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鍛氷師の鎖結び   作者:
出会いは運命
9/43

 決闘の結果は各人にとって予想外の物だった。

 白金組はこの結果にお祭り騒ぎとなり、ついていけない赤銀組はアンナの強さやシーラの強さについての議論となった。現在アンナは白金のクラスメイト達に囲まれ質問攻めにあっている。ただの高飛車なだけではく、しっかり実力の伴った人であると判断されたのである。そしてそれは事実である。第三層魔法を使うというのは非常に難しいことなのだ。たとえ不死鳥という最高級の触媒があったとしても。

 騒ぎは赤銀の先生の一括で収まり、改めて属性魔法の練習を行うこととなった。あれはデモンストレーションという扱いになったらしい。シーラは広場に不死鳥と共に戻ると胴上げされていた。

 属性魔法を練習するためにはまず自身の属性を知る必要がある。いまニキータが握っている物がその自信の属性を知るのに役立つ物で、『色識の紙』と呼ばれる。

 たとえば今ニキータの脇でそれに魔力を込めたアンナの紙は赤く変化する。これはアンナが火属性の性質を持っているためだ。ニキータの持っている『色識の紙』は魔力を込めても変化しない。白のままだ。始めは不良品なのかと思ったのだがそれをアンナがひったくって魔力を込めると赤く変化する。ニキータが持つと白く戻るという具合だ。


「僕、属性魔法の才能がないんだろうか……」

「そう簡単にあきらめないでくださいますか? 私たちは白金。つまり可能性の組のはずです。ならばこの程度でへこたれてる場合じゃありませんよ?」


 先ほどの決闘で変わったことと言えばアンナがニキータに積極的にかかわってくるようになったという事だ。突然のことで驚いたが、どうやら彼女なりのけじめらしくクラスメイト達とも交流を深めていくとのことだった。ならばなぜニキータに絡んでくるのかというとヴィクトルに対して放った


「シーラという素晴らしい繋がれし者の鍵主としてニキータを教育することためですわ」


 という言葉にすべて尽きるらしい。

 そんなアンナは考え込んでいる。


「それにしても『色識の紙』を生徒全員にたやすく配れるヴィシーニャは恐ろしいですわね……」

「これそんなにすごい物なの?」

「あたりまえです。魔力を込めるだけで属性を知れる紙なんて普通でしたらとても値の張る物でしてよ」


 今現状知れてないんだけれど、とニキータがため息をつくとヴィクトルが手に持った紙を眺めながら口を開く。その紙は茶色に変化し、彼が土属性であることを示している。


「なあ、紙の基礎状態って白なんだよな?」

「そうですわね、配られた時は白色だったわけですし」

「ニキータのその白色ってのは本当に白色なのか?」


 ニキータが手に持っている白い紙を見つめる。魔力を込めても色が変わらなかった紙だ。


「とにかく私たちではどうしようもありませんわ、先生に聞いてみましょう」

「たしかに、こういう時は先生に聞くのが一番だよね」

 

 そう言って三人は周囲を見回すがファイーナ先生の姿がない。すぐに見つかるのは赤銀の巨漢の先生だ。

 この際どちらでもいいと三人は赤銀の先生の元へ向かう。


「先生、すこしお聞きしたいことが」

「ん? どうした君たち。何か問題でもあったかな?」


 問題がありましたと答えニキータが『色識の紙』を差し出す。真っ白のままの紙を受け取り疑問符を浮かべた先生だがすぐに合点が行った。


「ああ、色が出なかったんだね?」

「はい、魔力を込めても白のままで」


 うんうんと頷いてから巨漢の先生はニキータの頭を撫でた。


「よく言ってくれた。君はさっきの剣精……たしかシーラちゃんの鍵主だろう? 一つ魔法を教えよう。そうすれば君の属性がはっきりする」


 ちょっとこっちに来てくれと三人を引き連れ端に移動する。そして杖を振ると岩の的を地面から生やす。

 そこには既に一人が何かの練習をしており、こちらを見て会釈をしてきたので三人とも会釈を返した。


「やあ、スサンナ。君と同じ事態に遭遇した若者とその仲間たちだ。仲良くしてやってくれ」

「よろしくね」


 ヴィクトルの目線がスサンナの一部分を見つめていることに気が付いたアンナがヴィクトルの後頭部をひっぱたいた。痛えな貴族のやることかよ! うるさいですわこの野蛮人が! と後ろでやっているのをスルーしてニキータは自己紹介を済ませる。


「さて、ニキータくん。彼女の紙は黄色になった。四大属性の色は赤、茶、青、緑なんだが稀に違う色が出ることもある。我々はそれを派生属性と呼んでいる。ここで問題が発生するのだが、属性が派生属性の場合色だけでは判断できないんだ。だからまずは、先にこの魔法を覚えてもらう」


 巨漢の先生が杖を構える。巨体なせいで杖を構えているというよりは何かを刺し貫こうとしているようにニキータには見えた。


「『礫』!」


 そう言うと杖から出た魔力が岩になり飛び出す。それはそのまま岩の的に命中して砕け散った。


「このように、『礫』は属性魔法の基礎魔法と言ったものだ。これに限っては詠唱を介することで属性変換を自動で行ってくれる。『矢』の属性版といった所だ。これを使えば派生属性でもどんな属性かすぐにわかる」


 スサンナに先生が目配せをするとスサンナは頷いて『礫』と唱えながら杖を構える。杖の先から発射されたのは小さな雷だ。昼間ではわかりにくいが雷のようなものが岩に命中して岩の一部が爆ぜた。

 それを見て後ろに居るアンナとヴィクトルがすげえと感心した声を出した。


「彼女の黄色は雷属性をあらわしていた。とこんな感じだ。さあやってみなさい」


 わかりました、と言い促されるままに杖を構える。君もやって見なさいとヴィクトルが脇に立ち、アンナとスサンナが見ていた。二人は魔力を練り、杖を通し、詠唱をする。


「『礫』!」


 ヴィクトルの杖から岩が発射され的にぶつかる。対するニキータの杖から発射されたのは水の塊だった。


 先生が眉をひそめる。水属性なら青になるはずだ、とその疑問の答えは命中した瞬間に現れた。当たった瞬間底から岩が一気に氷に覆われる。岩の的が丸々氷に包まれたのだ。突然氷の塊が発生するという事態に雷の練習とは違い見えやすいため非常に目立ち、生徒たちがこちらを見ておどろきの声を上げた。


「うわ!?」


 これに驚いたのは見ていたものだが一番驚いたのは撃った本人だ。自分の属性が判明したのだから。


「ニキータ君、君の属性はどうやら、氷だ」


 赤銀の先生は満足げに頷く。

 アンナは属性がわかってよかったですわねと言い、ヴィクトルはなにそれかっこいいんだがとうらやましそうにニキータを見ていた。

 ニキータはなんだか自身の魔法に納得したような気がしていた。

 炉無しどころか冷蔵室だったのだ。ニキータは。


「ちなみに、自身の属性に近しい属性ならば詠唱と触媒次第では扱える。まあそれは三年生の授業だがな」


 そう締めくくると赤銀の先生は期待を込めるように四人を見回した。


「お前たち、次の時間はこのことに関しての座学だ。しっかりと頑張れよ」


 四人の頭をそれぞれくしゃくしゃに撫でた赤銀の先生は再びほかの生徒たちを見回しに戻っていった。

 ありがとうございます、とニキータはその背中に声を投げかけると、右手を挙げて先生は返してきた。


「ニカ! なにあれなにあれ!」


 ニキータの行ったことを広場から見ていたシーラが乱入してきてアンナにヴィクトルとニキータが練習している様子を楽しそうに眺めていた。

 本当ならば勝手に出てきちゃだめと怒るべきなのだろうが、授業初めのことがあるのでシーラの自由さに誰も怒らなかった。

 ニキータは一人不安を、小さな不安を抱えていた。

 鍛冶師として火属性魔法を使えるようになりたいと思っていたのに、自身の属性が火と相反する属性だったことにだ。

 ニキータはそんな不安を振り払うように興味深そうにニキータの『礫』を見ているシーラの頭を撫でた。

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