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星屑のリング  作者: 星歩人
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第五章 星屑の種 第一話 プロローグ

一年ぶりに星屑のリングの新章を開始しました。

結末をあまり考えずにスタートしたので、温かい目で見守ってください。

「家出歴1056日・・・・・、今日も宇宙は広い。


 3000年前までガス星雲だった闇の霧星雲からは新たな太陽が生まれようとしている。生まれるとはいっても、何千年も先の話なんだけど、・・・。


 しかるにヒトの人生は短い。宇宙開拓移民の子孫の平均寿命は、種の起源をはぐくんだ地球時間で、最大で200年。平均で150年。


 それでも、他星雲への距離は光の速度でも何千年もかかる。恒星間亜高速ドライブを使っても何十から百年とかかる。

 それと比べたら、ヒトの命なんて、点のように短い・・・・・、


 短いからあくせくと動くんだけどね・・・」


 少女はそう言ってコクピットの椅子の背もたれをゆっくり倒し、天井に見える宇宙の星々を眺め、右手を顔の上に伸ばして、指を大きく開いて、フンっと握りしめた。


「アリサお嬢様」


 バリントのきいたはっきりとした丁寧な口調で、パイロット席で船をコントロールしている金属のがっしりとしたボディのデクドロイドが言った。


「なあに、グレッグ」


 アリサお嬢様と呼ばれた少女は、デクドロイドの方に振り向いた。


「お嬢様は、おうちにお戻りになるつもりは無いのですか?」


「うちに戻る? どうして?


 グレッグ、わたし、何も悪くないわよ?」


 ケロッとした顔で、天井の星を眺めながらアリアは答えた。



「パパが砂虫の入り江の洞窟に隠していた、浮気旅行用の秘蔵の宇宙船を出世払いの札付けて、買い取っただけだから。

 いい年して、御忍びで浮気も無いものよね」


「旦那様はいつまでもお若くありたいのですよ」


 グレッグは四角いくぼみの目からオレンジ色の光を放って、まるで、愉快そうに語った。


「自分の年齢いくつだと思っているのかしら。

 そりゃあ、見た目は若いし、喧嘩も強いし、洒落た都会で一緒に街を歩くとカッコいいけど。

 あの人、実質地球年齢で80歳だよ。平均寿命からしても半分以上だよ。それと少し、生え際が後退しはじめてるし、そろそろ落ち着いてほしいわ」


 アリサは口をとんがらせ、ほっぺたを膨らませて、天井に向かって叫んだ。


「でも、平均寿命も延びた現在の宇宙移民の子孫にとっては、地球年齢は生物学上の目安であって、必要なものでもないと思いますよ」


「いいのよ、爺には爺を自覚させないと。逃げたわたしを追いかけも出来てないもの。あれから一年も過ぎたのよ。十五歳の誕生日なんか、とっくに過ぎてしまったのよ!」


 アリサはふてくされ顔を赤くする。


「いかに旦那さまとは言え、座標設定もしていない亜高速ドライブをフル稼働させた小型宇宙船を追うのは無理かと思います。

 たぶん、カレン様のビッグスペンダー三世号の追跡装置でも、連邦標準年で二年はかかりますでしょう」


「カレンおばちゃんか・・・・、その名を聞くのも懐かしいわ」


「”おばちゃん”は、あのご姉妹には禁句ですよ、お嬢様」


「おばちゃんでいいのよ。パパが爺さんなんだから、ちょっと若いからおばちゃんでとどめているのよ」


「それにアルマンゾ様のお母さまでもありますし」


「アルマンゾかあ、あいつは連れて来たかったなあ」


「お嬢様、なんてことを!

 アルマンゾさまは、まだ、七歳になられたばかりですよ。お母さんがまだまだ恋しいお年ごろですよ」


「甘い!甘いよ、グレッグ。

 砂漠の民の長、グラーノフ家の子供は男女関係なく、七歳で大人なのよ。グレン家なんて、五歳よ。グレン家に居たアンタなら知ってるでしょ」


「バッカス家の皆さんは、身体能力こそ宇宙移民の子孫に近いとは言え、文化的には古い地球のものを引き継いでおられますからね」


 もし、カレンおばちゃんの船と遭遇することがあったら、潜入してアルマンゾを連れて行くわよ、グレッグ」


 それは誘拐では?


 グレッグはそう言おうとしたが、言葉が出せない。


 それもその筈で、アリサが制御装置を使って、これ以上、グレッグに話をさせまいとしていたのだ。なぜ、アリサがそういう行動に出たのかと言えば、警告音が鳴り出したのだ。

 お目当ての宇宙船が亜高速航行で近づき減速状態になっていることの知らせに他ならなかった。

 彼らは、一か月近く、この宇宙域で罠をはり、ずっと網にかかるのを待っていたのだった。


 アリサは、座席を操縦席に戻して、操縦桿を両手で握った。


「さ、グレッグお仕事よ。先月は、ブースターとか、いろいろ買って食費も切り詰めて、来たから今月はいろいろと厳しいのよ。

 でも、これを上げたら、懐も温かくなるし、ちょっとしたバカンスにも行けるわ。

 お前たち、用意はいい!?」


 アリサが見下ろした先には、操縦席の真下にもひとつ管制室のようなものがあり、アリサよりも年上のクルーが威勢よく、奇声を上げて、それぞれの持ち場で作業に入っていた。

 彼らの仕事はバウンティハンター、賞金稼ぎだ。連邦警察も手を焼く犯罪者を捕まえて、報奨金をいただく、荒くれ者の仕事だ。

 彼女は出自の血が騒ぐのか、すっかり賞金かせぎの首領、宇宙船カリュード号の船長が板についてしまっていた。


「そんじゃ、30分で片付るよ!」


 グレッグはタイマーをセットし、準備完了の合図を出す。アリサはカウントダウンを始める。


「10、9、8、7・・・・・・」



「3、2、イチ、ゼロ」


 アリサの秒読みのゼロが言い終わる前に、グレッグはロケットスタートを切った。


 減速中とはいえ、既に点ですら見えなかった遥か前方の賞金首の宇宙船が、あっと言う意図間もなく、一瞬でモニターの直前に現れ、あわや衝突という所で、カリュード号の船首に張られた無数のレーザーカッターは、波運動をしながら回転し、賞金首の宇宙船の船体をぺら紙のようにあっさりと切り開いた。


 切り離された船体の装甲の厚みは、100センチは有にあるのに、・・・・・

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