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疑う円環  作者: 夏樹 真
1時間目
1/32

プロローグ

初投稿作品なので、ゆっくり進めていきます。

あまり過激にならないと思いますが、残酷な描写も含むと思います。

ミステリ作品を目指しています。

感想、批評、ご意見等頂けると嬉しいです。

夜の学校……


 それは、普通の生徒達の立ち入れない領域である。

日中は、千人を超える生徒や教師であふれ、どこに行っても賑やかである校舎も、夜になってしまえば寂しさだけが残る。


教室には当然人影は無く、机の影が長く伸びる


校庭には片付け忘れたサッカーボールが寂しく転がるばかり、


多くの生徒で賑わっていた部室棟も今は火が消えたように静まり返っている。


吹奏楽部の少しテンポのずれた、トロンボーンの音も


筋トレ中の部員に激を飛ばす先輩の怒鳴り声も


静かに絵を描きながら時折交わされる静かな談笑も


何も聞こえない。



校庭と同じくつい先ほどまで活気に溢れていた体育館では、

壁に掲げられた校歌の歌詞が月光の陰影を受けて妙な存在感を示すのみ。


もし、学校に監視カメラを着けて昼間の映像と、夜の映像を比べたら、それは全く違う場所のように感じるだろう。


”生気に溢れた昼”と”静けさに支配された夜”


 何度も繰り返し、ホラー映画の舞台になったように、日中と全く違う姿を見せる学校は、どこか不気味な存在感を発している。


人は全く知らない恐ろしい場所より、よく知っている場所のいつもと違う一面を見たとき、恐怖を感じるのかもしれない。




 学校は閉鎖された領域だ。

 教育過程を終了した者にとっては、不可侵の領域であり、侵入すれば間違いなく不審者で逮捕となる。

15歳~17歳という限られた人しか入れない。制服を着ていなければ直ぐに、侵入者だと分かる。

仮に門を潜れたとしても、校舎の中で動きまわるのはとてつもなく不便だろう。

昼間の学校は、ひたすらに異物の混入を阻んでいる。


 夜の学校も同じだ。

機械警備の導入等により、一般家庭とは比べ物にならないほど堅牢に守られている。

塀を超えたり、不用意に門を開けたり、扉を開けたり、それだけですぐさま多くの人が駆け付けるだろう。


しかし、その一方でこの領域は、驚くほどに周囲の感心が薄い。

自分の子供が通っている家庭ならともかく、そうでなければ学校とは縁の無い空間であり、本来堅牢に守られている場所である。

既に守られている場所で何か起きるわけがない。万が一異常事態が起きたならば、既に警備会社に連絡されている筈と考えるのだ。強固に守られているはずだからこそ、注意としては限りなく薄くなる。


 学校の窓ガラスが割られていた。なんて、昔の不良がやったような事件がたまに報道されるが、いつだって発見されるのは翌朝になってからだ。

窓ガラスの割られる音や、犯人が集まったバイクの音を周囲の住民が全く聞いていないなんて考えられない。

要するに無関心。関わり合いに成りたくない。そういう心なのだ。



 人は自分と関わりのない場所に感心を持ったりしない。たとえ感心をもっても、きちんと守られているはずのそこに干渉しようとは、しない。

したがって、機械の警備をだまし一度侵入を許してしまえば、そこは教師や生徒が登校してくる朝になるまで誰の干渉も受けない世界となる。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私立菖蒲ヶ淵高等学校。

 県内では有数の進学校で、毎年有名国立大学に何人も送り込んでいる。

ただ、県内ではと但し書きがつくように一般的な知名度はさして高くないのかもしれない。

せいぜい数年前に甲子園に出場した位だろうか、

それも初戦敗退だったため地元で騒がれたのみだったが。


 学校自体は、盆地である市内の裾にまるで、中央のサークルからはじかれたカーリングのストーンのように位置し、少し進めば山しかないという土地に建っている。

歴史ある学校で、もともと戦前には市街地だった場所に建てられていた学校だったが、大部分が焼けてしまい、やがて電車の駅ができた隣町の方が栄え、開発からおいてきぼりになってしまったという風情だ。

今では、学校に行くために駅もあるのだが、後発組の開発はうまくいかなかったようで、目下のところ発展とはほど遠い状態だ。


 当然のように、交通の便も悪く学校周辺にチェーンのコンビニやチェーンの飲食店が立っているだけで、あまり遊ぶところが無いというのが生徒達の不満だった。

駅の前なのに、某有名ハンバーガーチェーンが出店していない。

そんな自虐的な話を生徒はいつも愚痴り合っていた。

逆に保護者からは、雑念が入らない環境が良いという、なぐさめにもならないフォローが入っていたのだが。


 1学期のテストも終了し、後は夏休みを迎えるだけ。蝉の声はまだしないものの、木々のうっとうしい程の緑が示すように季節は確実に真夏に向かっている。

これだけ暑い中で、より葉を広げてより太陽を浴びようとする木々には、ある種の尊敬さえしたくなる。


生徒にすれば、夏休み前で待ち切れずじれったい期間。先生にすれば、ようやく1学期が片付いてさあ、夏休みの準備に入ろうという時期。


 この時期になると、さすがに夜でも蒸し暑い。

当然のように夜の学校の教室も蒸し暑い。

普段は、暑かろうが寒かろうが文句を言う人も居ない。


それなのに、そんな夜の教室に人間が居る。


 これが昼間であれば、生徒が何人居たとしてもおかしくはない。

しかし今は、夜だ。それなのに夜の教室に10人もの人間がいる……。


居る…


 いや、正確に言えば。”10人もの人間が教室の中に拘束されていた。”





文量はちょっとずつ増やせたらと思っています。

まだまだ、書き進めるのが遅くて。。。

分かりにくい所があれば修正しますので、指摘して下さい。

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