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疑う円環  作者: 夏樹 真
5時間目
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第二十三話 ルールと矛盾

いままでと違い、今回は処刑が終わった直後に如月が去る事は無かった。

扉の方を向いた状態で、どこかためらいがちに静かに話かけて来た。


「もうそろそろさ、終わりにしてもいいと思うのよね」


如月のその呟きは突然だった。


「私も、こうやって繰り返す事に嫌気が射してきたしさ。ねえ、もう終わりにしようよ」


不意に雰囲気の変わった如月に対して全員が緊張する。

いままでと、何かが違う。何かのメッセージを伝えようとしている。


「俺たちとしては、今すぐ解放して貰えればそれでいいよ。特に騒ぎもしない。救急車だけは呼ばせてもらうけど、その間にお前が逃げたって気にしない」


戸惑う全員を前に初めに発言したのは、やはり大神だった。


「大神君。そういう事じゃ無いよ。私が欲しいのは、謝罪だけ、それだけなんだって事よ。私が最初にいったルールには矛盾があるでしょ?佐々木さんの意見を聞いて貴方達にもそれは分かったはず。そして、それを分かった上でこういうルールを設定した事の意味を考えてよ。この処刑は私一人の力では止められないもの。長くなれば長く苦しむのも貴方達なのだから」


なぞかけの様な言葉を残して、如月はドアの向こうに消えていった。


「いまの何だったんだ?」


宮内ツトムが信じられない物を見たように呆けた声でいった。


「何やら、助言めいた事を言っていたな。ルールの矛盾と、佐々木の発言とか」


「佐々木さんの発言っていうとあれよね?犯人が自分から名乗り出てちょうだいっていう意見」


「みんなが不甲斐ないからヒントを出してくれたのね、流石にヤヨイちゃんは優しいわ」


三条と大神と宮原ががとりあえず思う事を口に出していく、


「そこに、何かルールと矛盾する所があるって事か……、如月が何でそんな事を持ち出したかは後にして、一度整理するか」


雨宮がまとめて語り出した。


「如月の告げていたルールは、1時間に1回如月をいじめていた犯人を僕達の中から1人指名する。その1人の決定方法は、議論でも多数決でもいい。ただし無回答はだめだったな」


「そうだね、無回答だったから佐々木さんは罰を受けたんだし」


近藤シズクがあいずちを打つ。


「そうそう、罰の話があったな。明確にルールとして言っていたかは忘れてしまったけど、指名された1人には、罰が与えられる。いまのところその罰は、致死量かもしれない睡眠薬の静脈注射だな」


「それに、このゲームの終了条件も言っていたな」


ツトムも先をうながす。


「ああ、そうだね。いじめで自殺に追い込んだ犯人がこの中からいなくなれば終了だったよね」


「因みに犯人は二人居るとも言っていたな」


大神も補足する。


「それで、ここから矛盾が存在するかを検討しないといけないのか。佐々木さんの言う、犯人の自首の理論とどこが矛盾するのか……?」


ここで一度声が止まった。この中から、矛盾を見つけなければいけない。

でも、一体何が矛盾しているのか?


「くっそー何か矛盾してるのかこれ?自首すればすぐに終わるって事なんじゃないのか?」


「それに、如月さんの考えている犯人がちゃんと自覚のある犯人じゃない可能性もあるから、自首も信じられないんじゃなかった」


「自首する人がすぐに出ればそれでいいし、出なければそのうち犯人が出るまで議論するって、それだけだよな」


決定的な矛盾なんて無いだろう。

如月の言う矛盾とは何だ?

どこに矛盾があるのか分かれば、その先に進める気がするのだが。


「みんなヤヨイちゃんの立場に立って考えなさいよ。ヤヨイちゃんは、みんなに罰を与えたいのよ。だから自首なんて許すはず無いじゃない」


宮原の言葉が契機だった。雨宮の頭の中に、考えが急速にまとまり始めた。


「まってくれ、宮原さん。如月さんの目的は何だって?」


焦るような雨宮の言葉にも動じずに、宮原サトネは淡々と応える。


「全員の処刑よ。だから、誰が犯人かなんて関係ないわ。みんなで反省する必要が」


「ちがう!如月さんは確かそんな事は言っていなかった」


否定された宮原は少々あきれた顔をしながら、


「いっていたわよ。自分をいじめた本人も、それに気付かなかったみんなも罰しようとしていたんだから」


「でも!全員じゃない。いじめられた時期の事を思い出して、犯人をちゃんと当てられたら、残った人は救済しようとしていた。友達を罰したく無いとも、という事は、如月さんの事について真剣に考えて、犯人を導き出した人は救済しようとしていたんじゃ無いのか」


「まあ、そうとも言えるけれど」


しぶしぶといった調子で、宮原も認める。


       

「でもさ、もし犯人が自首してしまったら。犯人意外の人は、何も反省する事無く助かってしまうんじゃないのか?犯人を知っているなら犯人だけを罰すればいいのに、

わざわざ10人、8人も多くここに監禁して何も反省しないで帰る事を如月は許すわけないんじゃないか」


 雨宮の指摘は、確かに矛盾を孕んでいた。

ここまでの事をしておいて、犯人の自首が出てしまえば、それだけで破たんしてしまうような絵を如月が描く事があるのだろうか?

という事は……


「如月さんは、犯人が自首をしないであろう事を知っていたって事なのか?」

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