白馬には乗れない
全速力で走る。カズにはハゲが動いたって言っておいたから後の事は大丈夫だろう。それより、ゆきしろだ。
殴られたりしてねーか?俺の恋人だからって襲われてんじゃねーだろな?
ようやく辿り着いた倉庫のドアを蹴破り、乗り込めば目に入ったのは大勢の男達の円の中心で、ハゲ頭に組み敷かれてる、ゆきしろの姿。
「たかあき、さっ」
ホッとしたように呟かれた名前に
ポロリ、と目から零れた涙に
破られた胸元の意味に
ブチリとなにかが切れた。
視界が赤く染まったみたいに感じた。
ハゲに飛び蹴りをくらわせて、ゆきしろを抱き抱え壁に移動した後はがむしゃらに暴れた。
この腹の底で渦巻くドロドロした感情はなんだ?
なんで、こんなに腹が立つ?
ハゲの息の根を止めなきゃ気が済まない程に…
「藤堂!そこまでだ!
後は俺たち風紀が取り締まる!」
現れたのは風紀委員。
だが、止まれない。まだ、ヤツは動いてる。
ゆきしろに触った汚い手をへし折ってやる。
「事情は聞いたがやり過ぎた!」
奴らを庇うように割って入ってきた男の胸ぐらを掴み、殴ってやろうかと痛む拳を握れば
「たかあきさん」
聞き慣れた声で名を呼ばれ、動きが止まる。
声の方を見れば、破られた胸元を握りしめ、潤んだ瞳で俺を見るゆきしろがいて。
「ゆきしろっ」
駆け寄って身体を見る
「ケガは?痛いとこねぇか?」
「大丈夫ですから、落ち着いてください」
「っ!ごめん、ごめんな、俺のせいで」
「かまいません。それに、貴方は来て、くれたじゃないですか」
いつもの微笑みのゆきしろ。
あの時の俺みたいな目をしてないのに少し安心して、息を吐く。
ギュウと、自分より細い身体を抱きしめる。
「ごめんな」
「鷹明さん?私は大丈夫ですよ?」
「うん。でも、ごめん、ごめんゆきしろ」
「?」
自分の中にある感情をようやく認める。
ゆきしろが好きだ。
恋人役のせいでこんな事巻き込んだのに、俺はゆきしろを本気で好きだ!
***【鷹は鷹からしか生まれない】
正月や休みでさえ、電話も寄越さない末っ子からのプライベートコール。
年甲斐もなく、慌ててボタンを押した
「もしもし?」
「…親父?鷹明だけど」
久しぶりの会話にあちらも緊張しているらしい、
「ああ。久しぶりだな。変わりはないか?」
「ああ。親父は…体、大丈夫か?」
こいつに調子を聞かれる日が来ようとは。
情けないが涙が出そうだ。
「まだまだ、若いヤツには負けんよ。で、なにかあったのか?」
「…頼み、があるんだ」
「なんだ?また、悪さしたのか?」
「悪さっていうか、そのツケ、だな。俺に恨みあるやつが人質とってケンカ売ってきて」
はて?今まで散々ケンカやらしてきたが人質なんぞになる相手などいなかった筈だが。
「なんだ?お前、人質にされるくらい大切な相手が出来たのか?」
「…ああ」
「そうか、誰かを大切に思えるようになって良かった」
あのまま、他人を拒絶して生きていくのではないかと心配していたが。心を開ける相手が出来たのか。
「相手はどんな人なんだ?」
「芯が強くて凛としたやつ。後、料理上手」
「そうか。素敵な人なようだな…人質と言ったが怪我は?無事なのか?」
「怪我とかはない。なんとか間に合った。でも…襲われてショックだったと思う」
「それはお前が一番分かって支えてやれるだろう?で?ワシにわざわざ話して来たのはその不届き者の事か?」
「ああ。ヤツらがいたら、あいつが安心できないだろうから排除したい。」
「ただでとは、いかんぞ?」
「分かってる!散々迷惑かけてきたんだ。なんでもする」
「なら、夏休みは家に帰ってこい。母さんも会いたがってるぞ」
「っ!分かった」
「ああ、恋人も連れて来いよ?」
「は?いきなり何言い出すんだよ!親に会わすとか、んな関係じゃねーし!」
「まあ、焦る事はないか。
不届き者に関しては調べ次第すぐに血祭りにあげてやる。人ん家の嫁に手出したんだ、地獄見せてやる」
「は?そいつ男だぞ!?」
「ああ。だが、ワシはお前が選んだ相手なら男でも構わん。大事にしろ。そうなったら電話くらい寄越せ」
「…ああ…ありがと、父さん。」
久しぶりの息子からの電話
大切な相手が出来たこと
久しぶりの『父さん』
「歳のせいかねぇ?」
伝う涙が止められず手で隠す。
「あなた?どうしたの?」
「今鷹明から電話があってな」
「!?鷹明から?なんて?何かあったの?」
「大切な相手が出来たんだと。守りたいから力貸してくれとよ」
「まあ!まあ!!」
「んなもんだから、ちょっと出てくる」
「ええ、いってらっしゃい」
「ああ、夏休み、久しぶりに家族が揃えそうだ。できるだけ予定を空けといてくれ」
「ええ!あぁ、なんて事かしら!今から楽しみだわ!」
***サイド雪白
私を襲ったヤツらは停学の予定でしたが、退学になりました。
なんでも、反抗期でどうしようもなかった三男が父親に頭を下げて、根回ししたそうです。
私が襲われ、鷹明さんが助けに来た事。藤堂家がヤツらの家に報復し、ヤツらが退学になった事が少女漫画のように校内新聞に載り、家の力を使わないとしていた藤堂が力を使うほどに私を大切にしているのだと印象づけました。
お陰でイヤがらせがめっきり減り有難い限りです。
後日、何故そこまで?と聞けば鷹明さんは
「ゆきしろに嫌な思いさせたやつらが学校にいるのを俺が許せねえ。むしろあのハゲはこの世から消してぇ!」
などと言われ、空いた口が塞がらない事態になりました。
頭、打ちました?大丈夫ですか??




