第20話 文化部とは?
週末に文化祭を控えて、いつもは静かな文化部の活動も活発になってきていた。
真城と黒江は寮へ戻るために廊下を歩いていた。
夏休みがあけたばかりだというのにみっちりと授業を受けた帰り道、真城が不審げに眉を歪めると、窓の外を指さして口を開いた。
「なぁ? 男子チア部って、文化部なん?」
「は? 何言って……」
黒江は真城が指さした方向を見た。
そこでは、演劇部と男子チア部が合同で何かしていた。
杉田や菩薩先輩、八雲の姿もある。
生徒会のメンバーまで一緒にいるので、回りで運動部の連中がワイワイ活動していても、校舎の窓から見下ろした時に悪目立ちしていた。
「なんだろな?」
黒江も首を傾げた。
演劇部が手前で何かを叫びながら動いている後ろで、男子チア部が踊っている。
生徒会のメンバーは、それを指さしながら頷いたり、指示を出したりしているようだ。
「ああ、男子チア部の奴らの踊り、なんかムカつく~」
真城が天を仰いで両腕の肘を折り、両手を胸のあたり上げて指をワサワサと動かしている。
「確かに~、ムカつく~。なんだろうなアレ? 力抜いてますよ? みたいに見せ掛けといて体幹しっかりしすぎてるヤツ」
「妙に姿勢のいいタコみたいな感じ?」
「ハハハッ。なんだよそれ~」
黒江が腹を抱えて笑う横で、真城は真顔に戻って両腕を組むと「文化部、とは?」とつぶやきながらは首を傾げた。
そこに坂下が通りかかって声をかけてきた。
「何してんのお前ら……ああ、アレね。この学校の文化祭って、特殊でさー。終わりのほうで生徒会とかの引き継ぎのための茶番劇があるらしいよ」
真城は坂下の方を見るために、首を反対側に傾けながらグリンと後ろを振り返って聞く。
「茶番劇?」
「詳細は当日をお楽しみに、だとさ。杉田が関わっているらしい」
坂下は肩をすくめ両腕の肘を脇に寄せながら両手のひらを天に向けて開いた。
「ふーん」
真城はグルンと首を回して校庭に視線をやった。
陸の孤島学園は全寮制の特殊な学校だ。
一年生として入学してきたからといって三年生として卒業していくとは限らない。
黒江はなんとなくつぶやく。
「引継ぎも大変だな? 三年生までいるかどうかも分からない学校の生徒会なんて、入ってくれる人を探すだけでも大変じゃないの?」
「そーそー。でも生徒会とか入ると内申書はよくなるらしくってさー」
坂下の情報に、真城と黒江はどよめいた。
「おおー」
「内申書ー」
真城は目を輝かせた。
「それは魅力的だな。内申書。オレ、大学進学で失敗したくないっ!」
「真城でも、そんなこと考えるだ」
黒江が意外そうに言うと、真城は不満そうに口を尖らせた。
「そりゃ考えるだろ? 自分の将来は大事だぞ?」
納得いかなさそうに首を傾げる黒江の隣で、坂下はウンウンと頷いた。
「おれの親は国内転勤組だから、割と普通だけどさ。親が海外駐在組とか特殊じゃん? 国内の大学へ行くにしても、海外の大学へ行くにしても、内申書は大事だよね」
真城はウンウンと頷いて力強く言う。
「そうそう。できれば推薦決めたいっ! 一般入試めんどくさい!」
「そこかー!」
合点のいった黒江は両手を叩いて声を上げて笑った。
「おいっ、そこまで笑わなくても……」
「うんうん、真城らしくていいよ、いいよ」
坂下は笑いながら真城の頭をグリグリと撫でた。
すると黒江はキッと坂下を睨み、真城の体を自分の方へと引き寄せて、その茶色がかった猫っ毛の中に手を突っ込んでグリグリと撫でた。
満足げな笑みを浮かべている黒江に、坂下は若干引いた。




