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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雨水の樹海

作者: 火乃椿

 春の海は惨劇でした。地面の組みあっている木の根にはペンキのように赤い新鮮な血がべったりと、太い木には、切り傷から血のような液がたらりと垂れていました。木に飲み込まれかけている、木こりの死体は腐敗が進み、そこら中に吐いてしまいそうなくらいの腐臭を漂わせていました。私は、何もできず、立ったまま血を全身にかぶった男の子の後ろ姿を見つめる事しかできなかったのです。男の子はゆっくりと私の方を向いて、その緑色のこの海の色とおんなじ色の目で私をじっと見ました。茶色の髪にも、赤い血がべったりと洗っても落ちないのではないのだろうか、と思うほどついていました。顔、腕、胴体、脚、どこの体の部位を見ても必ず血はついていました。手には、木こりが持っていた斧が、その斧は人を殴ったからなのか刃がこぼれ、刃全体に血がついていました。男の子は、にぃっと笑うと、男の子の足元にある真新しい死体に斧を突き刺しぐりぐりと抉りました。私が、「ひぃっ」と、声を漏らせば、男の子は嬉しそうにまた強く、抉りました。血の匂いと、腐った臭いが、混ざって混ざって、精神がごりごりと削れていく心地がしました。

 男の子は、左足を引きずりながら私にゆっくりゆっくり、亀のように近づいて来ました。逃げなければ、逃げないと、私は逃げたい一心で走りました。走って逃げている途中でも、地面の木の根が複雑に絡みあい、それはまるで私の足に絡みつこうとするようでした。無我夢中で、走っていると、私は、足を木に取られました。逃げようともがけばもがくほど、木の根は私の足にぎゅうぎゅうと絡みついてきました。逃げられない、もがけば、いつかは木の根に私の足が折られてしまう。そう悟り、おとなしく木が離れていくのを願って寝そべり待ちました。

 しばらくすると、男の子が私に追いつきました。私は、男の子の左足に大きな斧で切ったような傷があることに、気付きました。斧で、切られたような傷でした。骨や肉がむき出し、なるべく直視したくないような傷で、私は思わず、顔を逸らしました。男の子は、そんな私を見下ろしてにたにた笑っていました。数秒、私の顔を見たかと思うと、今度はしゃがみ、私の脚を撫でました。男の子の手は、木のようにざらざらし、私の脚を痛いくらい強く撫でたかと思うと、優しく撫でて、また強く撫でてを繰り返したあと、男の子は、深く頷き、立ち上がりました。そして、私の脚めがけて大きく斧を振りかざしました。だんっ、私の脚が綺麗に切れました。強い痛みが、私の脳内を支配して、痛いということ以外何も考えられませんでした。切られた脚は、木の根に食べられるように飲み込まれ、姿を消しました。切られた部分が弱火であぶられるように痛みました。男の子は、痛みに悶える私を見て、嬉しそうに楽しそうに言葉にしにくいような笑い声をあげました。

 笑い声と一緒に、めきめき、ぐちゃぐちゃと木と肉がつぶれたような音がしました。先ほどまで、傷のついていた左足が、綺麗になっていました。その足を見て、私は再び悲鳴を小さくあげました。その足は、まぎれもなく、さっき切断された私の脚でした……。「いやだ、返して」と、男の子に嘆願しました。が、男の子は、無視をし、にたにたと恐ろしい笑顔で、私の顔に__斧を振り下ろしてしまった。


 後日譚

 美しく恐ろしい樹海、雨水(うすい)の樹海。毎年、多くの予備知識のない観光客が訪れていた。木は美しく、この樹海で作った楽器や家具は美しく妖しい雰囲気をまとった仕上がりになり、家具や楽器を持つ者は成功をおさめ幸せになれるという伝説があった。その伝説から、無断で木をとりに行く木こりも多かった。

 今回は、ご近所からの通報だった。内容は、「木が死体に巻き付いている」というものだった。それも、一人や二人ではなく、10人の死体があるということだった。現場の樹海には、通報通り、木の根っこが惨殺死体に絡みついていた。関節があらぬ方向へ曲がった死体や、傷を酷く抉られた死体、四肢を切られた死体……そして、顔が破壊され脚を切られた少女の死体。犯行に、統一性はなく、複数犯の可能性があると警察は判断した。

 現場に居合わせた、この樹海がある村の長寿なおじいちゃんは、「木霊が怒ったのだ。木を切るときは、村の神社で木霊に許可をもらわなければ、ならない」と言っていた。後日、調査した結果、男性の死体は、この樹海の予備知識のない金儲けを目当てに木を切りに来た木こり集団だと分かった。だが、少女については未だに素性が分からないままだった__。

作者もよく分からない小説です

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