~第十二話~
次の日になって、僕は、いつもと同じ時間に起床した。
そして、顔を洗い、学校があるので、制服に着替える。
制服に着替え終わり、リビングに行くと朱莉母さんと、圭吾父さんが、既に席について、朝食を取っていた。
「お、聖、起きたか」
「聖ちゃん、朝食出来てるから、食べなさいね?」
「うん、分かった」
そう言って、僕も席に着く。
今日の朝食は、魚介類の入った、シーフードカレーだった。
シーフードカレーは、なかなか美味しく、残す事無く完食、学校があるので、自分の部屋に戻り、鞄を持って、出かけようとすると
「聖、ちょっといいか?」
「何……? お父さん」
「聖さえ、よかったら、今週の休み、一緒に出かけないか? 仕事の休みが、取れたしな……たまにはいいだろう?」
そう言ってきたので、僕は考える。
そう言えば、父さんと一緒に出かけたのっていつだっけ……と思い、一緒に行っていない事が発覚、まあ、たまにはいいかな……と思ったので
「うん、いいよ」
「よし、決まりだな。じゃあ、気をつけて行くんだぞ」
「りょ~かい、じゃあ、行って来ます」
そう言って、朱莉母さんからお弁当を受け取った後、外へと出る事にしたのであった。
夏が近いからか、外は結構暑く、汗がにじみ出てきたので、ハンカチで拭きながら、通学路を歩いていると
「やあ、聖君、おはよう」
そう言ってきたのは、同じクラスの、山本理恵さんだった。
うん、なんか久しぶりに声を聞いた感じがする。
まあ、同じクラスメイトで、僕は、女子とあまり会話、いやクラスでは、亮太としか最近は、会話してなかった気がするかも……と、思っていた。
僕は、周りに聞かれると、不味いので、小声で話す。
「理恵、おはようございます」
「ああ……おはよう、そう言えば……クラスでも、あまり聖は、話さないよね? まあ、理由があるのは解るけどね」
「そうですよ……僕の声は、クラスに聞かれたら……と思うと……」
「まあ、聖の声は有名だしね……ちなみにね? 女子の間でも「ホワイトの声って誰だろ?」「ホワイトの声の人に会ってみたいな?」とか言ってたよ? 聖、人気だね?」
「そうですか……え~っと……とりあえずありがとうございます……理恵は、僕の声の事は、言ってませんよね?」
「もちろん、秘密は守っているからね……誰にも言ってないよ、そこは信用してくれ」
「解りました」
「ところで……亮太に聞いたのだが、人形劇をやる事になったんだってね?」
「あ、はい、そうですよ」
「ほう……それは、是非とも聞いてみたい物なんだが、どこで公演するつもりなのかな?」
「えっと……幼稚園で、公演するみたいですよ? 部長が、そう言ってましたし」
「そうか……じゃあボクは、聞けないな……そうだ、録音機材を渡すから、録音とかはだめかな?」
「う~ん……それは、駄目なんじゃないですかね? よく解りませんけど……」
「そうか……」
なんか、理恵さんが、かなり落ち込んでいる風に見えた。
そんなに聞きたかったのかな? 人形劇……そう思っていると、僕達の通っている、山之辺高校にたどり着いた。昇降口で、上履きに履き替えて、一年一組に行く。
クラスの中に入って、僕は、自分の席に座り、理恵さんも、自分の席に着いた。席についてから、鞄の中身を机の中に入れていると
キーンコーンとチャイムが鳴って、担任の碓井先生が、入ってきて、こう言って来た。
「皆、おはよう、では連絡事項だが……来週から、夏休みに入る、夏休みの間、浮かれすぎぬようにな……では、出席を取った後、授業を始めるとする」
そう言って、授業が始まった。
授業中、僕は、夏休みか……どうしようかな……と、考えていたのだった。
授業内容は、そんなに難しくはなく、簡単に解く事が出来た。先生が、これやって下さいと持って来たプリントをやる事になったので、それをやってみると、プリントの内容は、前にやった所の復習で、習ったばっかりだったのでスムーズに解く事が出来て、終わって、プリントを集めていく。うん……結構、いい点取れてるんじゃないかなあ……と、思ってしまった。
時間が過ぎて行き、お昼の時間になった。
僕は、クラスメイトの亮太と一緒にお弁当を持って、放送室に向かう事にした。
放送室の中に入ると、先輩達が、食事中なのか、昼食を取っていた。
「あ、二人とも来たわね? 今、食事中だけど、二人は、もう食べてきたのかな?」
「いえ、まだです」
「俺も、そうです」
「じゃあ、一緒に食べましょうか」
「あ、いいんですか?」
「Okよ? そうね……せっかくだから、分け合いっこしながら、食事しましょう」
そう部長の、中田彩さんが、言うので、先輩達と一緒に食べる事にした。
彩部長のお弁当の中身は、お結びに玉子焼きにプチトマトとか、入ってて、結構おいしそうだった。
僕は、気になったので、先輩に聞いてみる。
「先輩、これって、自分で作ったんですか?」
「ええ、朝、起きて自分で作ってるのよ、洋子もそうよね?」
「うん、私もそうよ?」
そう言ったのは、同じ部活の先輩で、西岡洋子先輩だった。
「まあ、私の場合、二人分作らなきゃいけないしね? この馬鹿の分もね」
「馬鹿とか言うなよ……」
「あら、別にいいじゃない」
「よくない!」
そう言っているのは、双子の太一先輩だった。
洋子先輩のお弁当と比べると、中身が同じだった。
そっか……洋子先輩が、二人分作ってるから、中身も同じになるんだなあ……そう思っていると
「ところで……聖君のは、誰が作っているのかな?」
そう聞いてきたので
「僕のは、母に作って貰ってるんです」
そう答えると
「え、あの、母親が……? そうなんだ……」
何故か亮太が、びっくりしていた。うん、何でだろ?
「あら、亮太君は、聖君の母親、見た事あるの?」
「はい、一回、聖の家に行った時に見たんですけど……思いっきり、聖そっくりでした、まるで双子みたいに、どっちかと言うと聖がお姉さんで、聖の母親が妹な感じがしましたね」
「ちょ、亮太、何言ってるの!?」
「ほほう……それは、是非、見てみたいねえ……」
「ああ……一体、どんなんだ? まあ……聖が、女の子の服を着ても……うん……」
「ちょっと、先輩……なんか変な、想像しませんでしたか?」
「いや、大丈夫、バッチシ似合ってるから、というか……全く違和感がないって、すげ~な……」
「太一先輩……それ、本当に笑えないです……だって……母と一緒に買い物に行った時「双子の姉妹? 遊びに行こう~」とか、ナンパされましたし……」
「そ、そうか……」
「す、凄いね……聖君」
「ちょっと見てみたいかも……っは、私は何を!」
「彩……なんか、考えた?」
「い、いや! あ、もうそろそろラジオの準備してくれるかな? 二人とも」
「あ、了解っす」
「解りました」
そう言って、僕と亮太は、昼食を食べ終わり、ブースの方に、移動した。
移動して、マイクの前に、座り、本番を待つ。
スピーカーから、洋子先輩の声が、聞こえてきた。
「これから、お昼の放送を始めます」
そう言ったので、僕と亮太は、ラジオの準備をする。
そして、僕と、亮太の、今日のラジオが、始まるのであった。
「皆さん、こんにちは~、お昼のヤマノベラジオの時間だよ~、今日の司会は、放送戦隊ヤマノレンジャーの常識人こと、ブラックと」
「えっと……ブラックが常識人? なのかは疑問なんだけど、放送戦隊ヤマノレンジャーのホワイトです」
「久しぶりの登場って感じがするのかな? ホワイトちゃんは」
「えっと……そんなに久しぶりではないと思うんだけど……」
「まあ、とりあえず、最初のコーナー行きたいと思います、まず、音楽を流しますね」
「うわ、無視ですか、まあ、最初のコーナーですね、えっと……今回流す曲は、色々なジャンルを流したので、今回は、クラシックを流したいと思います、では、どうぞ~」
そう言って、音楽が流れる。
その間は、マイクのスイッチを切っているので、普通に話して大丈夫だった。僕は、あの事を、亮太に言ってみた。
「そう言えば、亮太、とっても撲殺ちゃん、見ましたよ」
「お、そうか……で、どうだった?」
「はい、チーコってキャラ、確かに僕の声に似てるって、母も言ってました」
「そうだろ? 俺も最初聞いた時、これ……聖がやってんじゃないか?って思ったほどだしさ?」
「そんな、僕がやる筈じゃないですよ」
「え~? でも、聖君、隠れてやってても不思議じゃないよ?」
そう話に割り込んできたのは、先輩の西岡洋子先輩だった。
洋子先輩は、ノートパソコンを持ってきて、その画面に、山野辺高校HPが、映し出されている
「いや、やってませんって、あれは、僕じゃあないです」
「そう? 確かに、声優名を違っていたしね……あ、そろそろ音楽終わるわよ」
そう洋子先輩が、言ったので、音楽が終わって、マイクで、話し出す。
「うん、クラシックもなかなかいい曲だったなあ、ホワイトちゃんは、どう思った?」
「そうですね、なかなかいい曲だなあ……とは、思いました」
「よし、盛り上がった所で、「ホワイトちゃんに言って欲しい事」をやりましょう」
「え? 盛り上がってましたっけ?」
「おいおい、そんな事言うなよ~え~と何々……ホワイトラブさんから「ホワイトちゃんに、恥ずかしがっている告白の台詞」だって、では、ホワイトちゃん、どうぞ~」
「ええ、なんか恥ずかしいかも……えっと~「べ、別にあんたの事なんか……いや、待って!え、えっと……大好き……」こんな感じでいいかな……?」
「うっほ~~~!萌えええ~~~!」
「ちょ!ブラック!? なんか凄い興奮してないですか!?」
「今の言葉いいな~! 是非、女の子に言ってほしいな!」
「なんか、凄い興奮して言ってるけど……顔、凄い事になってるよ? えっと、視聴者に見せたら、引くんじゃないかな……その顔……」
「っふっふっふ……さっきのその言葉でご飯何杯もいけるぜ……」
「そんなわけないでしょ!?」
「っと、もう一つ選びたい所ですが、お時間になりましたので、ここで終了です、お相手は、この俺、ブラックと」
「うわ、いきなり真面目顔になったよ……ある意味凄いね……それ……えっと、ホワイトです」
「以上でお送り致しました、この番組は、放送戦隊ヤマノレンジャーの提供でお送りしました」
そう言って、マイクのスイッチを切って、三人でルームの方に行く。
ルームに辿り着くと、洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて
「これで、お昼の放送を終わりにします」
と言って、マイクのスイッチを切った。
「これで、OK」
「じゃあ、次に集まるのは、放課後ね。放課後は、人形劇の練習をやるわよ、では、解散!」
部長の中田彩さんが、そう言ったので、僕と亮太は、自分のクラスに戻る事にした。
クラスに戻ると、クラスの男子生徒が
「なあ、さっきのホワイトの台詞、録音したか?」
「ああ、した、これで……ぐっふっふ!」
「お前、何に使う気だ?」
「お前だって、怪しげな笑いをしてただろ?」
そんな会話をしていた。
一体何に使うんだ……と、滅茶苦茶気になったが、声をかえるのは、不味いので、声がかけられなかった。うん……早まったかな……? と思ったけど、深く考えないようにして自分の席につく。
そして、チャイムが鳴ったので授業を真面目に、受ける事にしたのであった。
午後の授業は、難しい事をやるみたく、黒板の文字を見ても、ちょっと判らなかった。
それでも、ノートに黒板に書かれている文字を写していく。
うん……なんか地味な作業だなあ……と思ってしまい、ふと、他の人を見てみると、思いっきり寝ている奴や、何かを熱心に書き込んでいる者がいた。
明らかに黒板に書かれている文字とは、違っていた。
まあ、座っている席から、ちょっとだけ見えたけど、あれは、なんかのイラスト? だった筈……そのイラストを、男子生徒がにやにやと笑いながら、書いている。
うん……この姿を女子が見たら、引くんじゃないかな……と思うんだけど……まあ、そんな事を考えるのはやめて、普通に授業を受ける事にした。
そして時間が過ぎていき、授業が終わる。
授業が終わったので、僕は、亮太にノートで話しかけた。
「亮太、部活に行きましょう」
それを見た、亮太は
「あ、ちょっと行く所が出来たから、先に行っててくれ」
と言って来たので、僕は、ノートに
「解りました、先に行ってますね」
と書いて、先に放送室に向かう事にした。
うん、用事って何だろう? と気にはなったけど、聞いちゃまずいのかな……と思ったので、あえて聞かない事にした。
放送室の部室に辿り着いて、中に入ると、もう既に先輩達が、集まっていた。
うん、相変らず……この人達、早いなあ……
「あ、聖君、来たわね? あれ……亮太君は?」
そう聞かれたので
「亮太は、後で来ると言ってました」
そう言う事にした。
それを聞いた、先輩は
「そう、じゃあ、先に人形劇の練習、しときましょうか、洋子、聖君、準備はいい?」
そう、部長の中田彩さんが、言ってくる。
「私は、OKよ? 聖君は?」
「あ、僕もOkです」
「じゃあ、決まりね。二人とも、ブースの方で練習お願い、こっちは、太一と色々打ち合わせをやるわ」
「解りました」
そう言ったので僕は、洋子先輩と一緒に、人形を持って、ブースの方に行き
人形劇の練習をする事にしたのであった。
練習していると、ブースに遅れてやってきた亮太が、人形を持って、参加して来る。
そして、三人で練習する事になった。
数十分と、人形を動かして、声を出す。最初は楽しくやっていたけど、少しずつ疲労が見え初めて、ちょっと疲れてしまった。
練習していると、洋子先輩が
「二人とも、今日はここまでにしときましょうか、あんまり声を出すと、本番で出なくなりそうだしね?」
「了解っす」
「解りました」
そう言って、練習が終わった。
練習を終えて、ルームの方に戻り、洋子先輩が、マイクのスイッチを入れて、こう言ってくる。
「下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい、繰り返します、下校の時刻となりました、皆様、速やかに下校して下さい」
そう言ってから、マイクのスイッチを切る。
「これで、Okよ、彩」
「よし、じゃあ、今日の活動はこれで終わりね? で、明日のラジオの当番だけど、太一と亮太君にお願いするわ」
「解った」
「了解しました」
「じゃあ、解散!」
そう言ったので、放送部の今日の活動は終わった。
終わったから、僕は、亮太と一緒に帰る事にした。
帰り道、亮太が、話しかけてくる。
「いよいよ明後日が、本番だけど……大丈夫か? 聖?」
「そういう亮太こそ、大丈夫ですか?」
「俺は、なんとかな……まあ、何とかなるだろって思うしな……それより、お互いがんばろうな? 聖」
「はい、そうですね」
「じゃあ、俺、こっちだから、さようなら」
「さようなら」
そう言って、亮太と別れて、僕は真っ直ぐ帰る事にしたのでした。