第30話 舞台をチェック
3人が校舎を出て校庭を横切ると、今夜使うという舞台が見えた。
真城がまじまじと舞台を眺める。
「広い校庭のなかにあると小さくみえるけど、体育館の舞台よりもデカくない?」
「うん。そこそこデカいな?」
黒江も頷いている。
坂下はケラケラ笑いながら、照明器具や舞台装置を指さす。
音響装置もかなり本格的だ。
「外だからって無茶しすぎじゃね? これ、雨降ったらえらい騒ぎになるぞ」
「不吉なことを言うなよ、坂下。装置の撤去に全校生徒が駆り出されたうえ、機材補填のための寄付のお願いが回ってくるぞ」
黒江が冷静に突っ込む横で、真城は純粋に感動していた。
「校庭に椅子が綺麗に並んでいる~」
「そうだな。しかも椅子が汚れないように、ちゃんとマットが敷かれているぞ。さすが日本」
黒江が静かに感動する横で、真城はケラケラ笑う。
「キャハハ。日本人らしいと言えば日本人らしいけど、結局は食べ物でマットが汚れちゃうよね~」
「おい、真城。お前ってば、文化祭の注意事項に一切目を通してないな? 校庭には食べ物持ち込み禁止だぞ?」
「マジか⁉」
黒江に言われて真城は目を丸くする。
「ああ、そうだ。屋台の方で食べて来ないとダメなんだぞ」
「えー、そんなぁ~。オレには100,000,000陸の孤島学円があるのにぃ~。使い切れるか?」
真城は時計と舞台の開始時間を見比べた。
黒江が冷たい現実を改めて口にする。
「そうだな、陸の孤島学円は明日になればただの紙切れだ」
「厳しい世の中だぜっ」
坂下が嘆くと、黒江がキリッとした真面目な顔をして言う。
「なにを言う。俺たち世界を飛び回るビジネスマンを目指す者は、どうなるか分からない明日を無事生き残るための勉学をだな……」
「ギャー、やめろぉぉぉぉぉぉ。お前、校長かよっ」
真城が腹を抱えて笑い転げる横で、坂下は悟りを開いたように呟く。
「ふふふ。おれは世界なんて目指さないよ。安全な国内で安穏として暮らすんだ」
黒江は坂下の両肩を両手でグッと掴んで口を開く。
「甘いぞ、坂下。鎖国はとっくに終わっているんだ。安穏として暮らせる地などないっ」
「ガビョーン」
坂下が嘆く横で真城は腹を抱えて笑い転げる。
堪えていた坂下も、ブハーと噴き出して笑いだした。
「ダメだー海外組おかしすぎるーっ!」
校庭の舞台を見ながらキャビキャビとじゃれていた3人の後ろを、上級生たちが叫びながら駆け抜けていく。
「急げ―牛串の競争率が半端ねー」
「うぉぉぉぉぉぉ、アレが喰えねぇとかあり得ねぇ―」
「我ら陸上部の足の速さを見せる時っ!」
「山岳部の足腰の強さ、なめんなぁぁぁぁぁぁぁ」
3人は目を丸くして振り返り、上級生たちが物凄い勢いで屋台を目指して走っていくのを眺めた。
「すげぇ迫力だな?」
「男子高生は食欲大事だからな」
黒江が引き気味に言う横で、食欲魔人の真城が答えながら首を傾げる。
「てか、牛串とか数量限定なの? 金之助さんは、そんなこと言ってなかったよ?」
「1人で何本も食う奴がいるんじゃないか? 実際、お前らも同じものを何個も食べたりしてたじゃないか」
黒江の指摘に真城と坂下は「「あっ⁉」」と声を上げた。
「てことは」
「かなりやばいな?」
真城と坂下は顔を見合わせるとタイミングを合わせたように黒江を見上げた。
少し遅れて黒江も大きく頷いた。
そして3人も慌てて上級生の後に続いて駆け出したのだった。




