~第三十六話~
次の日、僕は、いつもと同じ時間に起きた。
おきてから、まず声の発声練習をしてみる。
「低い声は……まあ、低く聞こえるけど……まだ高いほうかな……」
数分の発声練習をやめて、洗面所に向かい、顔を洗う事にした。
顔を洗い終わり、鏡を見てみると、そこに写っているのは、長髪の髪の美少女っぽく見れる僕の顔だった。
この姿で、女物の服を着て、町とか歩いたら、もしかしたらと言うか……ナンパとかされるのでは……とか思い、やっぱり髪を切ったほうがいいかな……とも、思ってしまい、鋏で自分で切ろうかな……とも、思ってしまった。
でも……母さんが「切っちゃ駄目」とか言ってるし……そう悩んでいると
「お……聖? どうしたんだ?」
そう言ったのは、僕の父さんだった。
僕は、お父さんにこう言って見る。
「お父さん、やっぱり髪、切った方がいいかな?」
そう聞いてみると
「そうだな……いや、聖は今の方がいい、うんうん、今の髪型の方が似合っているぞ? 可愛い娘に見えるしな~」
と言って、頭をなでて来た。
父さんも僕が髪を切るの反対派なのか……というか……可愛い娘って……
そう見られていると思うと、ちょっと憂鬱だった。
いつまでも洗面所にいる事はないので、身だしなみをチェックして、リビングに向かった。
リビングに辿り着くと
「あ、おはよう、聖ちゃん」
そう言ったのは、僕の母さんで、見た目に関しては、僕とほとんどそっくりだった。
「おはよう……」
「どうしたの? ちょっと元気ないけど?」
「いや、ちょっとね……お母さん、朝ごはんは?」
「もう出来てるわよ?じゃあ、食べましょうか?」
「うん」
そう言って、食卓につく。
今日の朝食は、トーストに野菜サラダ、ベーコンエッグで、思いっきり洋食だった。
僕は、あっという間に食べ終わり、自分の部屋に戻って、山野辺高校の制服に着替える。
男子用の制服を着て、黒のヘアゴムで髪をポニーテールに纏めて、鞄の中に、必要な物を入れて、朱莉母さんからお弁当を受け取った後
「行って来ます」
そう言って、外に出る。
外の天気は、結構涼しい風が吹いていて、ちょっと涼しかった。
通学路を歩き、山野辺高校に辿り着く。
自分のクラスに辿り着き、自分の席に座り、鞄の中身を机の中に入れる作業をしていると
「やあ、おはよう」
と、声をかけて来たのは、同じクラスの女子で、演劇部に所属している、山本理恵さんだった。
教室の中だったので、僕はノートを取り出して、こう書く。
「おはようございます」
と、書き込むと、それを見た理恵さんが
「おや……また、筆談を始めたんだね?」
と聞いてきたので、僕はノートに
「ええ、まあ……教室内ですしね」
そう書き込むと
「そういう事か……まあ、君があの声で話しかけたら、確かにクラスメイトは驚くね……事情はわかった、君の声が直る事を願っているよ? あ、そうだ、演劇部でやる事になってる劇の事だけど、ちゃんと練習はしたかい?」
理恵さんが、そう聞いてきたので、僕は、ノートに
「十分とはいかないまでも、練習はしました」
と、そう書き込んだ。
「そうか、それはよかった、ミスる事無く頼むよ? じゃあ、僕はこれで」
そう言って、理恵さんが自分の席に戻っていった。
それから僕に声をかけてくる者はいなく、チャイムが鳴る。
チャイムが鳴って、担任の碓井先生が入ってきて、こう言って来た。
「皆、おはよう、今日は普通の授業内容だ、特にこれといって連絡はない、では、出席を取った後、授業を始めたいと思う」
そして、授業が始まった。
僕は、なるべく先生に指されたくないなあ……と思っていた。
授業内容は、一学期と比べて、少し難しくなっていた。
まあ、先生に指されないように……と思っているので、普通にノートに黒板の文字を書いていく。
担任の碓井先生は、生徒に問題を解かせる事はしなく、授業内容を進めていく。
ず~っと文字を書いているので、ちょっと手が痛くなったけど、結局、先生に当てられるという事はなく、時間が過ぎていき、何とか授業を乗り切る事になった。
と言っても、次の授業が問題だった。
何故なら……音楽の授業だったからで、しかも合唱の授業だった。
まあ、個人個人で歌うシングルパートではなく、全員で歌う事になっていたので、僕は、歌の時に、口パクで歌う振りをして、誤魔化す事にした。
何とかバレルと言う事はなく、授業も進んで、音楽の授業が終わる。
お昼になったので、僕は、同じクラスの赤井亮太を誘って放送室に向かう事にした。
放送室の中に入ると、既に先輩達と、珍しく顧問の朝崎翠先生がいた。
「あ、来たわね? じゃあ、太一? 亮太君、準備してくれる?」
部長の中田彩さんが、そう言って
「りょ~かい、飯はそうだな……あっちで食べる事にしようぜ?」
「はい」
亮太と西岡太一先輩が、ブースの中に行って、ラジオの準備をする事になった。
僕は、ルームの中にいて、先輩達に何も言われてないので、やる事がないのかな?と思っていた。
そう思っていると
「聖、ちょっといいか?」
と、声をかけてきたのは、朝崎先生だった。
よく見てみると、先生の手に、携帯ゲーム機、SNPを持っている。
うん……先生なのに、いいのかな?って思うんだけど……
「はい? 何ですか?」
「聖、このゲーム持ってるか?」
そう言って僕に見せてきたのは、最近話題のゲーム
DSFという、ゲームソフトだった。
ちなみに、僕もそのソフトは、夏にバイトして、購入済だったりしている。
「あ、はい、持ってますよ」
「そうか、じゃあ、この場面まで、進んだか?」
と、僕にゲーム画面を見せてきた。
中身を見てみると、僕の進んだ所より、結構先に行ってるみたいだった。
「いや……進んではいないです……」
「そうか……ここの暗号、持ってるんだったら聖、知ってるかと思ってな……」
「お役に立てなくて、すいません」
「いや、いいんだ、やっぱ自分で解くしかないか……う~ん……ここはああするのか? いやしかし……」
そう先生がぶつぶつ言っている。
この人、本当にゲーマーなんだなあ……と、ちょっと思ってしまった。
「じゃあ、亮太君、太一? 準備はいい?」
彩部長が、ブースにいる太一達に、マイクで話しかける。
ブースにいる二人は、Okのサインを出していた。
「OKね? じゃあ、洋子、お願いね」
「はいは~い」
そう言って、洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて、こう言う。
「これから、お昼の放送を始めます」
こうして、太一先輩と亮太の、ラジオが始まりました。
お昼の時間になり、ラジオを開始する事になった。
と言っても、僕はパーソナリティではなく、ブースの方で待機する事になったので、お昼ご飯を食べながら、放送を聴く事にした。
今日、パーソナリティは、放送戦隊ヤマノレンジャーのブラックとレッドなので、ホワイトの僕としては、二人のやりとりを傍観する事になったのでした。
「さあ、今日も始まりました、ヤマノベラジオ、今日の司会は、毎度お馴染みブラックと」
「今日は、レッドでお送りします」
「いや~レッドさん、久しぶりって感じがしますね」
「そうですかね? まあ、人気があるのは、ホワイトちゃんってなってるし……どうせ俺なんて……」
「おや~なんか、元気がないですけど? どうしました? レッドさん」
「いや……自分の評価があまりにも低いので、落ち込んでるだけだったり……」
「そうですか~、まあ、自分には関係ありませんけどね」
「関係ないって……」
「では、気を取り直して、まず音楽を流します、では、聞いてください」
ブラックこと、亮太がそう言ったので、洋子先輩が音楽を流す。
今日流す曲は、ゲーム曲と聞いていたので、一体何の曲なんだろ? 耳を澄まして聞いてみると、なんか、聞いた事のあるような曲だった。
僕は、気になったので、先輩達に聞いてみる。
「あの……この曲って、何ですか?」
「あれ? 聖君は知らないかな? これはね?」
「これは、シューティングゲーム「メロディポップス」のテーマ曲よ?」
「メロディポップス……」
「最近は、CMとかで紹介してるけど、聖君は見た事ないのかな?」
「う~ん……見た事ないって感じです、それにやった事もありませんし」
「あ、だったら貸そうか? 私、ダブってるし」
「何でダブってるのよ? 彩……」
「二つ買うのは基本じゃない? ほら、一つが壊れたら、予備用としてさ?」
「そういうもの?」
そんな会話をしていると、曲が終わり、洋子先輩が、ノートPCを持って
ブースの方に向かった。
再びブースにいる二人が、話し出す。
「いや~いい曲でしたね~レッドさん」
「ああ、本当にそうだなあ……ちなみにブラック、今、流した曲って知ってる?」
「ええ、知ってますよ、これはシューティングゲーム「メロディポップス」と言うゲームに使われている曲ですね、ちなみにこのメロディポップス、キャラがかわいいとか評判のゲームだったり、まあ、クリアするのにかなり苦労すると言う結構シビアなゲームだったりします」
「というか……学校でゲーソンとか流してOKなのか?って感じなんだが……」
「いいって言ったから流したんです、何か文句でも?」
「何でブラックが怒ってるんだ?」
「いえいえ怒ってませんよ? 今日はホワイトちゃんがいないので「ホワイトちゃんに言って欲しい台詞」はないですね~あ、ちなみにブラックとレッドに言って欲しい台詞、募集しましょうか?」
「あ、それいいかもって……なんか……評価を見てみると、リスナーの皆は「別にイラネ」「レッドとかブラックより、ホワイトちゃんの方がいい」「ああ、それ俺も賛成」と、書かれてるけど……」
「あ……本当だ、えっと……ホワイトの人気が凄いって事は確かですねえ」
「俺だって、人気が欲しいぜ……」
「まあ、生きてればいい事があるよ?きっと……」
「きっとって!?」
「お~っと、今日はここまです、リスナーの皆、楽しめたかな? 今日のお相手は、ブラックと」
「レッドです」
「以上でお送りしました、この番組は、放送戦隊ヤマノレンジャーの提供で、お送りしました、明日の放送はまだ誰になるかは、分かりませんが、期待してね? それじゃあ」
そう言ってマイクのスイッチを切る。
そして、ブースにいる三人が、ルームに戻ってきた。
二人が戻ってくると、部長の彩さんが
「洋子、お願い」
「はいは~い」
と言って、マイクのスイッチを入れて、こう話す。
「これで、お昼の放送を終わりにいたします」
そう言ってから、マイクのスイッチを切る。
「これでOK」
「よし、じゃあ明日の事は、放課後に決めるわよ? では、解散」
彩さんがそう言ったので、僕と亮太は、自分のクラスに戻る事にした。
自分のクラスに戻って、僕は午後の授業の準備をする事にした。
そして、午後の授業が始まりました。
午後の授業は、それほど難しい問題が出る事はなかった。
普通に授業を聞いてるだけでよかったので、先生に指されると言う事はなく
僕の声を出す事はなく、あっという間に授業が終わり
担任の碓井先生が
「明日の連絡だが、時間割通りの授業内容だ、特にこれといって、連絡はない、以上」
そう簡潔に述べて、教室から出て行った。
僕は、同じクラスの亮太と一緒に、放送室に向かう事にした。
放送室に辿り着くと、既に先輩達が集まっていて、僕達が一番最後だった。
「あ、二人とも来たわね?」
そう言ったのは、部長の中田彩部長で、部長が僕達にむかって、こう言ってきた。
「明日のラジオの事だけど、明日は洋子と聖君にお願いするわね?」
「了解、じゃあ、聖君、打ち合わせしよっか?」
「あ、はい」
そう言って、僕は先輩の洋子先輩と、ブースで明日の打ち合わせをする事になった。
数十分程度で打ち合わせが終わり、ルームに戻ると、彩部長が
「洋子、お願い」
と言って
「はいは~い」
と洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて、こう言う。
「下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい、繰り返します、下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい」
と言って、マイクのスイッチを切る。
「これでOk」
「よし、じゃあ今日は解散ね? 日も頑張りましょう」
そう部長の彩さんが言ったので、放送部の今日の活動が終わった。
終わったので、僕は亮太と一緒に帰る事にした。
帰る途中、亮太がこんな事を言ってきた。
「聖」
僕は、小さい声で
「何ですか?」
「今日、これから暇か?」
「え~っと……暇と言われれば暇ですけど……?」
「じゃあさ? 映画見に行こうぜ? 丁度見たい映画があってさ? 一人で見に行くのもなんかな……ってな? だから行こうぜ? あ、代金は俺が出すよ」
「え、いいんですか? なら……うん、行きましょう、あ、でもこのままの格好で行くの?」
「あ、そうだな……学生服のままってのもな……じゃあ、一旦、家に戻って、着替えて待ち合わせってどうだ?」
「あ、それでいいですね」
「じゃあ、決まり、待ち合わせ場所は山野辺駅の待ち合わせ広場でいいよな?」
「はい、それでOkです」
「じゃあ、また後で」
そう言って、僕は亮太と別れて、自分の家に戻った。
家に戻って、着てる山野辺高校の学生服を脱いで、私服に着替える。
動きやすい格好に長ズボンを履いて、青色の帽子を被り、外に出て、待ち合わせの山野辺駅の待ち合わせ広場へと向かった。
山野辺駅の待ち合わせ広場に辿り着くと、まだ亮太は来ていなく、他に待ち合わせをしてる人がたくさんいた。
僕もそこで待っていると
「ねえ? 一人? 一緒に遊びにいかない?」
と、僕に声をかけてきたのは、いかにも遊び人って感じの男だった。
一体こいつには、僕の姿はどう写ってるんだ?って思うんだけど……僕がだんまりを決め込んでいると、亮太がやってきて
「お待たせ、待ったか?」
と聞いてきた。
僕は内心、助かった……と思い、亮太の隣に行く。
すると男が「っち、彼氏持ちか……」と言って離れていく。
彼氏持ちって……僕と亮太がそう見えるって事なのか……?
やっぱりこの髪型のせいか……と、ちょっと落ち込んでしまった。
「と、とりあえず映画見に行こうか? 聖」
「そ、そうですね……」
そう言って、映画館の中に入る。
僕達が見た映画「ブラック・プリンス・ロード」と言われる、アクション映画だった。
内容的には結構面白く、映画館の中で寝ないで、最後まで見てしまった。
見終わった後、近くのファーストフードで食事をして、亮太と別れて、家へと戻る。
家に戻ると、朱莉母さんが
「あら、聖ちゃん? デートだったの?」
と聞いてきたので、僕は
「亮太と遊びに行っただけだよ……」
と言うと
「そう……でも見た目的には、デートっぽくなったんじゃないかしら?」
と言ってきた。
そう言われても……と思ったけど、何か反論するとまた何か言われそうだったので、僕は、黙っておく事にした。
こうして、今日の一日が、終わりました。




