第1話 エピローグ:転生前
大学二年の冬、親父に殴られた
20歳になったし気合い入れようと思っていた直後だった。
日曜の自室、パソコンで調べながら計画表を立ててた時、親が部屋に入ってきた。
その時は、昨日が誕生日だったからお金でもくれるのかなーって思って顔を上げた。
親父を見たとき、本能的にやばいと悟ってしまった。
マジで怒ってる顔で、声を荒らげて近い付いてくるんだ。
え? 俺なんかした?
やる気に溢れていた時に突然すぎて、なんで怒らせたのか思いつかない。
「おまえ、遅くに起きたうえに、日曜の昼間から部屋にこもってパソコンで遊ぶとか舐めてるのか?」
親父が威圧しながら大きな声で聞いてくる。
「え? え?
ちょっと待って。
これ遊びじゃないから。」
勘違いが多すぎてどこから説明していいか分からない。
五時には目が覚めて、頭の中でこれから何をしようかとずっと考えてただけで寝てたわけじゃない。
そもそも画面も見てないのに、なんで決めつけられてるんだ。
「遊びだそんなもん。おまえさ。
20歳にもなって恥ずかしくないのか。
外に出て行動できないなんて、人として終わってるぞ」
いやいや言い過ぎだろ。
なんで頑張ろうとしてるのに貶されないといけないんだよ。
ふざけんなよ。
「は?
いや、いつも部屋にいる訳じゃないじゃん」
土曜はいつも遅くまで寝て飲み会とか遊んでるけど、日曜はバイトや勉強してるじゃんか。
「いるじゃないかよ・・。嘘をつくな!
本当に、駄目なやつだな。
おまえなんか出て行け!!」
親父がこれまでに見たことのない顔でめちゃくちゃ大きな声で言ってくる。
「え・・ いや、まってよ。
なんでそうなるの」
本当に待って欲しい。
心臓が痛い。
涙が出てきた。
「出て行け!
いつも遊んでばっかで、いい加減怒った。
なんで生きてるんだ、出て行け!!!」
ドゴッ!!バタン
殴られた。
とっさにかばったけど、思いっきり頬を殴られて椅子から転げ落ちた。
(あれ?
なんでこうなるんだ?
頑張ろうとしている行動は褒められはしても、怒られるとは思わなかった。)
いつもの俺ならとにかく謝って許してもらうと思う。
けど、その時は違った。
(なんだよ、頑張ろうって決めた時に怒らなくてもいいじゃんかよ。
ほんの少しだけど褒めてもらおうって思ってたのに。
勘違いしてないで、俺の言うことも聞いてくれよ。)
(・・・。)
(あー、うん。わかった。
俺、必要とされなかったんだ。)
ーーーー そっか。
(もう、疲れた。
大学入っても人の人生に口出してくるの我慢してきたのに、もう無理。)
「俺なんか生まれてきてごめん」
そう言って、親父を押しのけて家を走って出た。
「おい! おまえ、ま・・」
親父がなんか言ってるけど、玄関閉めたから聞こえない。
とにかく走った。
自転車使いたかったけど、鍵を開けるちょっとした手間が惜しかった。
まっすぐに走ったら見つかると思って、曲がって曲がって走った。
どうして
どうしてなんだ
どうしてなんだ、俺なりに頑張って
どうしてなんだ、俺なりに頑張ってるのに認められないのは
なんだ怒られないといけないんだ、なんで否定されなきゃいけないんだ
もういやだ、我慢できない、本当に死にたい、ここじゃないどこかに行きたい
何分走っただろうか、気づいたら知らない場所に来ていた。
周りを見ると木ばかりで、少し先に開けている場所が見える。
「んー、これからどうしよ」
(頑張ろうって思ってやる気に満ちてたけど、今は絶望しかない。
胸が本当に張り裂けそうだ。
なんでだろう心の中に穴が開いてる気がする)
手元を見ると財布と携帯を持ってた。
あんな時でも無意識にこれを掴んだ自分が嫌になる。
けど、財布は助かるのも事実なのが余計にくる。
携帯は見たくなかった。
なんか光ってたけど、思いっきり投げた。
「なにも感じないな」
あの携帯高かったけど、惜しいとは思わなかった。
(疲れた。
我慢してばっかの人生ってなんか意味あったかな。
どっか旅にでも行きたい)
「とりあえず、ここがどこだが聞こう。
携帯ないからあそこの空けた場所に行って人探さないと。」
足が震えてたけど、動かして前に進んだ。
途中で財布を見ると二万あった。
(二万あれば、ちょっとした旅にでも行けるかな)
空けた場所に着いて周りを見ると、神社っぽい雰囲気を感じる。
「近くに神社なんてあったんだ」
夕日が神社の瓦を染め上げていて、とてもきれいだった。
境内は厳かな雰囲気で、見ているだけで荒れていた心が静まっていくのを感じる。
ちょっと後悔の思いが浮かんできたが無視した。
周りを見渡しても、ここが案外大きな神社ってわかるだけで人は見当たらない。
案内板は見付けたので見てみると、ここは旅と願いの神様の神社らしい。
(あんなことあったのに、幸先がいい。
お参りしていくか)
賽銭箱の前に行った。
(俺には足がある。
歩いて旅をしよう。
どうせ最後だ、お参りする額ぐらい我慢したくない、全部かな)
二万もお参りすると、なんかすっきりした。
視界が広くなった気がする。
もう一度周りを見ると、母屋のそばに少女が掃除をしているのが見えたので傍まで行った。
「あの、すみません」
少女は巫女服姿で、黒髪を綺麗にまとめていて、掃除している姿も絵になる。
「どうされましたか?」
少女が振り返りながら、切れ長の目を瞬きして可愛らしい声で聞いてくる。
ピカ! ドシャー!! バチ!! グラグラ!!!
声をかけた直後、いきなり周りが光り出し揺れ出した。
いきなり過ぎて、何が起こったのか分からない。
「うお!」 「きゃ!」
何かが壊れるような崩れるような音がしたので、そちらに目をやる。
少女の方を見ると、母屋が崩れてくるのが見えた。
(やばい、やばい、)
そん時は勝手に体が動いてた。
自分がどうやって助かるかなんて考えてなかった。
ただ、足が震えていて上手く走れなかったから、少女に体当たりする格好になったけど、少女は突き飛ばすことができた。
少女が瓦礫の当たらない場所に転がっていくのが見えた。
頭の上から壁やむき出しの柱が迫ってくるのを感じたけど、心を占めていたのは安堵と喜びだけ。
(ああ、よかった。
なにも行動できない人生じゃなかっ「グシャ! ゴロゴロ!! バシャ!!!」
それが最後に俺が思ったことだった。
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