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星屑のリング  作者: 星歩人
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第四章 すばらしき仲間たち 第一話 ある姉妹

地球から外惑星へと移民し、外惑星国家間で起きた戦いの1000年後。

かつて、義勇軍として戦果をあげ名声を馳せた伝説の戦士の子孫達が、古の絆の象徴である星屑のリングに導かれて、出逢い、愛と友情とドタバタをおりなす物語の短編集です。

 宇宙は広大だ。上も下もなく、ただ、ただ、無限に永遠に広い。あたしの夢はこの遥か銀河の向こうの天の川銀河にある。

 夢はいつかは、現実のものとなり、果たされるものである。あたしの、いえ、あたしたちの夢は間近に迫っているのだ。


「あのー、もーし」


 たった十七年の短い人生の中で、あたしは、数々の冒険と友人たちに巡りあった。彼らと過ごした時間は、これからあたしが経験していく長い人生の中では、まばたきをした程度の時間にしか過ぎないだろうが、あたしにとっては何ものにも変えがたい、一生の宝となっていくことだろう、


「あのう、もしもし、ウルスラお姉さま。休憩時間中、ご陶酔の中まことに申し訳ないのですが、」

「はい、なんでしょう、カレンさん」

ウルスラはあっちの方を向いたまま、妹の呼びかけに応えた。

「なんかお姉さまだけ、かなり得していらっしゃいませんか?」

「いえ、そういうことは無いと思いますよ、カレンさん。こう言っては何ですがあたしも人並みの苦労はいたしましたですよ」

 ウルスラは、話が長引きそうなので、一応、会話をしようと、すまし顔で、椅子を回転させ妹カレンの側に周り、ハーブティーを手に取り一口飲んだ。


「いえ、苦労の話ではなくて、印象といいますか」

カレンもすぐ脇のリクライニングシートに腰をかけて、好みのハーブティーを選ぶ。

「いえ、いじり好きのひねくれて者ですよ」と、ウルスラはさらりと言う。

「わたし、お姉さまの幼少時代のことをいろいろと調査しておりましたの。テッドを船長に就任させるために、関係者の身元を洗ってましたのそしたらですね、意外な事実が判明したのですよ」

 カレンは、椅子の肘掛のボタンを押し空間にモニタを表示させた。それを操作し、写真や動画、調査結果のレポートを周囲に開いた。


「身元を洗うって、ちょっとずいぶんですね。カレンさん」

「いえ、当時は、お姉さまだと気づいておりませんので、友人の知り合いといえど、しっかり調査しておく必要があると考えたのです。雇い主としては当然のことだと思いますわ。それに当時のお姉さまは、裏の世界では名の知れたハッカーでもありましたから」

 ウルスラは、なんだそんなことかと安心し、表情をそのままに、スイーツを右の肘掛のモニタから選びはじめた。

「そう言わればそうかもしれませんね。さすがあたしの妹ですわ」

カレンは、調査レポートの束の中からひとつのファイルを抜き取り、読み始める。

「この調査レポートによりますと、ウルスラ・ダントスさんは、ダントス家の末娘で、十代前の当主が創設者である学園では、誰彼もあこがれるお嬢様だったとか。振る舞いもつつましやかで、温厚な人柄、スポーツも、勉学も、歌も、楽器も、料理もたしなまれて、まさに、お嬢様の中のお嬢様だったと」

ウルスラは笑みを浮かべ、カレンの話に耳を傾ける。


「まあ、カレンちゃんを政府に取られない為の偽装と、芝居の嘘を隠すために、我が祖父の隠し子にはされてましたが、一応、家柄はそれなりにありますから、外ではそれなりの振る舞いをしませんとね」

「プロポーズに来られた殿方の数は十二年の在学期間で千人を超えるとか、しかも、学校に直接来られていたとかのお話ですね」

「そうですね、授業中に入ろうとした馬鹿もいましたが、その方は防衛装置で黒焦げになったと聞き及んでおりますね」

「でも、ですよ。わたし、カレン・バッカスが知るウルスラ・ダントスさんは、毒舌、冷徹、無表情、暴言付の問題児だったのですが、影武者でもいらっしゃったのですか?」

「いえ、いえ、あちらは素のあたしに比較的近いものでしたのよ。学園でのあたしがむしろ作られたあたしでしたの」

「でも、意外。お姉ちゃんが十二年も学校行ってただなんて、どうして」

「わたしは、一ヶ月もしないうちに退学になちゃって、あとは家庭教師や通信教育で学位をとったけど」

「それはカレンちゃんが、暴力をふるうからでしょ」

「いえ、あれは正当防衛よ」

「過剰防衛でしょ。テッドがあそこまでやられても死なないのは、テッドがゴキブリなみの生命力があるからよ」

 ウルスラの意見を聞いたカレンは、ちゃんちゃらおかしいと噴出して返す。


「ぶぶーー、所詮は女の子のパンチやキックじゃ、あいつは傷だってつかないわ」

「ぶぶー、あいつは本当にあぶない攻撃はよけてます。パパの重たくてすばやい攻撃は全部かわしてました」

「そりゃパパのは避けるでしょ、まともに当たったら危ないもの。それが何か?」

ウルスラもカレンも知っていた。父親のパンチやキックが兄カルロス並みに素早いことを。

「テッドは、カレンちゃんのも避けようとしてるんだけど、早すぎて避けられなくて当たってたって知ってた?」


「マジ、それ?」


「大マジよ。カレン。あんたに殴られた後、あいつはマジのびてるよ。だから、小さいときにあんたの大事なところに指突っ込んだことチャラにしてあげなよ。

 子供が出来たわけじゃなんいんだし、きっとまだ膜はあるわよ。確認するならテッドと一発やるしかないかも」

「ちょっと、ちょっと、そういう話をしにきたんじゃないんだけど」

「じゃあ、何の話よ?」

「マキナのことよ」

「ああ、彼女が当主になった今でも、記憶障害おきてたときに、あたしと仲良しないなっていたことを思い出して、今では大親友になったってこと?」

「ちがう、ちがう。それよりも前よ」


「それよりも前。・・・・・。あたしが裸んぼうのマキナちゃんの足の付け根の秘部をガン見してたこと?」

「お姉ちゃん、ガン見してたの?」

「いやー、見ちゃいけないと思ったけど、ついつい見ちゃったのよ。綺麗だったから。体ふくときとか、お風呂入ったときとか、ついつい目線がね」

「ああんもう、そういう話じゃなくてね、浣腸よ!」

ウルスラは、カレンの話題の意図がまったく持って読めなかった。いろいろ考えをめぐらすが、思いつかなかった。そこで適当に切り出してみることにした。

「カレンちゃん、便秘なの?」

「違うわよ、砂漠で気絶してたマキナちゃんに、浣腸したのお姉ちゃんでしょと聞いてるの」

「そうだったけ? 一年以上も昔のことじゃない、はっきり覚えていないなあ」

 知らないというのは当然嘘だが、困っているカレンがとても愛くるしく感じたウルスラは、嘘を突き通すことに決めたのだった。

「いいえ、あれをやったのはおねえちゃんよ。そう言ってやってよ。この間、仕事先でマキナと会ったのよ。運び荷の受取人がマキナだったのよ」


「へー、そうなんだ。わたしたちを雇うなんて、あの子も気を使ってくれてるのね。そういえば、ツンツン頭にしてなかったの、何か言われなかった?」

「変な感じとか言ってた。じゃなくてさ」

「あたしは非番で、アクエリアでセルゲイとバカンス楽しんでいたけど、セルゲイのことはチクってないでしょうね?」

「そっちの話じゃないわよ。それで時間があったんで、昔話をしてたのよ。そしたら、あのときの浣腸の話が出たのよ」

「それで?」

「それでじゃないわよ、あたしがしたことになってたのよ。浣腸をマキナに!

『カレンさんて、真面目なのにああいうお茶目なこともされるんですね』って笑って言ってたわ!」

「良いことじゃない、いい思い出になってるじゃない!」

「良くない!」

「どうして?」

「わたしが、気絶している女の子に浣腸するような人だと誤解受けていることがよ!」

 するとシフト時間を知らせるベルが艦内に響き渡った。

「シフト交代のベルが鳴っている。時間みたいだから、見回りはあたしが引き継ぐわ。おしゃべり楽しかったわカレン、ゆっくり休んでね」


 そう言って、ウルスラは休憩ラウンジ出て行った。

ひとり残されたカレンの右横で、「長く生きていれば、人生いろいろありますよ」とアダムが、さらに左横でイヴが「小さいことにはくよくよそしないことですよ」としんみりと言い、安眠ゴーグルをかけて眠りに落ちた。


「もう、何なのよー」

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