~第十六話~
休みも終わり、平日の日になって、僕は、目覚まし時計のセットした時刻に起きた。
起きて、すぐに移動して、洗面所に向かい、顔を洗う。顔を洗い終わり、鏡を見てみると、美少女がいた。いや、美少女と言っても、僕なのだが……髪が伸びたので、セミロングの美少女に見える。
おまけに声を出してみる。
「あ~あ……この顔で、この声はさすがにまずいよね……」
声も変わっていなく、美少女ボイス? とか言われる風な感じの声で、普通に街中を歩いて、声を出すと「美少女が萌えボイスで喋ってる」と言う状態になってしまう……かと言って、髪を切ろうとすると、朱莉母さんが反対するし……僕は、そう思ったけど、その考えをやめて、朝食を取る事にして、リビングに、向かう事にした。リビングに辿り着くと、僕とそっくりの人物、朱莉母さんが、朝食を食卓に並べていた。
「あ、聖ちゃん、おはよう」
「おはよう、母さん」
「朝食出来たから、一緒に食べましょうね?」
「うん」
そう言って僕は、椅子に座り、朝食を取る。
今日の朝食は、ふつーにご飯に味噌汁、焼き魚だった。
洋食より、和食が好きな方なので、あっと言う間に食べ終わり、母さんから
「はい、今日のお弁当ね?」
とお弁当箱を貰う。
うん……母さんが作ってくれるのは、本当にありがたい事だよね……僕も、何か手伝った方がいいかな……と思ったので
「母さん、たまには僕も、料理手伝おうか?」
と聞いてみると
「いいわよ……料理作るのは、私の趣味見たいなものだからね? 聖ちゃんが、手伝わなくても、大丈夫よ?」
「そう?」
「ええ」
「いつもありがとうね? 母さん」
「いえいえ、あ、遅刻するんじゃない?」
「あ、そうだった」
僕は、そう言って、自分の部屋に戻り、男子の制服を着る。
男子の制服を着ないと、本当に女の子に間違われる事もあったので、これは、結構助かっていた。
でも、たまに妙な視線を感じる時もあるのだが……そこは深く考えない事にして、男子の制服に着替え終わる。鞄の中に必要な物を入れて、「いってきます」と言って、僕は、外に出る事にした。
外の天気は、快晴で、物凄く暑い……夏が近づいたって感じなのかも知れない。
通学路を歩いていると、前に亮太がいたので、小声で、話し掛ける事にした。
「おはようございます、亮太」
「あ、聖、おはよう……話して大丈夫なのか?」
「この音量なら、周りに聞かれないと思うので、小さく話せば大丈夫かと思います」
「そっか……それより、明日だな……」
「明日って?」
「おいおい忘れたのか? 明日は、山野辺高校のプール開きだぞ?」
「あ、そうでした」
確かに、担任の先生にそんな事を聞いた覚えがあった。プールって、男子用の水着に着替えるって事だよね? と言う事は……僕が、男だって事が、はっきりと解ると思う……
「楽しみだな? 聖」
「亮太は、泳ぎは得意なんですか?」
「ああ、結構得意なほうだぞ? 聖は?」
「僕は……そうですね……あまり良い思い出は、ありませんね……」
僕は、過去の事を思い出してみる。
過去と言っても、中学時代、容姿も幼く、声もかなり高かったので、僕が海とかで、水着で泳ごうとすると、監視員が来て「女の子がそんな水着を着ちゃいけません! これを着てください!」とパーカーを渡してきた事が何度もあったのでまともに泳いだ経験が、無かった気がする。あと、よく男から声をかけらてたりもしたなあ……まあ、全部断ったけどね……そう思っていると、亮太が
「どうした? 考え事か?」
と聞いてきたので
「何でもないです、あ、遅刻すると不味いので、急ぎましょう?」
「あ、ああ、そうだな」
そう言って、僕と亮太は、学校へと急ぐ事にした。
僕と亮太は、通っている高校、山野辺高校にたどり着いた。クラスの中に入ると、もう既に、他のクラスメイトは、席に着いていて、僕も、自分の席に着く事にした。
席に着いて、鞄の中身を、机の中に入れていると、キーンコーンとチャイムが鳴って、担任の碓井先生が、入って来てこう言って来た。
「今週の金曜日に、終業式がある、来週は夏休みだ、夏休みだからって、羽目を外して、遊び惚けないように、それと明日はプール実習となっているからな? 水着を忘れずに持って来るように、では出席を取ったら、授業を始めるぞ」
そう言って、授業が始まった。授業内容は、結構簡単というか……黒板の文字を、ノートに写す作業で、時間がどんどん潰されて行き、あっという間にお昼になった。
結構書いたからか、手の感覚がちょっと痺れたりもしたけど、別に問題はないかと思う……
今日も、放送があるので、お弁当箱を持って、放送室に向かおうとすると
「あ、天野……」
そう僕に、声をかけて来る者がいた。声をかけて来たのは、同じクラスの栗谷衛君で、一体、僕に何の用なんだろう? と思ったので、教室内なので、僕は、ノートに
「はい? 何ですか?」
と書く、すると栗谷君は
「休みの日って、天野……遊園地に行ったか?」
そう聞いてきた。休みの日……確かに僕は、父さんと一緒に、山野辺パークに行った。その時に栗谷君と出会って、僕は、咄嗟に母さんのフリをしたけど……もしかして、それが僕だって事、気がついたのかな……?と思い、ノートに
「なんで、そんな事を聞くのですか?」
と書いてみる。すると、栗谷君が
「いや……休みの日に、山野辺パークに遊びに行ったら、天野そっくりの人物を見かけてさ……で、話しかけたら、天野の母親って名乗って……でも、俺……天野にしか見えなくてさ……でも、再び会ったら、夫婦で来たって言ってたし……天野……本当に、母親と似てるのか?」
そう聞いてきた。僕は、ノートに
「はい、似てますよ? 僕と母は、双子みたいにそっくりなんです、だから父も母と結構間違えたりするんですよ、母と出会ったんですか?」
「あ、ああ……」
「じゃあ、間違いはないです、父と母は遊園地に行くって言ってましたし」
本当は僕と父だけど、ここは嘘で、ごまかす事にした。
「そ、そっか……なんか、邪魔したな……」
「いえ、じゃあ僕は行くので、それでは」
そうノートに書いて、お弁当箱を持って、放送室に向かう事にした。うん……何とか、栗谷君にはばれてないようで、安心した。けど……なんで、顔が赤かったんだろ? と思ったけど、深く考えない事にして、放送室に向かったのだった。放送室の中に入ると、既に他の部員は全員集まっていて、僕が最後だった。
「聖君、今日のラジオ放送は、聖君と洋子でお願いするわね?」
「僕と洋子先輩ですか?」
「ええ、あと、私も出演するわ」
「部長もですか?」
「ええ、一回ぐらい出演しないとね? じゃあ、ブースに行きましょう」
そう部長の中田彩さんが言ったので、僕と洋子先輩は、頷いて、ブースの方に向かった。
ブースの中に入り、スピーカーから太一先輩の声が、聞こえてくる。
「皆、準備はいいか? そろそろ始めるぞ」
「こっちは、OK~彩と聖君は?」
「僕もOkです」
「私も、Okよ?」
「よし、太一、準備OKだよ」
そう、洋子先輩はジェスチャーする。するとスピーカーから
「りょ~かい、じゃあ、始めるぜ?」
そう言って一旦切れた後、亮太の声で
「これから、お昼の放送を始めます」
と聞こえて来た。
そして、今日のラジオ放送が、始まったのだった。
「こんにちは、ヤマノベラジオの時間です、今日は、貴方の心の癒しのお姉さん、ブルーです、そして、相方はというと」
「あ、ホワイトです」
「そして、特別にもう一人います、紹介よろしくね?」
「はい、皆さん始めまして~、私が放送戦隊ヤマノレンジャーの五人目、イエローです、よろしくお願いします」
「今日は、この三人で、お送りいたします、声だけ聞くと、男性陣が嬉しい展開なのかもね?」
「え?」
「ああ~確かにそうかもって感じかな~はっきり言って、三人娘のギャルトーク?って感じになるかもって、感じだし?」
「三人娘って、僕は……」
「はい、ホワイトちゃん、それ以上言うの禁止!じゃあ、早速、このコーナーに行きたいと思います、イエロー、今回の流す曲は?」
「今回は、色々な候補があがったけど、あみだくじで決めて、クラシックを流します」
「あみだで決めたんだ……でもいいの?」
「いいんです、では、どうぞ~」
そう言って、音楽が流れる。
その間はマイクを切っているので、話しても大丈夫だった。音楽が流れている間に、太一先輩がブースにやって来て、ノートPCを持ってきた。その内容を見ている、ブルーこと西岡洋子先輩と、イエローこと部長の中田彩さんが、二人で、何か話している。
僕は、邪魔しちゃ悪いかな……と思い、黙ってる事にした。
そして、音楽が終わり、再びマイクで、話し出す。
「いや~クラシックもたまにはいいものですね」
「ブルーは、クラシックはあまり?」
「まあね~いつもは、もっとアップテンポの曲を聴いてるのよ? ホワイトちゃんは? どんな曲を聴いてる?」
「僕ですか? え~っと……たまにアイドル曲とかですかね……気に入ると、とことん聴いてる気がします」
「ほうほう、イエローは?」
「もっぱら、ゲーソンとアニソンね? 昔のは、これっていまいち~のが結構あったけど、今は結構満足よ」
「そうなんだ、さてと、イエローが出てきた反響を覗いてみるとしますかね? え~っと……「イエローも捨てがたい」「一体、どんな人物なんだろ?」「でも、ホワイトちゃんも生で会ってみたい」とか書かれてありますね~イエロー? どう思う?」
「う~ん、応援してくれてるのは嬉しいって感じかな? まあ、私は滅多に出ない、いわば隠れキャラ! を目指そうと思ってるので、出現率は低いわよ~」
「そんな、ゲームとかで出てくる、レアモンスターじゃないんだから、結構出てもいいと思いますけど……?」
「え~めんどい?」
「なんで投げやりなんです!?」
「おお、ホワイトちゃんの突っ込み、いいわあ~美味しい……」
「うんうん、私もそう思うわね~」
「え……ちょ、二人とも、そのニヤニヤ笑顔、やめてくれません……?」
「いやあ……ねえ? イエロー?」
「ええ……ブルー、これは本当に美味しいし?」
「うう……なんか、虐められてるように見えるのは、気のせいなのかな……」
「世の男性諸君としては、ホワイトちゃんのエロボイスとかも聞きたいのじゃあ、ないのかね~?」
「そんな事聞かないでくださいよ……って、うわ!同意のコメントいっぱい!? 何故!?」
「皆、思ってる事は同じって事みたいね……って、ブルー、もうこんな時間よ」
「あ、本当だ、じゃあ、今回はここまで、「ホワイトちゃんに言って欲しい事」は、また次回のお楽しみとしときましょう~、お相手は、クールな知的お姉さん、ブルーと」
「信号だと注意な色の、イエローです」
「えっと……ホワイトです」
「以上で、お送りしました~この番組は、放送戦隊ヤマノレンジャーの提供でお送りしたわよ?」
そう言って、マイクのスイッチを切る。
そして、ルームに戻り、洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて
「これで、お昼の放送を終わりにします」
と言って、マイクのスイッチを切った。
「これでOk」
「よし、じゃあ次は放課後ね? では、解散」
そう部長が言ったので、僕と亮太は、自分のクラスに戻る事にしたのでした。
午後の授業は、そんなに難しい問題が出る事はなく、黒板の文字をノートに写す作業をするだけででいいと、先生が言っていたので、僕もノートに黒板の文字を写していく。写していると、消しゴムを落としてしまったので、それを拾おうとして、机からしゃがむと、前の席なのに、こっちをちらちらと見ている、栗谷君と目が合ってしまった。
僕は、何でこっち見てるんだろう? と思ったけど、授業中なので、消しゴムをさっさと拾って、再びノートに文字を書いていく
そして授業が終わり、担任の碓井先生が
「明日は水泳の特別授業となっているから、水着を持参するように、連絡事項はこれぐらいか……では、解散」
そう言って、先生は教室内から出て行く。
水着か……家にあったっけ……と思ってみたけど、僕は転校して来たので、市販の売られている水着を着る羽目になるのかな……と思った。まあ、男子用の水着なので、普通の海パンでいいと思うけど……明日考えればいいか……と思い、帰る支度をして、同じクラスの亮太を誘って、一緒に放送室へと向かう事にした。
放送室に入ると、もう既に先輩達がいて
「あ、来たわね……二人とも、みて? 反響が凄い事になってるわ」
そう言ったのは、部長の中田彩さんで、彩さんは、僕達にノートPCの画面を見せてくる。中を見てみると
「新キャライエロー登場か、これで五人全員揃ったって事か?」「ガールズトーク、なんか妄想が広がる……」「ブルー姉様もいいけど、イエローもいいかも……」「俺は、断然、ホワイトちゃん一筋だぜ」「俺も」とか、書き込まれてあった。
「ね? 凄い書き込みの数よ?」
「確かに……」
「俺と太一先輩の事が書いてあるのって、少ない……」
「ああ……俺もそう思った、俺なんていらないとか書かれてるしな……」
「まあいいじゃない、それより明日のラジオだけど、明日は太一と亮太君でお願いするわ」
「了解」
「じゃあ、打ち合わせするか? 亮太」
「はい」
そう言って、太一先輩と亮太は、ブースの方へと移動して行った。ルームに残った僕は、ちょっと気になる事があったので、彩部長に聞いてみる事にした。
「彩部長、夏休みって、放送部ってあるんですか?」
「そうね……夏休み中は、ラジオをやっても意味ないしね? あ、でも強化合宿とかもやって見たいと思ってるのよ? 洋子は、どう思う?」
「強化合宿か~それいいかも? でも、何所でやるかよね? 強化合宿」
「うん、そこが問題なのよね……まあ、まだ夏休みまで時間があるし、考えておくわ」
そう話していると、打ち合わせが終わったのか、二人が、ルームに戻ってきた。
「あ、もうこんな時間ね? 洋子、お願い」
「は~い」
そう言った洋子先輩は、マイクのスイッチを入れて、こう話す。
「下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい、繰り返します、下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい」
そう言ってから、マイクのスイッチを切る。
「これでOk」
「よし、じゃあ今日の活動はこれで解散、じゃあ、また明日よ」
「お疲れ様でした!」
放送部の活動が終わったので、僕は亮太と一緒に、帰る事にした。
帰り道、僕は亮太に小声で聞いてみる。
「亮太、明日の水泳の授業の事なんですけど、水着って市販されてるのでいいんですよね?」
「そっか、聖は転校してきたからな? 俺は、山野辺中で使ってたのがあるから、それをそのまま使うつもりでいるけど、聖の場合、外部組だから、市販のでOkじゃないか? まあ、あんまり派手なのは駄目かと思うけど……それにしても……」
「何ですか?」
「いや……聖って、女子用のスクール水着を着ても、全く、違和感なさそうなんだけどな……」
「……中学の時も言われました……そんな事……僕がスクール水着とか、変だと思いますけど?」
「い、いや……似合うんじゃないか? 何気に……」
「そうですかね?」
「まあいいや、じゃあ、俺こっちだから、それじゃあな」
「はい、さようなら」
そう言って、亮太と別れて、僕は自分の家へと戻る。
戻りながら、明日の水泳の特別授業……周りの視線ってどう見えるんだろう……と、思っていた。