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星屑のリング  作者: 星歩人
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第五章 星屑の種 第二話 アリサの事情

 開いた穴から宇宙へ吸い出される乗組員たち。ブリッジ下で通信、レーダー索敵のチーフであるザレクは、船外に出た乗組員がどういった連中なのかをつぶさに調べた。

 そして、船長であるアリサに結果を告げた。


「突撃歩兵三、工作歩兵六。それと船内に重歩兵三、うち二人は戦闘不能状態だ」


 重量の重い機械の装甲服を着た重歩兵は、船内にどうにか踏みとどまったが、壁をぶち抜いた衝撃で二体の機械は故障したのだろう。尻もちをついた状態で身動きもできていない。


 身軽な軽歩兵がそろって船外に出されたのは好都合だと思えたザレクは、上機嫌で伝えた。


「ほんじゃ、先にあいつを黙らせるかな」


 重火器担当のごつい、いかにもな宇宙戦士な風貌のタンクは、四次元照準器を合わせて、船首から無数の球体を発射した。


 小さな球体船内の重歩兵の体の付着した。強力な電磁波を発した。数秒もしないうちに、無事だった一体の重歩兵もヘルメット内が非常警告状態となって、停止した。


 唯一、動けた重歩兵の一人は臨戦態勢を取ろうと身構えていたが、何が起きたのか理解できぬまま、体の自由を奪われてしまい、放心状態に陥っている。


 それにしても、こちらの情報も先方には漏れていたのか、減速に入って彼らは武装して船内に待機していたのだ。

 だが、流石にレーダーに探知する間もなく、敵が船体をこじ開けて突っ込んで来るとは考えも及ばなかったのだろう。


 あまりにも唐突に、彼らは宇宙へ放り出されたおかげで、持っていた武器を宇宙の彼方へ放りだしてしまった。


 そして、船外に放りだされた兵たちは、かろうじてベルトにつけたアンカー銃を船体に向けて放ち、ワイヤーで自分の体とを船体を固定し、背中の推進パックで逆噴射をして位置を安定させようとしている。


 彼らが着ている宇宙服には武器も搭載されているが、この場でカリュード号に撃っても歯が立たないことは、咄嗟に起きたこの状況からなら馬鹿でもなければ理解できることだった。

 

「お頭、船外に出た敵は、どうしやす?」


「殺しちゃだめよ。タンク!

 あいつ等もひとり頭、あたしら一か月分の食事代の賞金はかかっているんだから。賞金の無駄遣いは、罰が当たるわよ!

 ブロブで固めておいて、後で拾うから」


「あいよ、お頭」


 タンクは、照準器を座席の下から引き上げると、船体にフックをかけてもがいている兵隊の中心に照準を合わせると、


 「俺たちの飯代、尋常にしやがれよ!」と言い放ちながら照準器両側のトリガーを引いた。


 しばらくすると、薄白い半透明のゴムボールのような塊、ブロブボールが宇宙をゆっくりと漂う様が、コクピットの窓越しに見えた。


 ブロブボールの中には、慌てもがくあられもない姿の兵士たちが、そのままの形で固められていた。ブロブボールの内部は、固められた人間が死なないよう10度程度の温度があり、気圧も宇宙船と変わりない程度で保たれている。

 その上、呼吸に必要な最低限の酸素も供給され、発信機も取り付けられている。瞬時に固められた彼らは、ほぼ仮死状態に近いので、この状態で半年は漂流出来るのだ。


 こういう対策を打つのも理由があ。腕の立つ賞金稼ぎの袂には、必ずおこぼれに預かるコバンザメのような連中が、後をつけているのだ。


 この小悪党たちは、捕獲対象の大物を横取りする勇気などは無いが、固められたブロブボールをちょろまかすような事は平然とやってのけるのだ。

 けれどもカリュード号乗組員には、その辺への抜かりは無い!


 なぜなら、ブロブボールには、開錠プロテクトがかけてあり、強引に開けようとするならば、ボールは更に皮膜でもうひと回り覆い尽くしてしまうからだ。


 アリサは立ち上がってパイロット服を脱いだ。服の下は素っ気ない軍隊下着姿であるが、それなりに女性的に発育した身体である。

 出るところは出て、引っ込むところは・・・という少々下世話な描写表現になってしまうが、彼女の名誉を汚さぬよう、ここはスポーツアスリートのような引き締まった身体をしていると表現しておくことにする。


 彼女が操縦席の足元のスイッチを押すと円筒形の殻が座席下の床の両サイドから現れ、立っている彼女全体を覆った。続けて、圧搾空気でプレスするような音が鳴り、円筒形の殻が開くと赤い宇宙服を身にまとったアリサが出てきた。


 ヘルメットも装着されているが、形状記憶合金で、必要に応じて着脱のオン、オフが可能なのだ。


 賞金首の宇宙船に突入する乗組員も宇宙服に着替えて、突入口のある下階層の部屋に整列し、整列した。ざっと、切り込む乗組員はアリサとグレッグ、タンクを入れて総勢10名といったところだ。


 まずは、突入口の両側に乗組員が並ぶ、中央先頭にアリサが立ち、その後ろにグレッグが立ち、脇をタンクが固める。そして、アリサは叫ぶ。


「野郎ども、悪党どもをふんじばれ!」


「がってんだ、お頭!」


 蛇腹状の渦巻きハッチが開くと同時に乗組員は無言で船内への突撃を開始する。全員が出た後を、タンク、アリサ、グレッグが出ていく。


 アリサの歩兵たちの動きは、故郷で砂虫漁をする船員たちとは異なり、まるでプロの兵士のような動きを見せる。


 なぜ、年端もいかない彼女がこんなプロの男たちをたばねて、賞金稼ぎという危険な商売をしているのか、はじめて彼女に出会う者はみな、こぞってその質問をする。

 当のアリサにとっては、この時が一番つまらなく、退屈であるのだ。


 そんな糞つまらない質問をするような奴らには、お仕置きが必要だと彼女は考えだす。そして、その理由を知りたければ、わたしと一緒にこの船に来ない?と、あどけない表情で、男の耳元でささやくのだ。


 アリサはまだ子供っぽいあどけなさと、仕事を持つ大人の女性のような凛とした恰好良さも備えており、それなりに妖艶さを感じさせる雰囲気もある。


 大概の男たちは勘違いをして、へらへらと船に乗り込み、搭乗口のハッチが閉じたその瞬間から、ブラック企業顔負けの理不尽労働を強いられて、毎日のように死にかける。


 本当に死んでもらっては、遺体の処理手続きもやっかになるので、死にそうな奴は、立ち寄った港で、連邦警察に不法乗船者として引き渡して下している。そうすれば身の安全は確保されるからだ。間違っても、原生林の星や砂漠の真ん中に捨てて来たりはしない。


 どうにか地獄の重労働を乗り切って、ひと月ほど彼女たちと寝食をともにして、生き延びているならば、誰一人として、彼女の在り方を疑わないのだ。

 そして、そいつは、その日からカリュード号の新しい乗組員へと生まれ変わるのだ。


 彼女がそうなったのは、親が親で、その仲間も輪かけてむちゃくちゃで、そんな中でたくましく育った結果ということなのだ。


 彼女自身は、そういった特殊すぎる自分の境遇を不幸とは全く思っていない。平凡な人とは違う人生が送れることがたまらなく幸せに思えているのだ。

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