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煌めくままに恋しよう  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第21話 文化祭はぬるっと始まる

 真城たちが返却された小テストの結果に阿鼻叫喚をあげたり、男子チア部や演劇部は運動部なのか文化部なのかについて思考を巡らせている間に、文化祭当日はぬるっとやってきた。


 真城と黒江が寮で朝食を摂っていると、坂下が朝食のお盆を持ってやってきた。

 指定席となっている真城の前の席へ腰を下ろしつつ、今仕入れたばかりの情報を伝える。


「今日は寮母さんたちが出店の方に行っちゃうから、昼食と夕食は、食堂で食べられないらしいよ」

「マジかっ⁉ なら、どこで食べられるんだよ⁉」


 慌てる真城に坂下は脱力した感じで「出店~」と答えた。

 真城は両手で拳をつくり、胸のあたりで力強く振る。


「おうっ。食いっぱぐれないように気を付けるっ!」

「ハハハッ。真城はどうせ出店で山ほど食うから大丈夫だろ」


 決意表明する真城に、黒江が声をたてて笑った。

 坂下は目を輝かせて言う。


「なんかうちの寮の寮母さんたちって芸達者みたいでさ。文化祭の締めは寮母さん主催の花火大会らしいよ?」

「マジか?」


 真城は目だけでなく口も丸く大きく開けて驚きを現した。


「文化祭で打ち上げ花火とは豪華だな」


 黒江はどうということはないといった様子で口の中に卵焼きを放り込んだ。


◇◇◇


 文化祭の朝、陸の孤島学園の寮は虫除けの匂いに満ちていた。


 真城がケラケラ笑いながら言う。


「毎日のことだけど、今日はいっそう虫除けの匂いが強烈だな?」

「まぁ、必要だよな。ココは山の中だから」


 黒江は虫除けの容器を振り回して仕上げのひと吹きをしながら答えた。


「だな」


 黒江が虫除けのついでのひと吹きをしてくるのを、真城は笑いながら受けていた。

 坂下も真顔で虫除けを吹き付けまくっている。


「紫外線も怖いが、虫もバカにできないからなー。しっかり虫除けはつけとかないとなー」


 四方を山で囲まれているうえ雪もたいして積もらない地域なので、大体の季節は虫除けが必要な土地柄だが、今日は特に必要だ。


 黒江はコクコクと頷いた。


「文化祭は表でやるから入念に虫除けは吹き付けておかないとな」


 そう言いながら黒江は白いスニーカーの上にも虫除けを吹き付けていた。


「なー坂下はどこへ行く予定? オレらはまず屋台へいくけど」

「おれも屋台へ行くっ。寮母さんたちの気合が入りまくった出店、楽しみ」


 坂下が期待に目をキラキラさせると、真城はケラケラと笑った。

 調子に乗った坂下が真城にズイと顔を近付けると、真城は更にケラケラと笑う。

 それを見てムッとした黒江は、自分の体を坂下と真城の間へ挟むようにして滑り込ませて真城の体を引っぺがした。

 坂下はちょっと引いて白い目を黒江に向けたが、彼はプイッと横を向いて無視した。


 寮の外に出ると、在校生たちがワッキャワッキャしていた。

 

 制服といっても夏は白のワイシャツに黒い学生ズボンといった感じなのでそれしか着ないという者も少数いるが、週末ということもあって生徒はだいたい私服だ。

 真城は上半身に白いTシャツを羽織り、色あせたブルージーンズと白いスニーカーを履いている。

 黒江はベージュがかった半そでシャツに茶色のカジュアルズボンを合わせていた。

 坂下は色映りして薄っすら青くなった白のポロシャツに濃紺のズボン、濃紺のスニーカーといった格好だ。


「文化祭って開会式とかあるの?」

「生徒会長が校庭の舞台に上がって開会の挨拶したけど、もう終わったよ」


 真城の素朴な質問に、通りすがりの杉田が答えていった。

 真城は両手で頬を挟んで慌てたように騒ぐ。


「マジか? 開会式とか、行かなきゃいけなかったんじゃ⁉」


 黒江は頭をポリポリ掻きながら言う。


「いいんじゃないか? 授業じゃないし、そもそも何も聞いてないじゃん」

「ぬるっと行こうよ、ぬるっと」


 坂下に至っては笑っている。

 真城は、高校の文化祭ってそんなもんなのかなー? と思いながら、2人と一緒に屋台を目指した。

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