表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
萌えボイスと呼ばないで  作者: 零堵
~一学期編~
9/86

~第八話~

次の日なって、僕は、目覚まし時計のセットした時間に起きる。

起きて、顔を洗っていると

「朱莉~」

と言って、僕に抱きついて来るのがいた。

「お、お父さん! 僕だよ!」

僕に抱きついてきたのは、父親の圭吾父さんで、どうやら……朱莉母さんと間違えたみたいである。

「あれ……聖?」

「そうだよ……何で、間違えるの……?」

「だって、そっくりだしな?」

「え?」

そう言って鏡を見ていると、後ろから

「おはよう~」

寝ぼけ眼の朱莉母さんが、洗面所にやって来た。鏡に映った姿を見ていると、そっくりと言うか……双子?って感じに見えるぐらいに、本当に似てる風に見える。

「あ、ほんとだ……」

「だろ?」

「確かに……私と聖ちゃんだと、双子の姉妹に見えるわね~」

「それ笑えないんだけど……」

「そんな事より、朝食出来てるから、食べなさい?」

「あ、うん」

そう言って、顔を洗い終わり、身だしなみをチェックして、僕は、朝食を食べる事にした。

朝食を食べ終わり、遅刻するのは嫌だったので、自分の部屋に戻り、制服に着替える。

男物の制服なので、これで女の子には見えない筈……と思っていた。制服に着替え終わり、鞄の中に意思疎通用のノートを入れて、出かける事にした。通学路を歩いていると、桜の花びらが道路に散っていて、それを掃除している人をちらほらと見かけた。

そして、通っている高校、山野辺高校にたどり着く。

昇降口で、上履きに履き替えて、一年一組に向かう事にした。

一年一組の教室内に入ると、もう既にほとんどのクラスメイトが集まっていたりしている。

僕は、自分の席に座り、鞄を開いて、ノートを机に入れる作業をした。

作業が終わって、ぼ~っとしていると、キーンコーンとチャイムが鳴って、担任の碓井先生が入ってきて、こう言う。

「皆、おはよう、今日も普通の授業となっているので、そのつもりでいるように、では出席を取ったら、授業を始めたいと思う」

そう言って、出席を取った後、授業が始まった。授業内容は、中学時代と違って、ちょっと難しくなっていた。まあ、黒板に書かれている文章を、ノートに書き写すだけでいいかな……と思ったので、その作業に専念して、時間が過ぎていく。

そして、授業が終わり、お昼になった。

僕は、母さんが用意してくれたお弁当を持って、教室を出る事にした。

向かう先は、もちろん放送部員なので、放送室の扉を開けて、中に入ると

「あ、来たわね? 聖君」

そう言ったのは、部長の中田彩さんだった。

「あ、はい」

「それにしても……改めて聞くと、本当に凄い声ね……ねえ……聖君」

「はい……?」

「その声をいかして、キャラクターを演じるとかやってみない?」

「あの……それって?」

「実はね……来週、人形劇をやる事になってね? そのアフレコを聖君に頼みたいの、駄目かな?」

「人形劇ですか?」

そう話していると、遅れてやってきた、同じクラスの亮太がやって来た。

「お待たせしました~って、何か話してました?」

「ええ、聖君に人形劇の声をやってくれないかとね? あ、亮太君もやる?」

「あ、はい、やってみたいです、聖はどうだ?」

「う~ん……」

僕は、悩んで、まあやってみるのもいいかなあ……と思ったので

「じゃあ、よろしくお願いします」

「決まりね、じゃあ近いうちに何の役をやるか、教えるわね? 今の所、まだ台本が出来上がってないみたいなの、人形は出来てるんだけどね? その人形劇を、幼稚園で開演する事が決まってるわ」

「そうなんですか」

「なんか、ちょっと楽しみかも」

そう話していると、部員の洋子先輩が、こう言ってくる。

「二人とも、ラジオの準備お願いね?」

「あ、はい、じゃあ、聖、行こうぜ」

「うん」

そう言って、僕と亮太は、ブースの方に向かった。

ブースの中に入り、椅子に座り、マイクの調整をする。そして、スピーカーから、洋子先輩の声が、聞こえてきた。

「二人とも、準備はいい?」

僕と亮太は、Okのサインをする。

「じゃあ、行くわよ?」

そう言ってから、スピーカーから、洋子先輩の声が聞こえてくる。

「これから、お昼の放送をはじめます」

そして、僕と亮太の、ラジオ放送が始まった。



「こんにちは~、今回も始まりましたヤマノベラジオ、司会はもちろん、ブラックと」


「えっと……ホワイトです、よろしくお願いします」


「それにしても、ホワイトさん」


「はい?」


「なんか、すごい人気らしいですよ? 山野辺高校HPの書き込み欄もダントツにトップですし」


「あ、ありがとうございます……え~っと……人気が出て嬉しいです?」


「なんで疑問形なのかは置いといて、では、早速最初のコーナー、音楽を流します、それでは聞いて下さい」


そう言って、音楽が流れ出す

音楽が流れている間は、マイクのスイッチを切っているので、そのまま休憩する事にした。

休憩していると、ブースの中に洋子先輩が入ってきて、ノートPCを開く。

そして、音楽が鳴り終わり、再び、二人で話す事にした。


「いや~いい曲でしたね~ホワイトは、どう思いました?」


「確かにいい曲だったと思います」


「うんうん、じゃあ早速このコーナーに行きたいと思います! 題して「ホワイトボイス」~このコーナーは、このヤマノベラジオのマスコット、ホワイトちゃんに言って欲しい事をリスナーの皆さんに考えていただくコーナーです」


「え? 僕って、マスコットだったの……?」


「では、早速行きましょう、え~っと何々……ホワイトラブさんから「お兄ちゃん、大好きwって言って欲しい」って書いてありますね? では、ホワイトちゃん、どうぞ~」


「えええっ? う~ん……「お兄ちゃん、大好き♪」こ、こんな感じ?」


「今、このラジオを聴いている人、悶絶してると思いますよ~」


「も、悶絶……」


「じゃあ、次の人は~けいこんさんから「ご主人様、なにします? とかメイド風で」と、書いてありますね~では、ホワイトちゃん、どうぞ~」


「ええ……じゃ、じゃあ……「ご主人様、これでよろしいでしょうか……」と、まあ、こんな感じ?」


「グッジョ~ッブ!な、なんか興奮してきた……ハアハア……」


「っちょ!? ブラック、鼻息荒いし、顔近い~」


「おっと……いかんいかん、興奮してしまった……ま、まあこんな感じでやっていきたいと思います、さて、ホワイトちゃん、言ってみてどうでした?」


「みんな……もうちょっと、ましな回答を希望したいかも……なんかマニアックすぎるって感じです……」


「そうですか~おっと、もうこんな時間だ、今日はここまで、では、次回にお会い致しましょう、MCはこの俺、ブラックと」


「いつのまにかちゃんづけになってる、ホワイトです」


「以上で、お送りいたしました、この番組は放送部の提供で、お送りしました」


そう言った後、マイクのスイッチを切る。

そして、三人でルームの方に行って、洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて、こう言う。

「これで、お昼の放送を終わりにします」

そう言ってから、スイッチを切る。

「はい、OK~」

「今日の放送は、まあ、よかったんじゃないかしら?」

「あ、ああ……」

「あれ? 太一先輩……なんで、顔が赤く?」

「い、いや、これは……」

「ふっふ~実はね……太一の奴ね? 聖君の萌えボイスを聞いて、こうなったのよ?」

「何言ってんだ、そう言う彩だって、さっききゃーきゃー言ってたじゃないか? 変な含み笑いもしてたしな?」

「そ、それは……ちょっと妄想してだけよ!」

妄想って……一体何を……とそう思ったが、あえて聞かない事にした。

「そ、それより、あとは放課後に集まるだけよ? じゃあ、解散」

部長の彩さんが言ったので、僕と亮太は、自分のクラスに戻る事にした。

クラス戻ると、同じクラスの女子生徒、山本理恵さんが、こう話してきた。

「さっきの放送を聞いて、見てみなよ? クラスのみんなを」

そう言われて、見てみると、明らかににやにやしている者がいた。きっとというか、何かの妄想をして、悦に浸っているみたいである。しかも、よく声を聞いてみると

「なあ、さっきの放送の台詞聞いたか?」

「俺は、録音した、これでホワイトちゃんの声を毎日聞けるぜ……」

「あ、ずるいぜ、俺にもダビングしてくれ!」

そんな声が、聞こえたりしている。うん……録音って、はっきり言ってやめてほしかったけど、声を出すのは不味いので、言うのをやめる事にした。

「なんかさっきの放送を聞いて、妄想に浸っている奴、多いな……」

確かにそうだなあ……と、本当にそう、思ってしまう。

まあ、深く考えない事にして、自分の席に着き、午後の授業に、専念する事にしたのだった。

午後の授業は、結構簡単な授業内容だった。

まあ、授業内容をノートに書き写す作業で、時間が過ぎていく。先生に黒板の文字を読むようにと、他の生徒に呼びかけていたが、僕が文字を読むと、僕の声がラジオのホワイトちゃん? だと思われてしまうので先生に当てられませんように……と思っていた。

何とか当てられる事はなく、授業が終わる。そして放課後になり、担任の碓井先生の挨拶も終わり、帰る用意をしてから、僕と亮太は、部活なので、放送室に向かう事にした。

放送室の中に入ると、もう既に先輩達が集まっていて、僕達を見た後、部長の中田彩さんが、こう言ってきた。

「あ、二人とも来たわね? じゃあ、明日のラジオの事だけど、明日はちょっと変えて、洋子と太一の二人でやってもらう事にしたわ」

「じゃあ、俺と聖は、こっちで先輩の手伝いですか?」

「ええ、そうなるわね」

「太一先輩が、レッドって言ってたけど、俺がブラックで、聖がホワイト、じゃあ……洋子先輩はどうするんです?」

「私? そうね……ブルーにするわ、これでイエローが揃ったら、完璧に戦隊物よね?」

「あら、それは私にイエローをやれとか言ってるのかしら? 洋子」

「いや、そう言う訳じゃないわよ、ただそう思っただけよ」

「別に良いわよ」

「え?」

「別に私は、色にはこだわらないしね? さしずめ、放送戦隊ヤマノレンジャーってとこかしら」

「あ、それいいかもな? 二人は、どう思う?」

そう、部員の太一先輩が言ったので

「俺は別に良いと思いますよ、聖は?」

「僕は……うん、ありかな……と思います」

「じゃあ、決まりね? 放送戦隊ヤマノレンジャーとして、やってみましょうか」

「りょ~かい、あ、じゃあ、太一と明日のラジオの打ち合わせやるわね? ほら、太一、行くわよ」

「ああ」

そう言って、双子の先輩達は、ブースの方に向かった。

「じゃあ、亮太君、機材の使い方を教えるわね? 聖君には前に教えたから、今回は亮太君の番よ」

「あ、はい、わかりました」

そう言って、亮太は先輩に機材の使い方を教わっていた。

僕は、その姿を眺めていると、顧問の朝崎翠先生が放送室に入ってきた。

「あ、聖、お前の声な? 教師達にも好評だぞ?」

「あ、そうなんですか?」

「ああ、特に男性教諭で一人、オタクっぽいのがいてな……そいつが言うには、私に「あのホワイトの声、誰がやっているか教えてくれ」とか言われてしまってな……うまくごまかしといたが……それでよかったよな?」

「あ、はい、ありがとうございます」

「いや、それより……頼みたい事があるのだが……いいか?」

「僕にですか?」

一体、頼みたい事って何だろう?と思った。

「その男性教諭に頼まれてしまってな……目覚まし時計にホワイトの声を入れてほしいのだそうだ……どうだ? やってくれるか?」

僕は、どうしようかと悩んだが、まあ別に減るものでもないし、断るのも失礼かな……と思ったので

「まあ、それぐらいなら……別にいいですけど……」

「そうか、さんきゅ~な? いや~助かった、これで新しいゲームが買えそうだ、じゃあ、目覚まし時計を渡すから、明日、私に渡してくれ」

そう言って、僕に目覚まし時計を渡してきた。新しいゲームって……もしかして……その男性教諭に金とか貰ってたのかな……気になったので、ちょっと聞いてみる事にした。

「あの先生……その男性教諭に何か貰ったんですか?」

「ああ、なんか「金なら出すから、お願いする!頼む!」とか土下座してきてな? 丁度欲しかったゲームあったし、ついOkしてしまったのだ」

「土下座……そこまでしますか……」

「ああ、ちょっとどん引きしてしまったがな……」

「そ、そうなんですか……」

そんな話をしていると、ブースにいた二人が、戻ってきた。

「打ち合わせ終わりました」

「Ok~じゃあ、洋子、帰りの放送お願いね」

「りょ~かい」

そう言って、洋子先輩は、マイクのスイッチを入れる。

「下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい、繰り返します、下校の時刻になりました、皆様、速やかに下校して下さい」

そう言って、マイクのスイッチを切る。

「はい、OK」

「じゃあ、今日は解散ね? じゃあ、解散」

そう言ったので、僕は、亮太と一緒に帰る事にした。

帰り道、亮太が話しかけてきた。

「聖、先生に頼まれたの、どんな感じにやるんだ?」

「う~ん……まあ、ありきたりなのをやってみる事にするよ」

「をうか……じゃあ、出来たら、俺にも聞かせてくれないか?」

「え……? う、うん、分かった」

「じゃあ、俺、こっちだから、じゃあな」

「あ、じゃあ、さようなら~」

そう言って、僕は、亮太と別れて、家に戻る事にした。

家に帰ると、誰もいなく、僕、一人だった。

うん、丁度いいから、目覚まし時計に入れる音声の収録でもするかな……

と、思ったので、目覚ましの録音ボタンを押して、こう言った。

「えっと……朝、朝だよ? 起きて下さい~」

そう言って、録音ボタンを離す。

こんな感じでいっか……と思ったので、撮り直しはやらない事にして、両親が帰ってくるまで、ゆっくりとしている事にしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ