第26話 満喫しすぎました!
「初めての文化祭で浮かれてるのは分かるけど、だからって200,000,000陸の孤島学円も使い切るか?」
「だってぇ~、冷やしキュウリも、チョコバナナも、フランクフルトも、ポップコーンも美味すぎるんだよぉぉぉぉぉ」
黒江が呆れて言う前で、真城は膝から崩れ落ちた。
「気付いたときには、財布から200,000,000陸の孤島学円が消えていたんだぁ~」
真城はうつ伏せで膝をつきながら右手でビニールパックを差し出した。
それは綺麗に空になっている。
チャック付きの透明なビニール袋の向こうには、青空が広がっていた。
「仕方ないだろ。魅力的な商品がありすぎるんだー」
真城の隣で坂下も同じように膝をつき、チャック付きの透明なビニール袋を振り回して嘆き悲しんでいる。
坂下のビニールパックからも200,000,000陸の孤島学円が消えていた。
「お前ら、マジで何やってんだよ?」
黒江は呆れた表情を浮かべて2人を見下ろした。
「だって魅力的な商品が……」
真城の体には沢山のオニヤンマがとまっている。
カブトムシやクワガタの姿もあるが、それらは本物ではない。
黒江が太く凛々しい眉毛を吊り上げて、厳しい口調で言う。
「自然科学部の屋台で買い過ぎたんだっ。だから俺は止めたのに」
「だってぇぇぇぇぇ」
ふぇぇぇんと情けない声を出す真城を黒江は睨みながらも可愛いな、と思った。
「坂下は何に使ったんだよっ!」
黒江は、なんとなく熱くなってくる頬を誤魔化すように、坂下を怒鳴りつけた。
「おれは文化祭だから文化的な活動をしようと思って、文芸部の同人誌を……」
黒江は確認のために一冊、同人誌を手に取った。
「ほーどれどれ……ってこれ、BLじゃねーかっ!」
ブワシッと地面に叩きつけようとして、ここが表で地面が土だということを思いだした黒江は手を止めて、そっと袋のなかに同人誌を戻した。
「だってスーちゃんがさぁ……」
坂下は黒江に怒鳴られてグスグスと鼻を鳴らした。
真城が横から同人誌の山に手を伸ばして一冊持ち上げた。
「どれどれ……ん? コレって八雲ティーチャーのだ」
「はっ?」
真城が手に取って見ていた同人誌を黒江が横から取り上げる。
「なになに……旭ヶ丘八雲著、BLの歴史? あのエロ教師、なんてもんを書いてるんだっ」
「いやいや、黒江。それは歴史書だから。研究レポートみたいなもんだから」
坂下は胸のあたりで両手をブンブン振りながら言い訳のように説明した。
「坂下……お前、なに庇ってんだよっ」
「文芸部、ヤベェな……」
黒江が坂下に突っ込む横で、真城はそろりと手を伸ばして同人誌を一冊取るとペラペラとめくりながら呟いた。




