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星屑のリング  作者: 星歩人
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第四章 すばらしき仲間たち 第五話 彼方から四 ジェットとテッド

 あれは航海に出る一ヶ月前のことだった。テッドはいつになく険しい顔をしていた。マキナが惑星デュナンの深海生物を使って惑星アクエリアの土壌と大気を浄化させた一件に端を発し、惑星デュナンの首都、オアシスゼロには惑星連合との共和国自治区が拡大することとなっていた。

 様々な観光や産業が入り込み、これまで稼ぎの少なかった人々も経済的には潤うことになったのだが、頼みもしない新政府が作られたり、大統領ま選出される運びとなってしまったのだ。


 テッドら土着の宇宙移民の子孫民は、オアシスゼロからは離れた場所に居住しており、その近隣では別の自治区を作り生活をしているのだが、新政府が姉妹都市を結べと迫って来たのだ。

 彼らの狙いは惑星デュナンの惑星国家としての安定化と資源供給惑星化のもくろみがあることは明白なのだが、気のみきのままでいたい先住移民にとっては決して協調したくない提案だった。テッドら先住移民は度重なる新政府の要請を無視しつづけ、彼らがこの惑星の過酷な自然に恐れをなし自沈していくまで交渉を伸ばす作戦を取る体制に持ち込むことにした。これは過去千年間に何度も何度も繰り返された事であるのだ。


 だが時代はというか科学は進んでしまった。オアシスゼロの惑星連合の自治区はこれまで以上に急速に発展したのだ。良くも悪くもグレン社とバッカス社の優れた科学技術が優れたシェルター都市を建造してしまったのだ。既に完全な人工惑星都市国家もあるのだ。過酷な自然から隔離するシェルターさえ作ってしまえば、人工惑星国家と何ら代わりが無いのだから。


 惑星鉱山の採掘権は先住移民が居住する地区ごとに、その地区の長が持っている。テッドも長の一人である。未開拓の地区に関しては、長そのものが不在のため新政府が長として入れば採掘し放題なのだが、そこまでは甘くは無かった。先住移民が何百年も手をつけなかった土地は流砂のうねりが激しく、天候も不安定で、切り立った岩場が多く容易に採掘施設を建設できないのだ。当然、先住移民たちは自分の自治区の鉱山の採掘権を新政府に売り渡したりはしないのだが、観光地化、企業誘致化が進むにしたがって、まともな文明人が入植し始め、文明人種の文化を主張し始めて来たのだ。


 そして、テッドら漁師兼水産業加工業者に立ちはだかるやっかいな団体が現れた。自然環境保護、動物愛護を掲げる市民団体という名の政治的圧力団体であった。その強行無比な攻撃性からテロリストとも揶揄されることもある無尽蔵の資金調達力をバックボーンに持つクリーチャーガーディアンズを名乗る団体は、惑星デュナンの伝統的な砂虫漁の禁止を訴え始めたのだ。


 宇宙移民で構成される惑星連合国家は、それぞれ人類と同等種である生物は人為的に殺傷してはいけないという鉄則の掟があるのだ。だが、移民した星々の中でそれに該当する生物は殆どいなかった。道具を利用するまではいたが、道具を作るほど高度な知能を有する生物は現在の進化の過程ですら発見に至れていないのだ。


 だがそうなってくると、食い下がる人々が出てくる。人の形に囚われることなく、脳の認識力を機械的測った上での知能の高さや生物としての神秘性、癒さしといった当初の基準から大きく逸脱した範囲まで広げてしまうのだ。


 マキナがデュナンを訪れた事で、惑星連合国家政府はこれまでほとんど見向きもしていなかった惑星の可能性に目をつけ始めたのだ。もちろん外来の惑星国家政府が興味を持ったのは鉱物資源の方だが、人の噂は烏合の衆をかき集めてしまうものだ。


 すぐにネットでは惑星デュナンの情報サイトが立ち上げられ物好きが物見遊山に訪れ始めたのだ。そして、砂虫がクリーチャーガーディアンズの目に止まったのだ。砂虫漁師は、デュナンでも総祖先的な有力一族の家業でもある。これに圧力を加えられれば、有益な採掘資源とその設備の共有もしくは剥奪に大手をかけられると目論んだのだろう。


 とにかく、動物愛護団体という連中は、政府の役人とは異なり論理的な交渉や駆け引きが全く通じないからたちが悪い。理屈など何でもいい。人が動物を殺傷する限り存続できるのだし、公的機関でも無いのでその判断は不公平でもお構いなしなのだ。


 生き物を殺してその肉を食らうことを野蛮とする連中も昨今では多くなっている。大昔より、ベジタリアンという植物主体に食事を取る人々はいた。だが、その中でも細かな区分けがあり、動物の乳や卵程度までなら食すといったいい加減さがあり全く一貫性が無かった。しかし、科学が進歩しすぎた現在は、人体の成育に必要な成分を科学的に合成できてしまっているのだから、動植物の殺傷は必ずしも必要な行為では無くなったと極論ずけることもできるのだ。だが、そんなもので育った人は無菌体質になりがちで抵抗力が少なく、精神的には柔和にはなるが、それは生命力の弱さから来るものだと言われている。おまけに生体機能がひ弱で寿命も短く、生殖能力も低いという致命的な問題もあり、あくまでも緊急時の補助食という位置づけでしか無いが、メーカーの謀略によりそれらはうまく隠されているということだ。一節には、食料兵器としても使用されることもあるのだという。抵抗勢力の精神力から骨抜きにできるからだ。


 さて、動物愛護や自然環境保護を訴える団体の幹部が果たして、人工合成食品を主食にするような柔和な人間であるかと言えば、往々にしてそんなことなど微塵もない。いかにも獣肉をたらふく食い、肉食性まるだしの好戦的で、ふてぶてしい金欲まみれの顔つきである。

 更にこういう連中より厄介なのは、その手下的な罪なき市民団である。彼らは旅行者を装って、テッドたちの自治区にも入り込んで来る。そして、中型以下の砂上船を買い付け、テッドら砂虫漁師の大型砂上船を取り囲み漁の邪魔をすることもしばしば起きているのだ。


「希少生物、砂虫漁を即刻止めろ。獣肉食行為は、極めて野蛮だ。人類が持つ最悪の負の遺産だ」とわめき散らされるのも日常茶飯事となりつつあったが、沖へでてしまえばテッドたちのものである。

 土着民でない連中が知り得ているのは陸地からせいぜい数キロの状況だけである。砂の海の特性は砂上船乗りにしか分からない感覚めいたものがある。砂の海の上では機体は大きな方が船底と砂海面の平面率を保てるので、大きな揚力が得やすいし、音も静かである。


 小舟では音も大きく、平面率が小さいためスピードも出ない。まごまごしていると砂蛭などの生物が餌と間違えて突進し、船底に穴を開けてしまう。それですぐに沈没しないが、航行不能にはなる。新政府にはこれといったレスキュー組織もいないし、地元漁師は無礼な訪問者にはトコトン冷たいのだ。なぜなら、彼らを救う義務がないのだから。例え、救難無線を傍受しても基本ガン無視である。金額を提示されても大概は、中継ステーションへ大人お一人様が往復出来る程度のはした金であるのでこれも無視される。先住移民との交渉の決裂は、無法な訪問者にとって死を意味する。彼らはエネルギーも枯渇し、干からびて死を迎える。船も時間をかけて徐々に沈み、やがてはその痕跡も消えてしまうのだ。

 だが、彼らも最近は大型砂上船を手に入れたという情報もテッドたち砂虫漁師たちに入って来ている。


「あのお嬢ちゃん助けた為に、とんだことになっちゃたわね」


 薄い布団を覆いベットに横になっているローラ(ジェット・ローラースパイラル・カーロフ)が、その横で寝そべるテッドに話しかける。

「なーに、そのうち連中も力尽きてくるさ。それまでテキトーにあしらってやるさね」

「相変わらず自信満々ね、テッド」

「そういう俺に惚れたんじゃねーのか、ジェット」

「もう、そっちの名で呼ばないでって言ってるでしょう」

 ローラはふてくされて、テッドの左肩に噛みつく。

「いて、スマン。

 でも、今回はアレが激しく無かったが体調でも悪いのか」

「バカね。一ヶ月後はバカンスでしょ。その時にお腹出てたら格好悪いじゃない。それにまだアンタとのことあの子らに話してないし」

「そうだった。話しては無かったなあ。マキナには薄々バレちまってる感じはあるがなあ。

 血液検査されてるし、ほぼバレバレだろう。アレンの顔つきも俺にクリソツだしなあ。髪短くしてごまかしたが、なんかそういうのも姑息だよなあ。

 カレンやウルスラ、セルゲイ及び上の姉ちゃんにはな~も話してねーからなあ。今更って感じもあるし。だいたい、お前産みすぎなんだよな」

「種仕込んでるのはアンタでしょ」

「初回から外れ無しとは、我ながら命中精度の高さには恐れ入るよ」

「もとわと言えば、姉ちゃんに筆おろされて味をしめたあんたが、姉ちゃんのベットに寝てたアタシを姉ちゃんと勘違いして襲ったのが発端なんだよね。つまり事故よ」

「おい、またその話か。本命はお前だって言ってるだろうが。くどいな」

「わかってるけど、アタシら姉妹でアンタの子供いるわけよ。まっとうな星なら結構日陰者よ」

「そんなことはねーよ、一夫多妻制は、原始人類の証じゃねえ、自由の国の特権みたいなもんだぜ。最低限の決め事生きていたいから、ご先祖にならって俺たちはここにいるんだぜ」

 テッドは寝たままでジェットの頬にキスをする。

「そうよね。くどくてゴメンね」

 お返しにとジェットは、テッドの唇にキスをする。

「気が変わっちゃったから、続きやろうか。さっきの一言で、穴の周りがいい濡れ加減よ」

「俺も固くなっちまってるけど。百発百中だから、一月後は腹出ちまうぞ、いいのか?」

「生まれるものは生まれるのよ、それも運命よ」

「そういうお前の気まぐれっぽさが、俺は大好きさ」

 テッドは布団を歩入り投げて、ローラの裸体の上に自身の裸体を重ね抱きしめた。

「愛してるぞ」

「アタシもだよ、命ある限りアタシはアンタの子供を産むよ」

「頼もしい母ちゃんだよ。お前さんは」

 テッドはローラと合体し、激しく身体をこすりあう。彼らの喘ぎ声は、彼らが身体を反転させた際に入ってしまった船内マイクを通じて船全体に響きわたるのだった。

「誰よ、船内でエロビデオ見てるのは!

 今すぐ甲板に出ろバカタレが!」

 カレンの怒りは頂点に達し、船内のアンプをも飛ばす凄まじさだったのは言うまでもない。

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