~第六十二話~
僕は、圭吾父さんと一緒に、何所かへ出かけるみたいだった。
一体…… 何所に向かっているんだろう?と、思いながら、山野辺市の街中を歩いていき、たどり着いた場所は、大きな建物だった。
「なんか…… 前にも来たような…… ?」
「何を言っているんだ? 聖、前にも来た事があるだろ? ここは、山野辺スタジオだぞ」
そう言われて、確かに思い出した。
前に圭吾父さんに連れて行ってもらって、この山野辺スタジオに来た事があった。
確か、その時に出会ったのは……アイドルの蓮城麗華さんだった。
「あ、確かに来たね……でも、お父さん、何で僕をここに?」
「いやな? 今日の収録はな……三階で、麗華のラジオの収録をやる事になっていてな? 聖もラジオの真似事をやっているのだろ?なら、見ていかないか?ってな」
「そうなんだ……うん、じゃあそう言う事なら」
「じゃあ、中に入るぞ」
そう言って、山野辺スタジオの中に入る。
前に来た時は、二階に行ったので、今日はエレベーターで三階に降り立った。
三階の部屋は、二階と同じで、収録スタジオになっていて、ブースとルームに別れていた。
ルームには、数人の男性がいて、ブースにいるのは、アイドルの蓮城麗華の姿が見えた。
スタッフの人が、圭吾父さんに向かって
「あ、こんにちは、では収録の手伝い、よろしくお願いします」
と言っていて、圭吾父さんが
「ああ、解った、本番まであとどれくらいだ?」
「あと、十分後で本番です」
「そっか、あ、皆に教えとく、今日はこの子は見学と言う事で、連れて来たんだ」
「よ、よろしくです」
僕がそう言った後、スタッフの人が
「うわ、凄いかわいい声ですね? プロデューサーの娘ですか?」
「ああ、そうだが」
「父さん、真面目に嘘ついて、どうするのさ……」
「え……じゃあ、息子さんですか?」
「は、はい」
僕がそう言った後、スタッフさん達が「嘘だろ?」「思いっきり美少女に見えるんだが」「見ためも声も女なら、完璧に美少女だよな?」とか言っていた。
そんな事言われても……もしかして父さん……こうなる事を望んでいたのかな……とか、思ってしまった。
僕がそう考えていると、ルームに、ブースにいた蓮城麗華が、入ってきた。
「あ、お疲れ様です、もうすぐ本番ですよね?」
「ああ、今日も頑張ってくれ」
「はい、あ、もしかして…… 前に会った子ですか? 確か…… 聖君よね?」
「あ、はい、聖です」
「お久しぶり、今日はどうしたの?」
「今日は、父さんの付き添いで、見学に来たんです」
「そう…… あ、ねえ、圭吾さん?」
「ん? 何だ?」
「実は……」
そう言って、麗華さんが、父さんに何か耳打ちしていた。
うん、何だろう……?
「お、それいいな? なあ、聖」
「何……?」
「聖、コマーシャルメッセージの収録をやってみないか?」
「え?」
「私のCDね? 来週発売になるんだけど、その宣伝として、聖君、やってみない?」
「え、でも……僕なんかでいいんですか? スタッフがOkしないと、それは駄目なんじゃ…… 」
「私は問題ないぞ? な、皆はどうだ?」
そう圭吾父さんが言うと、スタッフさん達が「問題ないっす」とか言ってきた。
「じゃあ、決まりだな? 聖、十五秒の間にこの台詞を言ってくれないか? 麗華のラジオ収録の前に、録音しとこう」
そう言って、圭吾父さんが、僕に台本らしき物を渡してきた。
「え? でも……麗華さん、僕がやっていいのかな……?」
「私はOkよ? よろしく頼むわね? 聖君」
麗華さんが、そう言うので、ここで断る雰囲気が全く出来なかったので、僕は、引き受ける事にした。
「じゃ、じゃあ……やってみます」
「ああ、じゃあ収録するぞ、聖、ブースの方に行ってくれ」
「あ、うん」
圭吾父さんに言われて、僕はブースの方に行く。
ブースの中に入り、スピーカーから、圭吾父さんの声が聞こえてきた。
「聖、準備が出来たら、Okサインを出してくれ」
そう言ってきたので、僕は、台本を読んだ後
準備が出来たので、Okサインを出す。
「じゃあ、収録するぞ? 5・4・3・2・1・きゅー」
そう聞こえた後、マイクのスイッチを入れて、台本に書かれてある台詞を言う。
「貴方に会えたよろこび、私にも夢を適える事が出来ました……蓮城麗華ニューシングル「天使の輪廻曲」、夢はきっと叶う……」
そう言った後、マイクのスイッチが切れて、ルームにいるスタッフの反応を見てみる。
すると、Okサインが出ていたので、とりあえず……取り直しとかは、ないみたいだった。
収録が終わったので、ブースの方に行くと
「聖、よかったぞ」
「聖君、お疲れ様、それにしても本当に凄い声ね?」
「あ、ありがとうございます……」
「よし、麗華、そろそろラジオの本番だから、ブースに入ってくれ」
「は~い、じゃあ、聖君、聞いてってね?」
そう言って、麗華さんが、ブースの方に行った。
僕は、ルームでスタッフさん達と一緒に、蓮城麗華のラジオ放送を聞く事にしたのでした。
三十分のラジオが終わり、圭吾父さんが「打ち合わせがあるから、残る事になってるけど、聖はどうする?」と聞いてきたので、僕は、先に家に戻る事にした。
圭吾父さんと別れて、自分の家に戻ると、朱莉母さんが帰っていて
「お帰りなさい、聖ちゃん、何所に行ってたの?」
と聞いてきたので、父さんの所で、やった事を説明すると
「そう、聖ちゃん、手伝ったの、それは聞いてみたいわね?」
とか言っていた。
僕は、収録した台詞、何所で使われるのか……後で、圭吾父さんに聞いてみよう……と、思う事にしたのであった。




