第14話 屋上リゾート
こんな暑い日の日中に屋上へ来るヤツなんて、馬鹿なんじゃなかったのか?
屋上への入り口を開けた真城、黒江、坂下の一行は、目の前へ広がる光景に目を見開いて口をあんぐりと開けた。
そこに陽気な声が響く。
「やっほー庶民の諸君。リゾートへようこそ」
そこには白いパラソルの下に白いビーチチェアを置いて寝そべるように座っている同級生、佐藤健司の姿があった。
ちなみに身に着けているのは、紺色のスクール水着のみだ。
「おまっ……正気か?」
「正気? 知らない子ですね」
黒江が呆れて突っ込むと、佐藤は澄まして答えた。
そしてビーチチェアの脇に置いた小さなテーブルの上に置いた炭酸ジュースの瓶を持つと、ストローでチューとジュースを飲む。
細い、というよりガリガリで色白な佐藤は、校内で一二を争うお調子者だ。
坂下は屋上に持ち込まれた品々をじろじろと眺めながら口を開く。
「佐藤~、お前、コレを1人で屋上へ運んだのか?」
「うん」
佐藤の周りには青や赤のビーチパラソルに白いビーチチェア、テーブルなどが並べられていた。
大きなクーラーボックスのなかにはたっぷりの氷が入っていて、そこに瓶入りの飲料が何本か突き刺すように並んでいる。
黒江はキュッと目じりを吊り上げて言う。
「ジュースは購買の中か食堂でしか飲んじゃいけないんだぞ」
「堅いぞ、黒江。男子たるもの堅くあるべきはそこじゃない」
佐藤はジュジューと音を立ててジュースを飲んだ。
「いいなー、佐藤。リゾートじゃん」
「うん、リゾートだ! おれもリゾートしたいっ!」
真城と坂下は目を輝かせて佐藤にねだる。
「ふふふ。仕方ないな。君たちもリゾートしたまえ」
佐藤が許可を出すと、真城と坂下は歓喜の声を上げてビーチチェアへと寝そべった。
「リゾートするってなんだよ」
黒江はブツブツいいながらビーチチェアに座った。
「ふふふ。黒江。お前には足りていないものがある」
「なんだよ?」
「コレだ!!!」
佐藤は自信満々にストローの刺さった炭酸ジュースの瓶を差し出す。
黒江は大人しく、支給されたジュースの瓶を受け取った。
それから数分。
その気になりやすい男子高校生たちは、屋上リゾートを楽しんでいた。
「なぁ、黒江? リゾートだと思わない?」
「ああ、そうだな真城。この熱風は、まさにリゾートだ」
黒江は、隣のビーチチェアに寝そべってご機嫌でジュースをストローでチューチュー吸っている真城を見た。
真城は反対隣りに座っている坂下と何か話している。
黒江は何となく右手を真城に向かって伸ばす。
伸ばした右手が真城の左手をそっとつかまえた。
それに気付いた真城が黒江を振り返り、ニカッと笑って黒江の手をギュッと握る。
ここは天国だな、と黒江は思った。




