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星屑のリング  作者: 星歩人
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第五章 星屑の種 第八話 さあ、出発だ!

 リゾート惑星アクアグラス。地表の80パーセントが海や湖で覆われたの水の惑星。宇宙から見るとグラスに入った済んだ水のように見えることからその名がつけられたという。


 白く広大なビーチがあり、緑の多いけわしい山々あり、ジャングルがあり、草原や砂漠と、野生の原生動草物たちが生息する。霊長類に属するものもいるが、地球からの宇宙移民のような文明を持つような種族は生息していない。


 宇宙開拓民は、この惑星を発見してから200年くらいは、乱獲もし、いくつかの種族を絶命つにまで追い込んだが、自らの愚行を恥じて、リゾート化と自然保護に邁進したのだ。


 一方、アリサの故郷、惑星デュナンは、一面が砂に覆われた砂漠の惑星である。


 おっと、失敬。これは誤解を招く表現だ。


 惑星デュナンも、地表の20パーセントは海や湖があり、砂上船が移動する流砂の下は光も通さぬ深海である。見た目が砂漠っぽいとうだけで、実際は地下水や海が豊富な星なのだ。


 大仕事が終わって、現在、バカンス中のアリサは、先月出会ったアダムのことなど、すっかり忘れ、昼間は海ではしゃぎ、ショッピングを楽しみ、夜は食事に、ギャンブルにと遊びまわっている。


 アダムからのアタックは何度となくあったが、タンクとグレッグが作ったプログラムがうまくかわして、居所を突き当てられないようにしているのだ。


 リゾートエリアの巷では、金払いが豪快で、多額の寄付もいとわない羽振りのいい若い貴公子の話題が連日のようにを注目を集めていた。


 ある時は、近隣で難破し、救難信号をあげれずいた宇宙旅客船を修理し、宇宙港まで操縦して乗客を助け、なおかつ、彼らにホテルをあてがい、家族との連絡を橋渡しする活躍をしたかと思えば、リゾート地区でご主人と逸れた子猫を保護し、無事にご主人の元へ届けるなど、


 大きなことから、小さなことまで、善行を行っていたのだ。


 今時そんな酔狂な奴もいるものだなと、ニュースの写真を見ればアダムだった。


 傍らには若く美しい貴婦人がいた。たぶんこれがイヴなのだろう。アリサにとっては、もういったい誰なんだろうという感じだ。


 そもそも、イヴって、こんな美人顔だったっけ?


 まるで、若い頃の双子オバさんの姉のような容姿である。イヴは、双子オバさんの姉の家に居たから、彼女に似ているのは当然か、彼らは主人に似る特性があるって、彼ら自身が言っていたと、アリサは思い出した。


 と、いうことは、アダムの姿は、双子オバさんの妹になるのか。彼女がもしも男性として生まれた場合をシミュレーションした姿なのかも。


 きっと、これはアダムなりの自分への当てつけのつもりでやっているのだろうなと思うアリサだった。


 が、今は完全に15歳の自分に戻り、セレブお嬢様として休暇を満喫中なので、アダムの動向はサーチシステムで監視はしながらも、ガン無視を決め込んでいた。


「お嬢、それそろ船のクルーが到着する時間ですぜ」


 ホテルのベランダでショットを煽りながら昼食をとっているアリサにタンクが話しかけた。アリサはあわてて腕のウェアリング端末を確認する。


「え、もうそんな時間なの?

 じゃあ、タンク。宇宙港へのお出迎えよろしく。それと、ベイエリアに船を停泊させてあるから、直接そちらへお通しして、ワタシとグレッグも夜には合流するから」


「へい、ガッテン!」


 タンクは気前よく返事をする。


「それと、彼らは契約した使用人ではあるけど、うちのパパの船の季節労働者的なクルーでもあるの。わたしにとって一番信用のおける人たちなんだから、くれぐれも粗相の無いようお願いね」


「俺も世話になっている人達ですから、そこはぬかりありません」


「そういえば、この度はホセさんが乗船されるのですね」


 グレッグが割り込む。


「ここには砂虫なんて巨大な海洋生物はいませんけど、10メートル級のヤツはいるようですぜ。銛で何か仕留めさせるおつもりですか?」


「彼は、基本お客様よ。茶飲み友達というか、お爺ちゃんのつもりで接してあげてね。まあ、食材確保の為の釣りくらいは、レジャー半分で付き合ってもらうついもりではいるけど」


「オカリナの演奏も聞けるといいですね」


「ああ、あれは最高よね。

 ホセさんは、奥様とお孫さんがお付きで乗船していただく予定でね。お孫さんは古楽器の演奏家なんですって、それとね・・・・」


 タンクは、これは付き合うと長くなるなと、アリサの話は半分聞き流して自室に戻った。


 部屋の鏡を見て自らのみすぼらしさに引いたタンクは、美顔マシンに頭を突っ込み、産毛や髭を剃り、髪を整えた。それからバブルシャワーを浴び体を隅々まで洗って、スーツに着替えた。


 タンクは身なりを整えるとほんとに見違える程に美形男子に変わってしまう。普段が乱れすぎているからだ。

 一旦、戦闘など行った後なんかは、なぜにそこまでにと言いたくなるほどに、汚物と見まごう姿にまで成り果ててしまうのだ。


「そんじゃ、お嬢。出かけて来ます」


 タンクは軽く頭を下げて一礼し、鼻歌まじりに部屋を出て行った。


 アリサは、うきうき顔に徐々に変わっていく。何がそんなに嬉しいのかと言えば、ついにアダムを困惑させられるお膳立てが整ったからだった。


 予想ではもう一か月かかり、クルージングの最中にかかる予定だった。コピーを造ってもうろくしたのか、グレッグの能力向上の方が優っているのか、アダムの資産元に進行型の改ざんプログラムを仕込めたのだ。


 既にプログラムは、物理的手段で仕込んであるため、仕込み場所が分かる程度で、アシは付かない。仕込ませた者もそれがそういう行為にいたることは、全然、わからないようにしてある。


 何せ、公共回線に接続できる端末装置に仕込み、それらが複合的に結合することで、プログラムが完成されるように造ったのだから。


「じゃあ、出発前にちょっと悪戯しておこうかしらねえ」


 ポチっとな。


 アリサは、ルームサービスのコールボタンを押した。これがトリガーとなる信号で、プログラムが完成したタイミングで送られると発動する仕組みだった。


「資産凍結、カード凍結、身分不正・・・・

 さてさて、どうするのかなアダムさん。お外は危険がいっぱいよ。路頭に迷うなんか、日常茶飯事よ」


「お嬢さまもお人が悪いですね」


「喜んでやってたアンタがよく言うわね」


「彼がどうへこむのか、あるいはへこまずにどう立て直すのか興味がございましてね」


「これで、あいつが立て直して来たら、あいつの話にのってあげてもいいかな。てね」


 しばらくして、ルームサービスがアリサの部屋に訪れた。アリサとグレッグは、タンクの部屋も含めて、荷物まとめをサービスデクドロイドに手伝ってもらい、カーゴにまとめた。


 そして、ホテルのチェックアウトを行い、送迎用のリムジンに乗り込んだ。


 リムジンの客席は、ちょっとした小部屋になっていて、酒や軽食が楽しめる作りになっている。運転はAIが行うので、この車には運転席というものが存在しない。全部が客室なのだ。


 アリサは客室内の端末で、軽いアルコールカクテルを2つ注文する。


 カクテルを手にして、アリサは叫ぶ。


「さあ、バカンスに出発よ!」

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