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煌めくままに恋しよう  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第16話 グダグダのお盆休みも楽しいぞ

 寮母のいない一日目は新鮮だ。

 二日目は何となく慣れたような気分になるが、手際が良いという名の雑さが加わっているだけで、実際は洗濯物の端がキチンと伸びいてなかったり、使うはずの食材が中途半端に残ったりなど不可解なことが起き始める。

 三日目になると寮母の名前を叫びながら泣く者が続出する、といわれていた。


「ケケケッ。冗談だろ? 寮母さんのいない夏休みくらい楽勝じゃん」


 真城も初日はご機嫌だった。

 晩御飯は焼肉で、自分の分は自分で焼くというものだ。

 真城は肉を少々焦がしたが、どうということはなく美味しくいただいた。

 黒江や坂下も大差はない。


 問題は出来上がった料理ではなく、片付けだ。

 焦げたフライパンやら飛び散った油やらを処理する作業が加わった。


「料理って準備と片付けが面倒だな?」

「そうだな」


 真城と坂下はブツブツ言いながら片付ける。

 黒江は黙々と片付けて、佐藤はちゃらけていかにサボるのかに青春をかけていた。


 なんとなく疲れた真城たちは、なんとなく早く就寝した。


 翌日。

 真城たちの朝は、ご飯を炊くところから始まった。

 一年生が食事朝食当番だったからだ。

 真城と黒江は米を炊く係に任命された。


 真城は誰にともなく聞く。

 

「米って研げばいいんだよな?」

「ああ。洗剤で洗ったりするのは禁止だ」

「そりゃそうだろ。洗剤は釜を洗うのに使うんだ」


 黒江が答えると、真城は変な人を見る表情で彼を見た。

 微妙な空気になったところで、佐藤が冷蔵庫前から騒ぐ。


「今朝はどうする? 味噌汁とか作るの面倒臭くない?」

「そうだなー。何がある?」


 佐藤の横から坂下が冷蔵庫を覗き込む。


「納豆と、卵はありまーす」

「おー、それなら卵かけご飯とかは?」


 坂下が叫ぶと黒江が提案した。

 佐藤がコクコクと頷いていると後ろから「いいねー」と声が響いた。

 クルンと振り向くと、御菩薩池(みぞろけ)が経っていた。

 一個上の先輩は菩薩(ぼさつ)先輩と呼ばれている先輩で、包容力を感じさせる笑顔が基本の二年生だ。


「「「「おはようございます」」」」


 真城たちが元気に挨拶すると、菩薩先輩は後光を感じさせる笑顔で聞いてきた。


「おはよー。様子を見に来たんだけど、問題ない?」

「「「「はいっ!」」」」


 元気に答える真城たちに、菩薩先輩が「ほんとかなー?」と小さく呟いてウフフと笑った。


「頑張りすぎなくていいからね。食べられれば、皆テキトーにするから」

「「「「はーい」」」」


 元気に答える真城たちは、最初からテキトーにするつもりだった。

 よって二日目の朝は、ご飯を炊いた以外は、テキトーに皆さんお好きなものをどうぞバイキングになった。

 

 食事当番とは、食器を洗ったり、食堂を片付けたりするところまでがセットである。

 真城たちの朝は、食器洗いで終わった。

 

 昼食はそうめんである。

 冷蔵庫にあった薬味を適当に刻んで出し、濃縮めんつゆを水で割って氷を入れて置いておく。

 あとはそうめんを茹でれば終わりだ。


「めんつゆ薄すぎ~。氷で薄まってる~」

「そうめん追加~」

「そうめんまだ~?」

「うわっ、そうめん伸びてんじゃん」


 上級生が何か言っているのを聞きながら、そうめんを茹でて、氷で〆て、そうめんを茹でて、氷で〆て……。

 食器を洗って真城たちの昼は終わった。


 午後は少しだけ屋上リゾートを楽しみ、英気を養った真城たちは、夕食作りに立ち向かう。

 夕食はカレーだ。

 ご飯をたっぷり炊いて、大鍋でカレーを作った。

 生野菜を刻んだだけのサラダも作った。


 カレーは真城が少しだけ焦がしてしまったが完食され、サラダは残った。

 食堂を片付け終わった真城たちは無口になり、その夜は早く就寝した。


 三日目の朝は、三年生二年生合同による朝闇鍋という謎メニューだった。

 主食は餅だ。


「朝一番からコレか……」

「文句があるなら食べなくていいぞー」


 なんとなくつぶやいた真城に、上級生の声が飛んでくる。


「これは残せないやつ―」


 真城はケラケラ笑って、頑張って食べた。

 黒江や坂下、佐藤もそれぞれに頑張って食べた。

 感想は、面白い味、だ。

 

「野菜と肉くらいしか見当たらないのに、なぜこの味……」


 真城は首を傾げる。


「何の味だろう? おでんのような、そうでもないような、醤油味の、なんか……」


 黒江も悩んでいる。


「豚肉と、豆腐と、ニンジンと……あとはなんだ?」


 坂下が分析する横で、佐藤は「美味い、美味い」と言いながら食べていた。

 朝食を終えた一同は、洗濯で午前中を終えた。


 昼は昼闇鍋という謎メニューだった。

 主食はうどんだ。

 

「これさ……朝の残りじゃない?」


 真城がそう言うと、黒江がコクコクと頷いた。


「うどんと、豚肉と、豆腐と、ニンジンと……まぁ、不味くはない」


 坂下が分析する横で、佐藤は「美味い、美味い、このカレーうどん美味い」と言いながら食べていた。


 午後は皆、妙に無口な屋上リゾートでまったりした。

 

 夜は夜闇鍋という謎メニューだった。

 主食は、焼きおにぎりだ。


「中身……」


 真城は鍋の中身を見て呟いた。


「やばくないか?」


 黒江もビビっている。

 鍋の中身は朝食と同じに見えたからだ。


「ヤバイかな」


 坂下も怯える。

 食材は同じでよいとしても、鍋の汁が使い回しでは、衛生状態に問題があるように思えたからだ。


「美味いな、コレ―」


 佐藤は美味そうに、焼きおにぎりばかり食べていた。

 その夜は皆、微妙にトイレの時間が長かった。


 翌朝の朝食は有志諸君で作られた。

 バイキングスタイルの食堂には、パンとお湯、それとティーバッグやインスタントコーヒーだけが並んでいた。


「早く帰ってきて寮母さん!」


 誰ともなく上げた叫びが、シュプレヒコールとなって寮生の雄叫びとなり始めた頃、第一寮母が無事に帰還を果たし、彼らは寮を揺らして歓喜の声を上げるのだった。

 そしていつもの日常が始まる――――


「寮母さんのいないお盆休みも楽しかったな」

「だなー」


 どの口が言っていやがるお前ら、とでも言いたげな黒江の視線を浴びながら、なーんも気にしない真城と坂下はキャッキャとはしゃぎながら寮母の作った夕食を口にするのだった。

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