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星屑のリング  作者: 星歩人
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第四章 すばらしき仲間たち 第五話 彼方から六 アリサお嬢様

「なんか腑に落ちないのよね」


 不機嫌そうな顔つきで、顔面をたんこぶだらけにした男の頭に右足をのせ、サーベルのように長い銃口を男の鼻の頭に突きつけて、長い銀髪を上品に結い上げたカレンはぼやいた。


 カレンの右足の下にいる男は手足は縛られておらず、脇には小型拳銃も下げている状態だが、抵抗するのをすっかり止め、カレンの言うがままとなっていた。

 股間はわずかに湿り、悪臭が漂っており、明らかに男は失禁してしまったようだ。


「オイ、オイ。カレンよー、か弱い小悪党締め上げるのは、そくらいにしとけよカレン」


 無精髭で鼻の下から顎、頬を覆った挑発の均整の取れたマッチョな男は、鼻先に突きつけられた銃口を離してやった。


「ちょっと、何すんのよテッド」


 男は助かったとホッとしたのもつかの間、身の丈二メートルは優にある黒光りする硬そうな金属ボディのロボットに子猫のように首元をつまみ上げられ、ヒョイと簡易脱出ポットに詰められて、船外へ放り出された。


 テッドは船外のレーダーモニターのディスプレイに目をやる。船外の周囲は脱出ポットだらけで、自動で救難信号を発し続けている。彼らが何者かを克明に告げるデータも一緒に放出しているので、やがて賞金稼ぎが来て、この宙域は賑やかになることだろう。更には連邦宇宙軍も出て賑わいはもっと大きくなるだろう。


「グラック、ありがとな」


「お安いご用です。旦那様」


 窪んだ奥に精巧なカメラアイの目を持ち、鼻口の部分は電光板があり、そこで感情らしきものを表現する長身の金属ボディのロボットは、とても丁寧な執事声で、返事を返した。


「あんた、どっからこんな古いロボット見つけて来たのよ。今どき骨董品よ。ボディは希少なセルシウス鉄鋼で出来て、耐熱性も強度も重量級の宇宙戦艦並みなのよ」


「ああ、マキナとそれぞれの親が語り継いだご先祖様の話をしてたらな、五百年くらい前のうちのご先祖が、マキナのご先祖様と結託して、宇宙海賊をして暴れまわっていたことがあってな、その時の相棒ロボットが紅蓮家の倉庫と俺ん家の倉庫にバラして置いてあるってわかってよ、探して組み立ててみたんだよ」


「マキナの家とアンタの家は、結構繋がり深いんじゃないの?

 うまく、表の歴史に出ないよう細工してるんでしょう」


「かもな。表上は、紅蓮家とうちはここ三百年は関係がなかったように言われてるケド、実際はどうなんだろうな。

 カレンとウルスラの親父に至っては、ムコ養子になる前に俺の親父とつるんでいたしな。

 そして、俺もマキナと付き合ってるわけだから腐れ縁なんだろうさ」


 カレンはテッドの物言いに眉を細めた。


「ちょっと待ってよ、アンタ。いつからマキナと付き合ってるのよ」


「いつって、あんときからだが」


 速攻でカレンの右ストレートがテッドの左顔面に入り、テッドはぶっ倒れた。


「アンタ、もう手出してたの?

マキナの鉄壁の砦をあのお固い砂竜の頭で貫いたって言うの?」


 テッドのぼうっとした脳裏にマキナとのアノ思い出が、一気にイメージ形成され、同時に股間も膨らみ、且つ、弁護の弁も出た。


「お、おい。カレン!

 うちのガキ共がその辺にいるかもしれんのに、妙な表現すんなよ」


「妙な表現って、じゃあ貫いたことは認めるのね」


「ああ、誤魔化してもしょうがねえから、認める。すでに貫いて、放出もしてる」


 言い終えないうちにテッドの顔が上下からの攻撃で一瞬歪んだ。カレンがテッドの頭に肘打ちを食らわし、床に崩れようとしたところに膝蹴りを顎に当てたのだ。普通の人間なら重症を負う程の容赦のない暴力だ。


「放出だとーーー、」


 声が空気を伝わるよりも早く暴力を出せるカレンの猛攻にさしもの砂漠の荒くれ男もノックアウトされた。カレンは、全く、息が乱れていない。


 砂漠の荒くれ男は、とてつもない暴力を受けても瞬時の判断による受け身で蘇生が早いのが取り柄の一つなのだが、流石に今のカレンの攻撃は完全な不意打ちだったようで、蘇生に十分も要した。

 おまけに、息切れとめまいまでついてきた。いつもはフリで、どさくさに紛れて、カレンの胸の谷間にちょっかいを出すのだが、まったくそんな余裕が持てなかった。


 テッドは息も切れ切れに起き上がり、ふらつきながら、近くに見つけた酒瓶の蓋を外し、一口、二口煽ってから、千鳥足で話を続けた。


「そりゃお前、アレを何回もしたら、そうなる。ダロ?」

「ダロって、あたしが知るか!」

「んなことねえだろ。お前との時だって、さ。

 ホラ、先月の俺の父ちゃんの誕生祝いの日に屋根裏部屋で盛り上がって、やっちまっただろうが。あんとき、お前にもちょこっと放出しちまったんだぜ。

 お前、寝ちまってたから気づかなかったと思うが、いや、ちょっとしたハプニングツーやつだな」


 全部、言い切る前に、カレンはテッドを一本背負で投げ飛ばした!


「犯人はアンタかー、どうりで最近、体調よくねえと思ってたんだよ。どうして、くれんだよ、ガキできちまったのかよ、あたし」


「できたかどうかは、調べてみんとわかんねえけどな。オマエのことだから、飯の食いすぎって線もあるしな。

 何だったら、俺、検査装置持ってるから、パンツ脱いで、そこの椅子に座って股開いてみろや」


 カレンはテッドに言われるがままに、パンティに手をかけずり下ろそうとしたが、膝のあたりまで下げたところで、冷たい空気が素肌にあたった瞬間、のせられていることに気づき、頭に血が上ると同時に右ストレートをテッドの顔面に入れた。


「あたしにそれを貸せばいいだろ!!」


 カレンは、テッドが手に持っていた機械を奪い、コンピューター解析機にかけた。確かに有名な医療メーカーの妊娠診断装置であることが確認された。使い方の説明も出てきたので、ドレッシングルームに入って確認することにした。結果は、陰性だった。カレンは、ホッとした。


「なんだ、不発だったのか。ジェットなら、いつも百発百中なのにな」

「そうだよね。お母ちゃんなら即決なのに、せっかく、弟か妹ができると期待したのになあ。アリサつまんない」

「そうだな、せっかくマリアおばちゃんに超特急で送ってもらったのに残念したなあ。あとで、もう一発仕込んどくから、今回は簡便してくれや」

「やれやれ、お父ちゃん、また貸しだよ」

 電子カーテンから汚れた金髪髭面男とジェット嬢を小さくしたような女の子が首を出し、カレンが広げた股の中心を眺めながら、普通に親子の会話をしている光景がカレンの目先、いや素の股ぐら先にに現れた。


 プッチン!


 カレンの首筋か眉間の辺りでそんな音がしたようにテッドには思えた。間もなく、裸足の両足が決して逃げることのできないスピードでテッドの顔面に炸裂した。


「お父ちゃん!」


 女の子は思わず叫んだ。強烈な両足飛び蹴りでふっ飛ばされたテッドは、重力0.5の作用も手伝って100メートル先の倉庫の壁まで水平移動し、壁にぶち当たって床に大の字になって落ちた。


 カレンも慣性力でそのまま移動し、テッドの上に落ちると、テッドをむりやり起こし、サンドバック代わりに殴る、蹴るをしでかしていた。


「アリサさん、船長は大丈夫なのでしょうか」

「大丈夫、大丈夫。お父ちゃん、悲鳴上げてないうちは寸交わしやってるからダメージなんてぜんぜん無いの。

 それよりグラッグさん、超高速ドライブでこっちに来たのは良いけど、一日近く栄養ドリンクだけで、あたしお腹空ペコペコなの。ご飯はいただけないの?

 マルコおじちゃんでしょ。料理作ってるの。さっき、厨房の前を通ったらとても美味しそうな匂いがかしたもの」


 グラッグはアリサの料理という言葉に紐付いた言葉が頭の中に沸き起こって来るのを感じ、自分がすべきことを思い出した。


「そうでした!

 さっきまで、自分が何故ここに来たのかをわからずにいたのですが、アリサさんの今お言葉で思い出しました。

 そうです。私は、食事の用意ができたので、船長とオーナーをお呼びに来たのでした。どうも年をとると、忘れっぽくて、いけません」

「お年、ってグラッグさんはおいくつですの?」

「そうですね!実はよく覚えていません。

以前のご主人が今から五百年前の方ですからね。

 その方の前はさらに数百年前でしたので」

「まあ、随分と長生きされているのね」

「はい、前のご主人が亡くなる時に、私も人生の幕を閉じてしまおうと、ご主人とご主人の奥様の家に体を分解して置いて頂いたのですが、そのご子孫であられる船長とマキナ様が私を復活させたのです。

 私は自分が、簡単には組み上げられないようにしたのですが、お二人にとって、私は、非常に興味ある対象だったようです。

 気まぐれ者の手によって、生み出された私は、気まぐれ者の手によって再び命を授かることとなりました」

「ふーん、じゃあ、グラッグさんは、しばらくはお父ちゃんの所に居るのね」

「はい、船長が私を必要とされるその時までは」

「心配しないでいいよ。うちのお父ちゃんは、あなたのこと好きそうだから。

 でも、出来たら、あたしの執事になってほしいな」

 グラッグは、少々困った顔をする。

「アリサさん、それは私には判断できません」

「大丈夫よ!グラッグさん。

あたし、お父ちゃんが、何でも頼み聞いて上げるあることが出来たの。実はここに来たのもその成果報告でもあったのよ。

 だから、あたしはそのご褒美はグラッグさんを私の執事にいただくことにするわ」

「ああ、はあ」


 グラッグはアリサの言葉に半信半疑ながらも、心の中に小さな希望の光が灯るのを感じた。


 そして、アリサに手を伸ばし、片膝をついた。


「では、アリサお嬢様。

 ふつつか者ですが、よろしく、お願いいたします」

「グラッグさん、まだ気が早いわよ」

「いえ、大丈夫です。船長はお優しい方ですから、アリサお嬢様のお願いは聞いていただけますでしょうから。

 では、アリサお嬢様、食堂へ参りましょう。オーナーのほとぼりがさめるのはまだしばらく掛かりそうですから」

 グラッグは、背中を曲げ首のあたりにアリサを乗せると、体を変形させ、曲げた足から車輪を出すと移動をはじめた。


「わお、グラッグさん。とても便利ね」

「お気に召されて、嬉しいです」

「それで、アリサお嬢様は、何をなされたのですか、何となくですが、アリサお嬢様は、科学者っぽい感じがするのですが」

「さすがグラッグさん。そ、あたしね、カレンちゃんのところのイヴちゃんに協力してもらってね、時空を歪ませて、対象物を瞬時に別時空へ飛ばすことに成功したの!」

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