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星屑のリング  作者: 星歩人
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第三章 あたしの夢 第ニ話 ボスジャック

「ちょっと待って!謎って、何ですか?わたしたちは運輸業者であって、惑星探索者や、生物調査団じゃないのですけど。

 タチアナ、いえ、通り名はハルカさんでしたっけ?

 どうやってわたしたちへの仕事依頼に登録出来たのか問いませんが、そのような得体の知れないお仕事は、報酬が良くてもお引き受け出来ません。

 あなたが、従業員の親族であることは、なんの優位にも働きませんよ!」


 カレンは、厳しい目付きになった。中身も見ずに、拒否は無いだろうけど、こっぷざけたタイトル出すのもどうかと思うけど。

 一体、誰が作ったんだ。"作成者 ミライ・エイゴー"って、マリア、あんたか!?


「姉ちゃん、これあたしの?」

「そ、宇宙戦艦に偽装を施し、戦闘も合法になるような業者がいれば、うってつけの仕事になる未開地探索物輸送ミッションさ。

 そういう奴等がいる情報は、前々からあったんだけど、コンタクトが出来なくてねえ。 でもね、今回、コンタクトできたんだよ、ミライの知り合いに穴開けのプロがいるってさ、その人にお願いして開けてもらって、うちのメガネくん、あ、これはメカニックやってるうちの主任なんだけどね、私の息子で、お嫁さん募集中なんだけど、おっほん!

 その子が細工して、あんたらの仕事依頼に登録出来たわけよ」

「ふーん、ミライ、マリアの知り合いの穴開けのプロですか。それは、それは、・・・?

 まさかウルスラお姉ちゃんのことかしら?」


 あれ、あたしが火種だったの?

 あー、なんかそんな依頼受けたような。その報酬が研究室からの拉致で、ここに来れた理由だったような?

 アッハハ、すっかり忘れてました。


「お姉ちゃん!」


 あは、カレンが怖い顔してる。ウルスラ・ダントスなら、すっとぼけて、居眠りするところだけど、カレンのお姉ちゃんとしてはそれもできないわね。ここは正直に、


「まあ、いいわ。お姉ちゃんのことだから、悪気じゃなくて興味本意だったのよね。とりあえず、その事は咎め無いから、ハルカさんの依頼内容聞こうじゃない。

 騙されたのはこっちにも否があるし、ハルカさんがそうまでして、わたしたちにやってもらいたい仕事は聞く価値ありと見たわ」


「そうです。不正を働いてまで、危険を承知で、責任者自ら依頼する仕事は、よほどのものとみました。わたしはハルカさんにとても興味を持ちました。是非、お話を聞かせてください」

 あれー、イヴが長ゼリフ喋ってる。どういうこと。今までは単語をボソボソとしか話せなかったのに。テッドの親族って、デクに好かれる性質でもあるのかしら。

「イヴ、お前、喋ってるじゃないか」

「イヴちゃん、すごーい」

「へー、普通の人間みたいに喋るデクっているんだ。それにわたしに興味があるだなんて、かわいいじゃないか」

 イヴがにこにこしてる。どういうこと。


「お姉ちゃん!」


 カレンが無垢で好奇心旺盛な少女のように、目をキラキラさせている。いったい、どうしたんだ、あの糞がつくほど真面目な娘が、その辺のハイテンションのギャルになっちまってる。

 両手と胸の間に抱え込んでいるのは、あの仕事のポイントを見るタブレットコンピュータのようだが、ここを見ろとさして来た。

 のぞけばとてつもない業績ポイントがついていた。新鋭軍艦および、新技術のモニターも兼ねるわたしらの運輸業は、軍のモニターで取得したポイントを金や様々な営業申請、航続距離のポイントなどに返還できるのだ。


「これは凄いデータがとれたよ、あの使えないと思われていたセンサーに反応を与え、今また人造人間に飛躍的な進化をもたらしたよ。これは、航続距離をちまちま稼ぐ以上の特典を頂けているよ。タチアナ、いえ、ハルカさんは、もしかして、幸運を運ぶ女神なのかも知れないよ!」


 いやいや、カレン、それは絶対に無いから、この人、業界では器物損壊の多いことで有名だから、怪我人も結構出す人なんだよ。最も、表にその情報は漏洩してないけどね。仕事を果たしてくれるという点での信頼度は高いけど、テッドの一族で手荒で無い人なんて居ないから。

 これは、何かの偶然だよ、繊細なセンサーが、このグラーノフ一族が持つ何らかの生態的な波長と同調しているとわたしは推測するよ。まあ、それが、あたしたちにとって付加価値のあることになれば、そういう結論だけどね。


「さて、皆さんは、宇宙海賊ベルゼブブをご存知ですか」

「そんなのうちの星のような変境地のガキだって知ってるぜ、宇宙最悪の極悪強盗団だろう」

「そう、誰でも知っている泣く子も黙る極悪中の極悪のクソ盗人集団です」

「まあ、姉ちゃんも裏の世界じゃ、似たようなこと言われてっけどな」


 あっ、テッド墓穴を掘った。ハルカさんの素早い膝げり、股に首を挟んでのジャンピングドロップ一閃。沈黙したな。弟でなければご褒美に近い拷問か。


「で、そのベルゼブブがどうしたんですか?何か有益な情報でも掴んでいて、それを横からかすめ取ろうとか言うんじゃないでしょうね」

「ご名答!流石は、カレンちゃん。バッカス家のうら若き才女だねー、その通りでございまーす」


 だー、ダメだこの人。とんでもないこと言い出したよ。ベルゼブブは、門外不出の極秘兵器、人工惑星要塞ギガントスを根城にしているって噂もある一星間国家なみの連中なんだよ。

 宇宙船一隻で飛び回っているような古式ゆかしい海賊さまじゃないんだよ。そいつらから機密情報をかすめ取るって、どこの命知らずだよ、まったく。

 この船は、確かに最新鋭の宇宙戦艦だが、試験船な上に、ギガントスの十万分の一もないんだぞ、どうやったって勝ち目ないだろう。向こうは超がつく程、巨大な宇宙戦艦なんだからさあ。


 まあ、この人の伝説的武勇伝は、色々聞かされたけど、今一、尾ひれがつきすぎてゆうか、作り話に聞こえるんだよね。人間がハチャメチャなんで仕方ないのだけど。


 カレンちゃんの顔が一気に曇ったよ。あ、でも、それをイブが抑えさせている、話を全部聞けって言っているようだ。


「ベルゼブブも大企業というか、大国的な問題も抱えているところでさ、偏狭惑星とか星系だとさ、中央への覚えもさして良くない訳よ。

 だから、ビッグなお宝情報とかあっても、真面目に中央に知らせたりしないで、着服とかしちゃう奴らもいるのよ」

「そういう人たちの情報なら、かすめ取っても中央の応援は呼べないし、反撃されても、この船の戦力ならお釣りがくるくらい応戦可能ってことなんですね。ハルカさん」

 イブがまた普通に喋った。会話の内容を理解して、ハルカさんが言わんとすることを突き止め、先に話をしている。たまげた。こんなに人間的な思考のできるAIがあるなんて、設計者はいったい誰なんだ。さすがのハルカさんも、カレンちゃんも、あいた口がふさがって無いよ。


「そうだよ、イブちゃん、すごいよ。姉ちゃんいつもめちゃくちゃだけど、意外と考えてもの言ってるのよ」

「マリア余計なこと教えるな!それに姉であり、上司であるあたしにその言葉は失礼だろう」

「あは、ごめんなさい先生。ミライ、言い過ぎました。てへ」


 マリア、あどけない顔で、拳で自分の頭をごっつんして、舌をペロッと出した。これで、若い男連中は骨抜きにされるんだろうな。姉も姉だが、妹も計算高いなこの姉妹は。


「それでどんな情報を仕入れたんですか?」

「奴等の暗号通信からの解読だけどさ、惑星デュナンを目指す偏狭総督府のパトロール挺、まあ海賊船だけど、こいつらが、どうも惑星再生能力を持つ植物のありかを知る人物を追っているって話なんだよ」

「惑星再生能力を持つ植物?」

「ああ、それなら俺も知ってるぜ、もちろん植物の方だけどな。漁業組合長の末娘のローラがその手の研究やっていて、今は俺の船に船員見習いで乗っけて研究してるよ。希少種でもあるから、生息場所や生態情報とかは必要以上に秘密にしてあるらしいぞ」

 テッドが急に復活して、話に入って来た。本当に故郷のことには詳しいんだな。

「でも、そういう植物って、この銀河には無数にあるんじゃなかったかしら、有害毒物を無害にできるって能力だけど、全てに万能なものは無くて、Aという物質には有効でも、Bという物質には無効だったり、もっと有害な物質を作り出したりするって話じゃない」カレンが冷静に話に入った。

「そんな学術的なことは、運び屋のわたしたちにはどうでもいいことなのよ」

「ハルカさんは、その植物の生息場所と、サンプルを手に入れさい出来ればいいのでしょう。それさえあれば、高額取引物件として商売になるってことでしょう」


 またイブが喋った。ハルカさんはまたも目を見開いたが、すぐに笑顔がこぼれた。


「イブ、あんた分かってるじゃないか。のみ込みが早いね。気に入ったよ、あたしの右腕になれるかもね」

「ええ、姉ちゃん、それひどくない。マリア、ミライとして努力してるじゃん」

「イブ、すげーぞおまえ。でも、姉ちゃんの子分になるのだけはよした方がいいぞ、安い給料でこき使われるのがオチだから・・・・」


 あ、またのされた。今度は瞬殺だ。この姉弟のスキンシップは理解しがたいね。でも、羨ましいな仲よさげで、あたしだって、カレンちゃんとも、カルロス兄貴ともうまくいってるけど、この人たち、じゃれあいのレベルが半端ないんだよ。うちは、まだまだよそよそしいというか、お上品なんだよ。荒くれ者のパパの世界には、まだまだ踏み込めてないんだよね。


「それで、どうするのですか?デュナンに向かっている海賊船にステルス着艦して、メインコンピュータからその情報をハッキングするのですか?」

 カレンちゃん冷静だ。ハッキングとなるとあたしの出番かな。いいよ、お姉ちゃん、カレンちゃんのためなら頑張っちゃうよ。クールで嫌みなウルスラはもういないんだから。


「いや、そうじゃないの。実はその情報を持っている旅行者を装った政府関係のエージェントがデュナンに隠密で向かっていて、そいつがその情報を持っているらしいんだわ。

 奴らもそれが誰だか特定できていないらしいんだ。だけど、たぶん研究者っぽい奴だとは思うのよ。

 それに、あの星って、過酷な自然環境なんだけど、それ故に冒険心とかあおられて、結構、個人の研究者や探検家ってのが訪れているんだよ。まあ、大半は半日で音を上げて帰るか、途中でのたれ死ぬやつが殆どなんだけどね。

 それでも、夢を追い続ける奴らにとっては、夢の惑星なのさ。故郷を出たわたしでも、あの星の旅行はわくわくするものね。

 本題に戻るけど、烏合の集の中からその対象者を特定して、情報を頂くって訳よ。もちろん、相手を傷つけてはダメだし、こちらの目的を悟られてもダメ。どうにもいかなくなったら、先方と話し合いもあるけどさ、まずは対象者の特定だよ」


「んー、なんかすごく大雑把すぎるのですけど、情報調査や対象者の探索、滞在とかの出費の方が高くつきそうですけど」


 カレンちゃん、頭かいてる!無理もないな、旅行者だから、オアシスゼロに降り立つのは確実なんだろうけど、今、惑星デュナンは初夏で観光シーズンなんだよね。旅行者も多くて、死亡事故も多いときている。

 やがて、雨季が近づくと濃霧が発生したりして、あの星独特の温水ミストシャワーが発生したり、水位が上がったりと色々大変なんだよ。広大な土地に散らばった名も知らぬ人を特定するって出来るの。


「カレンさん、確かに対象人物の特定は骨が折れるかもしれませんが、一応、この時期にデュナンに訪れる船舶の乗員名簿は入手できてます。それを使って、まずは人物の絞り込みをしていきましょう。

 対象人物のプロファイリングは、我々クルーとハルカさんの得意とする分野です。わたしは情報連結しか出来ませんが、皆さんの人を見抜く力があれば、ベルゼブブよりも先に対象人物を特定でき、彼らから守れる筈です」


 はー、イブは分かってるなあ。あたしも、感服するよ。


「一番注意しなくちゃいけないのは、彼ら(ベルゼブブ)もアホじゃないってこと。彼らも我々と変わらないブレーンがいて、ややもすれば、我々よりも先に対象人物とコンタクトしかねないってことよ」


 確かにハルカさんの言う通りだ。海賊とつくと、船長はともかく、手下は筋肉馬鹿のイメージを勝手に抱きがちだけど、彼らもその道のエリート集団なんだよ。アホに宇宙船は操縦できないし、ワープ航法持った船を動かすにはそれなりに賢い連中じゃないと、すぐに難破しちまうんだよ。


「でも、基本が盗みってところがひかかるのですけど、それって犯罪じゃないですか。違法行為は、この業界ご法度ですよ。相手にばれなくても、ダメですよ」

「決して法には触れませんよ、カレンさん。場所はデュナンでしょう」

 おお、その手があったか。これは気づかなかった。

「惑星デュナンは、惑星連合非加盟で、中心都市オアシスゼロにイーステラの拠点があって、惑星連合の法律が施行できるのは唯一そこだけ、それ以外の地はある意味無法地帯だから、そこでやれば法には一切触れないってことさ」

 いつのまにかテッドが復活してのる。


「流石は我が弟。分かってるじゃないか。オッパイの恩は忘れてないてか?」

「そう言うことだ。姉ちゃんのオッパイで、俺とマリアは育てられたから、姉ちゃんは俺たちの母ちゃんでもあるしな」

「そうだね(あん)ちゃん、産みの親より、育ての親って言うしね。でも、あんときお母ちゃんは、忙しかっただけで、姉ちゃんにおない年の子供がいたから、あたしはご相伴にあずかっただけだけどね。

 あっちは、姉と弟だったけ。お姉ちゃんの方は、成長してから全然会ってないけど、弟くんは、職場仲間だから。あたしの正体には気づいていないみたいだけどさ」

「じゃあ、まあ、そう言うことだから、みなさん、張り切っていきましょう!」

「おー!」


 あらあら、勝手に仕切られちゃったよ。この人、アーニャさんより、強引だ。そういえば、アーニャさん、居ないな。お姉さん来てるのに一度も顔出してないや。何かあるのかな、あの二人。まあ、何はともあれ一件落着だ。


「一件落着じゃないわよ、お姉ちゃん」


 カレンちゃんが、怖そうな目付きであたしを見つめてた。

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