~第一話~
季節は春になり、僕は新しい制服を着て、学校へと向かっている。受験に成功し、落ちたりもしないで、何とか高校に一発で入学する事が出来た。気持ち的には、ちょっとどきどきする。
だって、初めて会う人とちゃんと友達に……と思ったけど、僕には秘密があるので、友達はもしかしたら、作れないのかも知れない……何故なら……僕には、ある秘密があったからだった。
その秘密というのは、まあ、後で教えとこうかな? と思う。そんな訳で、新しく通う高校、山野辺高校と言う場所に入る事となった。うん、学校的には、わりと普通の学校なんだと思う。
山野辺市に新しく、引っ越してきて、通う事になったので、前の中学のクラスメイトは一人もいない筈だし、だから何にも心配は無いと思う。何故、僕がこう心配しているかと言うと……中学時代に嫌な事があったからだった。僕、個人としては、あまり思い出したくない出来事だし……まあ、過ぎた事は、忘れる事にして、学校、山野辺高校にたどり着く。僕と同じく、新入生として、入学してくるからか、昇降口の前に、人が集まっていて、どうやら、新入生のクラス発表を提示してあるみたいだった。
僕は、その中に入り込み、自分のクラスと名前を確認してみる。じ~っと確認してみると、僕の名前を、一年一組と書かれてあったので、誰にも話しかける事なく、昇降口の中に入る事にした。
昇降口の中に入り、下駄箱に靴を入れて、一年の教室を探す。一年の教室は、直ぐに見つかり、一年一組にたどり着いた。中に入ると、思った通り、僕の知っている人は、一人もいなく、僕は、あいている席に座る。あいている席に座って、ぼ~っとしながら先生が来るのを待っていると、僕に話しかけてくる者がいた。僕に話しかけてきたのは、初日なのに、何故か髪の色が茶髪の男の子だった。
「よっす、初めて見る顔だけど……もしかして、外部から来たのか?」
「……」
僕が、黙っていると、茶髪の男子が、こう言ってくる。
「おいおい、だんまりかよ、愛想のない奴だな?」
そう言ってきたので、僕は、ノートに「初めまして、天野聖と申します」と、記した。
「天野聖ね……もしかして、話せないのか?」
そう聞いてきたので、僕は、再びノートに「はい、ちょっと事情があって、あまり話したくないのです」と、書く。
「ふ~ん、ま、いいけどな。あ、俺の名前は赤井亮太って言うんだ、俺の事は、亮太でいいぜ、聖って、呼んでいいか?」
そう聞いてきたので、僕は、ノートにこう書く。
「はい、それでいいです」
そう書くと、亮太は、僕に自分の事を聞いてきた。趣味はなんだとか、嫌いな食べ物や好きな食べ物はなんだろか? とか、聞いてきたので、ノートに、聞かれた事を書いていく。それを見て、亮太が
「分かった、俺の事も、教えるよ」
そう言って、亮太の事を教えてくれた。うん……この人、見た目は不良っぽいけど、中身はいい人なんだと思う。僕は、この人なら、僕の秘密を打ち明けてもいいかな……と、思い、ノートにこう記す。
「ところで、僕が何で、ノートに文字を書いてるか、知りたくないですか?」そう書くと、亮太は
「まあ、知りたいと言えば、知りたいけど、教えてくれるのか?」
そう言ってきたので、ノートに
「はい、僕の秘密をばらさなければ、教えますけど、約束守れますか?」
と書くと
「守れるぜ、俺はな……人の噂を告げ口する奴とか、大嫌いだからな、だから、約束は守る」
そう言って来る。僕は、その真剣な顔を見て、嘘をついているようには、見えないので、 ノートにこう記す。
「解りました、じゃあ、僕の秘密を教えますね?」
そう書いて、ノートを置き、彼の耳元で、小声でこう言う。
「初めまして、天野聖です、よろしくね」
そう言った瞬間、亮太が
「え!? な、何だ!? 今の声!??」
物凄い驚いていた。僕は、再びノートにこう記す。
「解っていただけました? 僕の秘密は、声です、声が物凄いアニメとかに出てくる美少女ボイスなんです、この声のせいで、中学時代に嫌な事がありました、だから人前で、あんまり話したくないんです」
そうノートに書くと、亮太は
「あ、ああ……解った、聖の秘密は、守るよ……そ、それより」
亮太は、なんかもじもじしながら、こう言ってきた。
「たまになら、その声を聞かせてくれないか……?」
僕は、一瞬悩んだが、こうノートに記す。
「はい、たまにならいいです、これからよろしくね? 亮太」
そう書いたら亮太が、嬉しそうな表情をした。
こうして僕に、新しい友達が、できたのであった。まあ……この亮太君は、僕の秘密を、バラサないと言っていたので信用しても、いいんだと思う。時間がたって、先生が、教室の中に入って来る。
入って来たのは、二十代ぐらいの男の先生だった。
「あ~とりあえず、皆さん、入学おめでとう、我が山之辺高校で、しっかりと勉学に励むといいぞ、ちなみに私の名前は、碓井仁志だ、ウスイヒトと言うと、怒るぞ、碓井先生と呼ぶように、じゃあ、まず、自己紹介を始めてくれ」
そう言って、生徒に自己紹介を進める碓井先生。クラスメイトが、自分の名前と趣味を言って、僕の番になった。僕は、話す事はせず、ノートに「僕の名前は、天野聖です、最近、この山野辺市に引っ越して来ました、話す事が苦手なので、ノートで自己紹介をします、皆さん、よろしくお願いします」と書く。それを見た、クラスメイトの反応は、さまざまだった。
でも、隣の席の子も後ろの席の子も、僕に話しかけようとは、しなかったので、とりあえず、安心かな……?と、僕は、思ったのである。碓井先生は
「そうか、まあ、それが君の個性なのだろう、まあ、いいぞ、じゃあ、次」
そう言って、今度は、亮太の番になった。
「俺の名前は、赤井亮太です、こんな髪してるけど、根はまじめなので、よろしく」
そう自己紹介が終わり、クラス全員の自己紹介が、終わる。終わった後、碓井先生が
「じゃあ、自己紹介がすんだ事だし、入学式の式典をやる事になってるから、体育館に集まるように、じゃあ、移動するぞ」
そう言って来たので僕は、クラスメイトと一緒に、体育館に移動する事にした。体育館の中は、結構広く、上級生の姿も見えたりして、大勢の人数となっている。先生方を見てみると、美人の先生がちょっと、多かった。中でも、特に目が入ったのが、立ったまま寝ている先生を発見してしまった。
思いっきり寝ているのに、ほとんどの先生が、気がついていなく、一人の先生が、こう言っているのが、聞こえてくる。
「翠、退屈だからって寝ちゃ駄目よ」
「……ん、芹か、いやな、昨日からず~っと、ネトげやっててな……むっちゃ、眠いのさ、ふああ……この後、ハゲ校長のありがたくもない言葉だろ? あれは、睡眠の呪文だって」
「そんな事言わないの、ったく翠は……変わんないわね……?」
ん~と聞いて……いる限りでは、あの先生方は、仲が良いみたいなんだな……と、少なくとも、僕は、そう思った。そして、音楽が流れて、式典が始まる。ステージの上に、黒髪のフサフサした髪の毛をした、校長らしき人が、こう言って来る。あれ……? さっきの先生、ハゲ校長とか言ってなかったっけ……?
「皆さん、ご入学おめでとう、この学校で、楽しく過ごすといいのじゃ、あ~春だからと言って、気だるくなるのは解るのじゃが、規則正しく行動するのが、いいのじゃぞ」
そんなような言葉を数十分語っていた。うん、なんだか本当に眠くなるなあ……と思いながら、眠たくなるのも、我慢して、式典が終わる。式典が終わって、クラスに戻ると、碓井先生が
「今日は、入学式だけだから、授業はないから、もう帰ってもいいぞ、では、また、明日な?」
そう言って、教室から出て行く。帰ってもいいと、言っていたので、僕は、早速、帰り支度をして、家に帰る事にした。教室を出て、昇降口に行き、靴を履き替えて、外に出ようとすると
「聖、帰るのか?」
話しかけてきたのは、同じクラスの亮太だった。
僕は、ノートに、こう記す。
「はい、帰ってもいいって、いったので、帰りますが」
そう記すと
「じゃあ、同じ行き先だったら、一緒に帰ろうぜ?」
そう言って来たので、僕は、断る理由がないので、ノートに
「はい、解りました」と、書く事にした。
こうして僕は、亮太と帰る事になった。山野辺高校を出て、亮太と一緒に帰っていると、亮太が、こう言って来る。
「なあ、学校じゃなきゃ、喋ってもいいんじゃないか?」
そう言って来たので、ちょっと考えて、ノートをしまい、小声で話す事にした。
「それもそうですね」
「うわ、すっごい声だな? その声って、昔からなのか?」
「昔は、もっと高かったですかね……だから、めちゃくちゃ可愛がられました、あとこの声を聞いて「萌えボイスが聞こえる!誰だ!?」とか、言われた事もありますし」
「そっか……大変なんだな……それにしても、聖って、そういう話し方なのか?」
「はい、昔から、ず~っと敬語で話してますね、何か問題ですか?」
「いや、聖がそう言うなら、俺は別に、気にしないよ」
「ありがとうございます」
そう話していると
「あ、俺、こっちだから、聖は?」
「僕は、こっちです」
「そっか、じゃあ、ここでお別れだな、そうだ、聖、多分……近いうちに部活発表会があると思うから、よければだけど、一緒の部活に入ろうぜ?」
そう言ってきたので、僕はと言うと
「そうですね……ちょっと、考えて見ます」
そう言う事にした。
「そっか、じゃあ、また明日な?」
「さようなら」
そう言って、亮太と別れて僕は、家に戻る事にした。
家に戻りながら、考える。部活か……とりあえずどんな部活があるのか、解らないけど、ちょっと楽しみかも……そう思っていたのだった。