~第五十六話~
山野辺高校学園祭当日
僕達のクラスは、メイド喫茶をやる事になってました。
クラスの女子がメイド服を着て、やって来たお客様に対して「いらっしゃいませ、ご主人様」と言って、接客をしていた。
お客の入りは、結構沢山いて、なかなか賑わっていた。
よく見てみると……いつの間にか、僕の両親の圭吾父と、朱莉母がいて
「何だ、聖はメイド姿じゃないのか……」
「ええ、でも調理姿も似合ってるわねえ……」
とか言っていた。
うわ、なんか……ちょっと恥ずかしいかも……
僕は、調理担当だったので、オーダーがかなり入ったので、順番通りに
調理していく事にした。
作っては、お客に出してを繰り返していると、メイド服を着たこのクラスの委員長
中本愛理さんが
「天野君と赤井君は、抜けていいよ? 確か……演劇部の手伝いだったよね?」
そう言ってきたので、僕と亮太はお礼を言って、クラスから抜け出させて貰う事にした。
教室を出て、体育館に行くと、他のクラスの出し物なのか
バンド演奏をやっていた。
体育館の裏側に回って、そこに同じクラスの山本理恵さんがいて
僕達に気がついて、話しかけてきた。
「赤井君に天野君、衣装に着替えて? はい、これ衣装ね?」
僕と亮太に、演劇用の衣装を渡してきた。
僕はそれを受け取って、何所で着替えればいいかな……と迷って、あいているスペースで、着替える事にした。
着替え終わって、思った事は……
「ね、ねえ、山本さん……これ、女の子の衣装じゃあ……」
そう、僕の着る事になった衣装は、何故か女物の衣装だった。
僕がそう言うと、理恵さんが
「ごめんね? 天野君の見た目って、思いっきり美少女に見えるしさ? 演劇部員の皆が言うには、こっちの方がいいって聞かなかったんだよ、天野君、お願い、この衣装で出てくれない!!」
そうお願いされてしまった。
これは……断る雰囲気じゃなく、断れそうになかった。
「聖、その衣装に似合ってるから、そのままでよくないか?」
衣装に着替えた亮太が、そう言ってくる。
改めてみてみると、亮太は兵士の恰好なので結構似合っていた。
ちなみに僕の役は、通行人となっているので、男の通行人の恰好でもよかったんじゃない? と思い
「じゃあ、亮太、僕のと交換してよ……」
「い、いや……聖はそっちの方がいいって、それに通行人が、兵士姿ってなんか変じゃね~か?」
交換してくれそうになかったので、僕は仕方がなく
「それもそうだね……はあ……じゃあ僕、これで出るよ……」
「ありがと、見た目で天野君と解っちゃうかも知れないから、髪型と変えてみたらどうかな?」
理恵さんにそう言われたので、僕は
それもそうかな……と思い、今しているポニーテール姿をやめて、ストレートヘアーにする事にした。
ヘアゴムを取った姿を見て、亮太と理恵さんが
「うわ……思いっきり、女の子に見えるな」
「うん、さすがとしか言いようがないかも……声も高いから、ばっちりと女の子だね」
「なんか、あんまり嬉しくないかも……」
「ま、そろそろ本番始まるから、待機していましょう」
理恵さんがそう言うので、僕達は体育館の裏手で、待機する事にした。
そして時間が過ぎていき、放送で
「これから、演劇部の劇を行います、演目は「ヤンデレ王女と狼さん」です、それでは、どうぞ~」
放送部の部長の、中田彩部長の声が聞こえてきた。
「じゃ、頑張りましょう?」
と理恵さんが、出演者に言ったので
演劇の出演者が「おお~」と言って、ブザーが鳴り、演目
「ヤンデレ王女と狼さん」が、始まったのでした。
ナレーション担当が、放送部の先輩の双子の一人、西岡洋子((にしおかようこ)先輩だった。
先輩の声から始まり、物語がスタートしていく。
「昔々、ある所にとっても変わった王女様がいました……」
ナレーションから始まり、主役の理恵さんが、舞台に出てくる。
そして台詞を言い、物語がスタートした。
僕の出番は、結構後の方になるので、舞台袖で出番を待っていると亮太の出番になったみたいなので、亮太が、舞台の方に行く。
「王女様、どちらに行かれるのですか?」
「放して! あの人に会いたいの……うふふふ、逃がさないから!」
うん……演技を見てみると、理恵さん、すっかりなりきってるし、亮太もバッチシと決まっていた。
物語が進ん行き、僕の出番になったので、僕も舞台に躍り出る。
舞台に出てみて、観客を見て見ると、その中に、ビデオカメラで録画をしている圭吾父と
その隣でニコニコと笑顔でいる、朱莉母さんがいた。
言った通りに録画してるんだ……と思ったけど、台詞を言わなくちゃいけなかったので、演技に集中する事にした。
「どうしました?」
僕がそうが言うと、なんか観客が「おお?」とか反応を見せる。
やっぱりこの声のせいかな……? と思うのだけど、深く考えない事にして
演技に集中する事に決めた。
「あの人を見かけなかった?」
「あの人とは……?」
「あの、二枚目で野性味溢れる顔だちをした男の人の事、何か知ってない?」
「えっと……よ、よく知りません」
「そう、まさか……貴方、あの人を家に匿って、嘘をついていないでしょうね?」
「ええ!?そんな訳ないですよ!」
「そう、なら良いわ……邪魔したわね」
「あ、はい、お気をつけて……」
台詞を言った後、ステージから出ていく。
これで僕の出番は無くなったので、後は結構楽だった。
そして、話は進んでいき、狼さん役の人が「愛してる」と言って
王女様も「ええ、私も!浮気は絶対に許さないわ!!お~っほっほっほ」
と言って、劇が終わった。
そして、ラストに出演者全員で、ステージにあがり
理恵さんが「ありがとうございました」と言ってから、礼をすると
拍手が巻き起こった。
挨拶も終わり、舞台袖に行った後、僕は早速、着てる服を脱いで、ヘアゴムでポニーテール姿に戻して、制服に着替える事にした。
着替えが終わり、主役の理恵さんが
「お疲れ様、天野君、大成功よ」
「そ、そうかな?」
「ええ、じゃあ私も着替えて教室に戻るから、先に戻ってくれないかしら?」
「あ、うん、亮太、行こっか?」
「ああ、そうだな、じゃあ聖、戻るか」
「うん、じゃあまた教室で」
「ええ」
そう言って、僕と亮太は、自分のクラスへ戻る事にした。
クラスに戻ってみると、お客が「おれ、劇見てきたけど、通行人の子、すっげえ~可愛いかったな~」とか「ああ、あんな子なら彼女にしたいかも……」とか言っているのが聞こえてしまった。
……とりあえず、僕とすれ違っても、声をかけられる事はなかったので
ばれてないんだ……とほっとしてしまった。
隣にいた亮太は
「すげえな……聖、可愛いってさ?」
「それ本気で言ってる?」
「嬉しくないのか?」
「あんまりね……ま、僕の正体、気が付いてなかったみたいだし、そこは助かってるかな」
「そっか、ま、戻ろうぜ?」
「うん」
そう話しながら、自分のクラスに戻り、自分のクラスの出し物「メイド喫茶」を手伝う事にしたのでした。
劇も無事に終わって、僕は、クラスの出し物の手伝いをする事にした。
主役だった山本さんも戻ってきて、クラスメイト全員で、メイド喫茶をやり、時間が経過して、放課後になると、放送が聞こえてきた。
「ただいまを持ちまして、学園祭を終了させて頂きたいと思います」
放送が聞こえると言う事は、放送室にいるのは、先輩達で、さっきの声は、西岡洋子先輩の声だった。
放送が聞こえた後、お客がぞろぞろと帰っていき、そして、担任の碓井先生が入ってきた。
「皆、お疲れ様だな、じゃあ片付けの作業に入るぞ、片付け終わったら、帰っていいぞ?」
先生がそう言うと、クラスの委員長の中本さんが
「はい、じゃあ女子は服装を着替えましょう? 男子は、後片付けよろしくね」
そう言い、女子が着替える為、他の場所に移動してしまった。
「よし、じゃあ……片付けるか」
僕に話しかけて来たのは、同じクラスで同じ部活仲間の亮太だった。
「うん、そうだね」
そう言って、調理器具とか、余った材料を片付ける事にした。
他の男子は、机を元に戻し、片付けが終わった頃には、女子生徒も戻ってきていて、委員長が片付け終わったクラスを見て
「うん、問題ないわね? じゃあ、先生が帰っていいって言っていたから、帰りましょう? さようなら」
そう言っていた。
その合図があった後、クラスメイトが続々と帰っていく。
僕は、どうしようかな?と思っていると、亮太が
「聖、一度、放送室よってから帰ろうぜ?」
言ってきたので
「うん、そうだね」
そう言って、鞄を持って、亮太と一緒に、放送室へと向かう事にした。
放送室の中にたどり着くと、もうすでに先輩達全員いた。
「あ、二人とも、今日はお疲れ様」
そう言ったのは、部長の中田彩さんで、他に双子の洋子先輩と、太一先輩がいて、放送部員、全員集まっていた。
「お疲れ様です」
「じゃあ、早速だけど、月曜日の打ち合わせをするわね? 月曜日のラジオの担当だけど……どうする? 誰かやりたい人いる?」
「そうねえ……そう言えば、彩が一番ラジオの出てる回数が少ないんじゃないかしら?」
「あ、確かにそうだな」
「ふむ……じゃあ、まずは私? まあ、それもいいけどね? じゃああと一人だけど……聖君、たまには二人でやってみましょうか?」
彩部長がそう言うので
「あ、はい、解りました」
「じゃあ、決まりね? 後は他に連絡する者っていたりする?」
「いや、特にないわよ」
「俺もないな」
「じゃあ、今日はこれで解散ね? 今日はほんとは休みだから、放課後の放送はやらなくていいわね……では、解散」
部長の彩さんがそう言って、放送部のミーティングが終わった。
「じゃあ、帰ろうぜ?」
そう亮太が言うので
「うん、じゃあお疲れ様でした」
先輩達にそう挨拶してから、僕は、亮太と一緒に帰る事にしたのでした。
亮太と別かれて、家に戻ると
圭吾父が
「聖~バッチリと録画しといたぞ~、見てみるか~?」
となんか、ご機嫌な感じでそう言ってきたけど
僕は恥ずかしかったので
「ううん、見ないよ……」
と言って、自分の部屋に戻り、休む事にしたのでした。
こうして、学園祭が終わったのでした。




