
異様な剣それは、刃の無い刃先はファスナー状になっていて閉じられいる。
刀身は肉厚で刀身の先に目の様な模様が描かれその目は閉じられている。
剣を振りかぶると刃先が有る筈の所に有るファスナーがゆっくりと開かれた。
振り降ろされた斬撃は、ファスナーに触れたもの全てが開かれたファスナーの内側に消え残骸も残さずそこに最初から無かったかの様に消えた。
役目を終えるとファスナーは、閉じられた。
クイーンは、悠然と指令室を後にし第一研究室へと足を進めた。