第七十九話 「七色の単衣」 妖怪「何に使うか分からない」登場
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朱い仮面と黒い鳥 二人の天狗が闇を焦がす
心の闇の奥底に たどり着くのはいつの日か
てんぐ探偵只今参上 お前の心の悪を斬る
「世界中の布は全部見たの?」
「女帝」キリシマ・ヨーコのこの言葉を聞くとき、アシスタント達は震え上がる。
「世界のキリシマ」といえば、パリ、ミラノ、ロンドン、NYでは知らぬ者のいない、アパレルブランド「キリシマ・ビジョン」の女王だ。女手一つでキリシマ・ビジョンを名古屋、栄町の小さな店で立ち上げ、今や世界的ブランドのひとつとして、グッチやアルマーニと比肩されるブランドにまで育てあげた。
二週間後に控えた名古屋ドームの発表会、通称キリシマコレクションの為に、アシスタント達は徹夜で準備している。千着という途方もない新作群、百五十名のトップモデルを集めた一大ランウェイショウ。キリシマ・ビジョンの次期パリコレ進出を占う、勝負の前哨戦である。
「世界中の布は全部見たの?」は、今回だけはなく、毎度毎度布を集めて来るアシスタントにきつく言うときの彼女の口癖だった。
服は布から作る。当たり前のことだが、その布が服の質を決める。布は材質や織り方によって様々に表情を変える。重さ、手触り、皺の形、伸縮性、吸湿性、厚さ薄さ、強さ弱さ。勿論機能面だけでなく、色、艶、模様(刺繍やテキスタイル)などのファッション性も重要だ。高名なデザイナーならば糸からつくる人もいる世界。「世界中の布は全部見たの?」と、アシスタントが集めた布を全部見終えたときに言う彼女の言葉は、「この中に私の欲しい布はない」という彼女たちへのノーであり、役立たずの死刑判決である。
今夜二十三時の「キリシマ・チェック」にむけて、工場のように広いスタジオに、アシスタント達は布をひとつひとつ吊るしていた。まるで布工場だ。その数は五万枚から十万枚の間だろうか。一斉に数えていないので、全貌は誰も把握していない。その数は日々増えていくからである。色、材料別に並べられ、世界中の色がグラデーションで並んでいる。キリシマ・ブランドの魅力は色だ。名古屋は絢爛の国である。下品にいけばパチンコになり、上品にいけばキリシマだ。他を圧倒する、色の洪水こそが真骨頂である。
キリシマのアシスタントともなれば、チーフ、セカンドだけでなく、その下の三番アシスタント、四番、五番と階級が細かく分かれている。全部で八十人の大所帯だ。セカンドだけで十五人いる。下っ端の下っ端の下っ端、五番の御影純奈は、キリシマ・ビジョンに入ってから三年が経つが、一向に四番に上がれなかった。能力や才能がないわけではなかったが、なにせ上がつかえている。いっぱしのスタイリストやデザイナーになるのはいつの日だろうと、その夢を食べながら生きている。
「まだメインが決まってないんだって。二週間切ったってのに」
鮮やかなブルーの布にアイロンを当てながら、同期の五番、高見が言った。
「でもコンセプトは決まってるんでしょ? 『次の多様性』って」
純奈はオレンジの布からイエローの布にアイロンを当て直した。布を最高の状態で「女帝」に見せる為だ。
「それを表す、具体的な布が見つからないんでしょ」
「だったら……」
自分で探せばいいのに、という言葉を純奈はぐっとこらえた。布を探すのはアシスタントの仕事。それを切って、デザイン通りに仕上げるのはチーフの仕事。コンセプトをデザインし、その通りに出来ていないなら容赦なく切捨てるのが女帝の仕事。それが出来ないなら、事務所を辞めて一人でやればいいだけのこと。キリシマ・ヨーコはそれを一人でやってきた、数少ない豪傑の一人なんだけど。
「できた?」
四番の衛藤満里奈がチェックしにきた。ひとつひとつ吊るされた布たちを眺め、裏表を触り、光沢を確かめる為スタジオの照明に照らしたり透かしたりした。
「グリーンが足りてなくない?」
と、衛藤は指摘する。
「でも」
と純奈は珍しく反抗した。徹夜続きでこらえ性がなかったのかも知れない。
「なに? フィフスが口答え?」
「いえ、あの、キリシマさんはグリーンがあまり好きじゃないですし、これまでのコレクションでも使ったことがないから、選ばないと思うんですけど」
「は? 何生意気なこと言ってんのよ」
衛藤が切れた。彼女も徹夜続きで、こらえ性がなかったのかも知れない。
「アンタがデザインしたの? デザイナーはキリシマさんでしょ? アンタは布を集める係よ? 口答えしてんじゃないわよ」
「でも、以前の『多様性』のときはアースカラーを中心にグリーン系はすでに使ってます。『次の』に使うでしょうか?」
「バカか!」
衛藤は姿見に蹴りを入れた。
「お前何様だよ! 出来るだけ材料を見せて、キリシマさんに見てもらうのが仕事だろ! グリーン使うかも知れないだろ!」
「何に使うんです?」
「何に使うか分からないから、色々集めろって言ってんの!」
「私にはわかりません」
純奈は毅然と、怒る衛藤に言った。
「イタリアンの店が、日本料理の食材まで準備する必要あります?」
「お前は生意気なんだよ!」
つかみかかろうとする手を、少年の一喝する声が止めた。
「不動金縛り!」
「え? え?」
天狗の面を被った少年と、烏天狗の面を被った少年が現れた。
「あなた、妖怪に取り憑かれてますよ」
金縛りを解かれ、喋れるようになった衛藤に少年は言った。
「なに言ってんの?」
「見てよ!」
彼女が蹴り飛ばした姿見を、彼女に向けた。ひい、と衛藤は小さな悲鳴を上げた。
「これは妖怪……『何に使うか分からない』」
2
「しかしスゲエなあ」
天狗面を外したシンイチと光太郎は、工場然とした布見本市の迷路を歩きながら感想を漏らした。天井のファンが空気をかき混ぜるので、幾万の色が波打ち、幻想的な海のようだった。
「当たり前でしょ」
集められたアシスタント達八十人の代表、チーフの野上幸枝は言った。
「世界のキリシマコレクションよ? 一番いい布を集めて、最高の服をつくるのよ」
「へえ。すごい数をつくるんだね!」
「ちがうわよ」
「?」
「一着のためよ」
「え?」
「メインの一着が決まらないから、これだけ集めているの。だから、この中から最高の布だけ残して、最高の一着をつくるの」
「じゃ、これほとんど意味ないじゃん!」
「意味なくはないでしょ」
セカンドの杉並由希が言う。
「だってキリシマさんは、どれを使うか決まってないんだから」
「それや!」と光太郎は光速でツッコミを入れた。
「妖怪『何に使うか分からない』ちゅうのはそういうことなんや。ベストは一個なんやろ? それやのに何でこんな工場満杯集めてんねん。それはな、『これも使うかも知れへんし、あれも使うかもしれへん』て不安の現れなんや。何個か集めんのはまあ分るわ。でも『何かに使うかもしれないから』とこんだけ無限に集めんのはな、不安という心の闇やで!」
光太郎は姿見を皆の方向へ改めて見せる。
純奈を除いた七十九名全員に、妖怪「何に使うか分からない」が取り憑いていた。
痩せ細ってテンパった、おどおどした青い濁った色の妖怪であった。
「あ、あなたは『女帝』を知らないから言えるのよ!」
チーフの野上が反論する。彼女の妖怪は、とびきり大きく成長していた。
「なにがやねん」
「私たちが必死で集めた布を、彼女は確かめもせず『返してこい』って言うのよ? 何回集めてもよ! それで『世界中の布を見たの?』って言われるのよ! じゃあ文句言われない位に、布集めてやろうって思うじゃない!」
「でも使うのはひとつなんでしょ?」
シンイチは身も蓋もない事を指摘する。
「それが何か分からないから、こうして苦労してるんでしょうが!」
サードの本田祥子が涙目で切れる。
「この『全集め』、何回目だと思ってんのよ!」
「何回目ってどういうこと?」
「この中にキリシマさんが選ぶ布がなかったら、別のスタジオを借りるの! この大きさのをね! そのハコをまた布で満杯にする。それが『全集め』。このハコは十二箱目!」
「ふええええええ」
シンイチはあきれて変な声が出た。
「そんなに集めてどうすんの?」
「決まってるでしょ」
セカンドの杉並が言う。
「一番いい服をつくる為よ」
「?」
シンイチは疑問に思う。
「一番いい服って何?」
「え?」
皆は虚を突かれた。
「オレ、何が一番なのか分んないや。基準ってあるの?」
「そ、それは……、見た目のインパクト、先進性、他に被りがないこと、古臭くないコンセプト、それだけじゃなくて、機能性、女としての主張、生き方に関わる服であること……」
皆はひとつひとつ指折り数えてゆく。
「その全部よ」
「ええー」
シンイチは失笑する。
「服一枚で、そんななる?」
「なんですって?」
「本人がカッコイイなら、服なんかどうでもいいじゃん。服一枚着て全部いけるんなら、本人の努力いらないじゃん」
「はっはっは」
凍り付いたスタジオに、笑い声が響いた。
「面白いことを言う子だね」
アシスタント達に緊張が走り、妖怪たちはその闇を吸いひときわ大きく成長する。
「女帝」、キリシマ・ヨーコその人であった。
3
「妖怪だって? まさかアタシの事を妖怪ババアって言うつもりかい?」
「女帝」キリシマは、赤く尖った眼鏡の奥で目を光らせた。
「とんでもない!」と光太郎が調子よくフォローする。
「お綺麗な方で、二十歳かと思いましたわ!」
「調子よすぎだろ」と女帝は笑う。
シンイチは核心に切り込んだ。
「ここの人たち、一人を除いて全員に妖怪『何に使うか分からない』が取り憑いているんです」
「ふん……」
キリシマは、おびえたアシスタント達を並べて、その背後にあるスタジオ一杯の無駄な布を見てため息をついた。
「これだけの布を、何に使うか分からずに集めてりゃ、そりゃ無能の極みとしか言い様がないわ」
「女帝」は布の深海を探索し、布の迷路を通り過ぎる。コメントされない布を集めた者たちは、次々に顔面が蒼白になってゆく。
「おまえたち、本当に世界中の布を全部見たの?」
来た。無能の烙印を押される。びくつきがピークに達した四番の衛藤は、「女帝」の前に踊り出た。
「北海道から沖縄まで、全部見てきました。東京だって何回行ったか」
「どれ?」
「ここからここまで全部です!」
「……」
端から端まで、工場の一角を占めるブロックを見ただけでキリシマは失望の顔をした。
「ホントに全部見たんです! イタリアの布展も、フランスの布展も見たし、アフリカだってメキシコだって見ました! 五番を十人動かしました! いくら使ってもいいってキリシマさんの言葉を信じて、全部買い付けました!」
「……」
「女帝」は首をかしげ、衛藤は膝をついた。
彼女は肩を落とし、代わりにその方にへばり憑く妖怪は、ぐんと大きさを増す。工場を一周し終えたキリシマは、「捨て」と書かれた段ボールに入った黒い布を取り上げた。
「これは誰が集めた?」
「あ、それは、黒はキリシマさんが嫌うからって、私が捨てたもので……」
衛藤が自分の功績をほめてもらおうと再び食い下がった。
「これは誰が集めたんだ?」
キリシマの目に、衛藤は再びおびえる子犬にもどった。
「私です……キリシマさんが黒が嫌いと知らなくて……」
手を小さく上げたのは純奈であった。
「ほんとスイマセン! まだ下っ端の下っ端の下っ端で……」
衛藤が三度食い下がる。なんとかして女帝のポイントを稼がねば。
「……」
キリシマは掌を衛藤に向けて話を止め、純菜に尋ねた。
「この手触りは……加賀友禅?」
「はい。でも伝統的な奴ではなくて、新しい作家さんが独自につくった奴で、三色のツヤの違う黒を合わせて……」
「見れば分る。伝統友禅の技法じゃないね」
「染まで友禅で、一度ばらして編み上げるそうです」
「手間なことを」
キリシマはその段ボールをあらためた。手触りの、ツヤの、厚みの、模様の違う黒い布ばかり出て来る。
「『次の多様性』は、黒のグラデーション違いではないかと考えまして」
「お前、キリシマさんに意見するつもりかよ!」
チーフの野上が止めたが、キリシマは制した。
「つづけて」
「はい。あ、三年前の『多様性』のコレクションは、まるで色の洪水で、すばらしい体験でした。あまりに感動したので、次の日にここの門を叩きました。それから三回別のコレクションを経験しました。で、『次の』と銘打ったまた『多様性』を、キリシマさんがやると。で、どういうことだろうと、私なりに考えたんです」
「それが黒のグラデーションだと?」
「ほんとすいません! こんなセンスのないバカ女……!」
野上と衛藤が二人で純奈の口を塞ごうとした。
「バカヤロウ!」
耳をつんざく恐怖の怒号で、野上も衛藤もリアル金縛りにかかった。
「ごめん大声出して。自分のスタッフの名前を全員把握してなくて申し訳ない。名前を教えてくれないか」
「はい。御影純奈です」
「ありがとう。なあ、天狗の少年」
キリシマはシンイチに振り返って言った。
「妖怪に取り憑かれていない一人って、この純菜だろ?」
「ご名答!」
シンイチは答えた。
「妖怪が見えてるの?」
「いいや。この子だけが自分の頭で考えていたから、そうじゃないかと思ってね。逆に言うと、周りの奴はボンクラばかりということか。私は人を見る目がないのか、育てるのが下手なのか……」
キリシマは再び純奈に向き直り尋ねた。
「世界中の布を全部見たかい?」
来た。またアシスタント達は小さくなる。
しかし純奈は堂々と答えた。
「いいえ」
その言葉に皆は凍り付く。全員が「はい」と答えられるように、これまで徹夜して必死で布を集めてきたからだ。
「でも黒い布なら、大体見たかもです。あ、でもフランスの古布は、出張はさせてくれないと衛藤さんが」
「他は見てないと」
「黒ばかりは駄目だって、その他の色はあわてて栄町中の問屋を見ただけで……」
「で?」
「どれも平凡で、『次の多様性』にはほど遠くて」
「フランスの古布は見てないって言ったね」
「はい。すいません」
「謝る必要はないよ。見れないものはしょうがない。今度の夏の買い付けは同行しなさい」
ええっ、とアシスタント達はうめいた。夏一か月かけてヨーロッパ中を回る布の買い付け旅行は、同行を許された者は一人もいなかったからだ。
「ひとつ教えておこう」
キリシマは、皆に振り返って言った。
「世界中の布を全部、見れるわけないだろうが。どれを見て、どれを見てないか、把握してるのかと聞いてるんだ。今入手可能な布は何で、何ならコンセプトに合うかを探せと言ってるんだ。この子だけじゃないか。『次の多様性』のことを本気で考えていた『デザイナー』は」
あ、と小さな声が漏れた。
私たちは「布集め係」ではない。そもそもデザイナーになる修行だった筈だったのに。手段と目的が逆になっている。
「世界中の布を見ておけ、ってのはもうひとつあって、なるべく極上から庶民の布まで、くまなく見て知識を蓄えろってことなのさ」
「そういうことだったんですか!」
キリシマは微妙に手触りや反射の違う黒い布を触りながら聞いた。
「どうして友禅を?」
「あ、単純に出身地の名物で」
「それだけ?」
「いえ、地元にいるときは古臭い名物と見向きもしなかったんですけど、この仕事するようになって、いい布だったんだなあって改めて分かって。で、今回使いたいって思ったんです。成人式の晴れ着をおばあちゃんが友禅でつくってくれて、その気持がわかったというか」
「うん。それは大事なことだ」
「女帝」は再び七十九人の前に歩いてゆき、深々と頭を下げた。
「私の責任だ。アンタたちを無能に育てちまった」
「……」
キリシマはシンイチを指して言う。
「この子の言う通りだよ。服なんてたかが布一枚。服着ただけで立派になれるなら、みんな一丁前の服着てりゃいいのさ。中身のないファッションバカやってりゃいい。だが本当に立派な人は、Tシャツ一枚でも素敵なものだよ」
Tシャツ一枚を「女帝」が認めた? ファッションの権化のような人が、服を否定? アシスタント達は訳が分からず混乱した。
「正直なことを言うとね。メインのコンセプト、固まってなかったんだよね」
ええっとざわめきが起こった。
「私は服をつくり過ぎたのかも知れない。『次の』と言ったものの、どうやっても思いつかない。だから私は、一緒に考えてくれるデザイナーが欲しかったのかも知れないね」
「そんな……!」
チーフの野上が叫んだ。
「いつもキリシマさんは完璧で、完璧なコンセプトワークで、時代の一歩先を行ってて、『キリシマ・ビジョン』の体現者のような人だったじゃないですか! だから私たちはここまで必死についてきたのに……!」
「そんなの変だよ」
シンイチが堂々と割り込んだ。
「だいたい、ついていくような人が、ファッションデザイナーになれる訳ないじゃん。デザイナーは皆をついてこさせないと」
「ははは。一本取ったね、少年」
キリシマは笑う。シンイチは続けた。
「どんな人だって、調子悪い時や間が悪い時があるよ。サッカーの神様だってミスするし。でもそういう時どうするか知ってる?」
「知らない」
「それを取り戻す活躍をすればいいのさ!」
「単純だけど、真理だね」
キリシマは微笑んだ。心の緊張が取れた、いい顔をしていた。
「『次の多様性』についての、皆のアイデアを聞こうか。集めた布との関連も。何かに使うつもりで、こんなバカ高い布買ってきたんだろ? デザイナーたちよ」
「……」
最初に手を上げたのは、チーフの野上だった。「捨て」と書かれた、もうひとつの段ボールを指さした。
「……私はこう使うつもりだった、というのを言っていいですか?」
次々に手が上りはじめた。すべての手があがった所で、妖怪「何に使うか分からない」は、皆の肩から一斉に落ちた。
「不動金縛りの術!」
シンイチは天狗の面を被ると天狗の力が増幅する、てんぐ探偵である。
シンイチは四方八方の妖怪を切り裂いた。
そこに光太郎が大鴉の炎で、さらに多数の妖怪を切り裂く。
「草薙の剣!」
「え? なにソレ?」
「名古屋といえば熱田神宮やんか。三種の神器のひとつで、スサノオがヤマタノオロチの本体から取り出したという剣やで! ヤマトタケルが継いだ時、野火を一瞬で払ったらしいで! あとで見に行こや!」
ネムカケが解説する。
「熱田の名の由来は、田んぼの真中に生えていた欅が突然燃え出したからと言われておる。そこに地脈が走っており、火山の素があったのじゃな。彼女たちの燃える心意気は、熱田の地ゆえかもの」
野火のごとく妖怪たちが燃えている。彼女たちの不安は、草薙の剣で払われたのだとシンイチは思った。
「一刀両断! ドントハレ!」
キリシマ・コレクションの本番。
メインの服は、友禅の黒の、光沢や刺繍の異なる「七色の黒」を組み合わせた一品であった。十二単衣にあやかり、「七色の単衣」と命名されていた。全く異色なものを組み合わせるのではなく、似ているようだが微妙に異なる個性の融合を示すのだ、我々のように、とキリシマは説明して、万雷の拍手を受けた。
てんぐ探偵只今参上
次は何処の暗闇か




