第12話 洗濯だってしちゃうもんね
「失敗したけどさー、自分で作った卵焼きは、なんだかんだで美味かったな?」
「ああ、そうだな」
真城が上機嫌で言う横で、黒江も機嫌よさげだ。
坂下も一緒になって食堂から寮の部屋へと戻る。
寮母がいないということは、自分たちのことは自分たちでしなければいけないということだ。
今日も朝から空は晴れ渡っている。
爽やかな夏の朝というよりも、煮えたぎる鍋の湯気を浴びているような感じだが、鍋の中ではないので辛うじてセーフだ。
少なくとも、洗濯物はよく乾きそうである。
真城は楽しそうに言う。
「オレ、洗濯するの初めてかも~」
「おれはやったことあるぅ~」
得意げな坂下に、真城は尊敬の目を向けた。
「おお、スゲェな、坂下。大人ぁ~」
「ふふ、真城。お前も今日から大人になっちゃうな♪」
きゃらきゃらと楽しそうに絡む2人の後ろから、黒江はトコトコとついていった。
「じゃ、洗濯物持ってココに集合な」
「ああ」
真城の言葉に黒江は頷く。
坂下に部屋を代われと迫った黒江の部屋は、真城たちの隣だ。
室内に入った2組は、それぞれの洗濯ものをカゴに抱えて洗濯室へと向かった。
「初めて来たけど、洗濯室ってこんななんだ」
「そうだなー」
普段はマッチョな寮母さんたちが使っている洗濯室は、やたらと大きく見える。
大型の洗濯機に乾燥機、洗濯物を畳む台などがズラッと並んでいるし、綺麗だ。
「これさー、洗濯機がデカすぎて1人分ずつ洗ったら無駄なんじゃない」
洗濯機をまじまじと眺めていた真城が言うと黒江も頷いた。
「だったら一気に三人分洗っちゃおうか?」
坂下の提案に他の2人も従うことにした。
「色柄物は大丈夫か?」
「そんなお洒落着みたいのはない」
「俺も大丈夫だ」
坂下に言われて自分の洗濯物をチェックした真城は頷いた。
黒江もガサゴソと洗濯物を見ていたが、色柄物はなかったようだ。
「買い物にもいけねーし。洗いざらしのTシャツとかズボンしかねーな」
黒江はネットの中に洗濯ものをセットしながら言った。
「パンツは大丈夫か、パンツは。時々、とんでもねー悪さをするぞ、奴ら」
「えー」
坂下に言われて、真城は自分のパンツをチェックする。
「別に大丈夫そうだけど」
「そっちのが大丈夫じゃない」
「へ?」
坂下がアゴで差す先を見れば、黒江が真城のパンツをガン見していた。
「キャーヤダぁ、黒江くぅ~ん。ワタシのパンツ、見ないでぇ~」
真城が女子風にクネクネしながらコントの体勢に入るも、黒江の目はマジだ。
「シャレになんねー。黒江、お前はその顔止めろ、変態めっ。トウッ!」
見るに堪えないマジさが坂下の怒りを買い、黒江は怒りの飛び蹴りをお見舞いされた。
真城は後ろで繰り広げられるイザコザを丸っと無視して自分の作業を進める。
「洗濯物は入れおわったぞー。洗剤はどうするんだー」
「あー、それはなー……」
真城に言われて坂下がいそいそと洗剤をセットして、洗濯機を回した。
なんだかんだで洗濯は無事終わり、真城たちは洗い終わった洗濯物を持って表へと出る。
「うわっ、あっちぃ~」
悲鳴を上げる真城の後ろで坂下はケタケタ笑った。
黒江は空を見上げた。
「これならすぐに乾きそうだな」
「うん」
「そうだね」
黒江の言葉に真城と坂下はコクンと頷く。
なんだかんだでキチンと干された衣類たちは、夏の熱風を浴びてパタパタと揺れていた。




