お姫様はいつも攫われる
いかにもなガラの悪い男達に
「あんたが、藤堂の『女』?」
と、顔を覗き込まれる。
交際報道に本校舎で彼が抱きついたこと、毎日(弁当を取りに)会いにくる事から、噂ではなく本当に恋人だと納得したのでしょう。
「な、なんですか?」
怯えて見せれば、男達はニヤニヤと笑った。
「俺らの事はいーからさぁ?あんた藤堂と付き合ってんだって?」
「はい、一応」
「なら、ちょーっと面貸てよ?おとなしくしてくれんなら、痛い真似はしねーからよぉ?」
ガシリと手首が掴まれる。
ビクリと震える芝居をして眉を寄せれば、男達は油断したようだ。
「何?あいつこんな地味で弱っちいのが好みな訳?」
「いおりちゃんの誘いは拒否といて、コレとはねー。趣味悪っ」
いおり。確か、以前藤堂を囲んでいた、化粧組にいた生徒の名前。
なんだ、奴の差し金か?なら被害は私ではないですか、冗談じゃない。
「あ、あのっ」
「あ?」
「痛いですっ、ちゃんと歩きますからっ力緩めてください」
訴えれば、軽く握る程度まで力が抜かれた。
「ああ、わりぃ、わりぃ」
「お前、力強えーんだから手加減してやれよー」
「大事な人質だからな」
「にしても、従順だな」
「普段から力で組み敷いてんじゃねーの?」
あ、やはり鷹明さん目当てですか?
しかし、私の身の安全が確定した訳ではありませんから、気が抜けませんね。
多少ボコって見せて誘いだす可能性も有りですね。貞操の危機だけは勘弁して欲しいですが。
連れて来られたのは離れた位置にある古い倉庫。なんてベタ過ぎますね。
「連れてきたぜー?」
倉庫の中には不良ばかり。
あ、真ん中には、確か藤堂に負けた前のボスだった三年生。
「ヤケに早かったな」
「お姫様が協力的だったんで」
「ほぉ~お?」
じっとり、舐める様ないやらしい視線に本気で体を震わせる。
「まさか、あいつがこんなのが好みとはなぁ」
「いおりちゃんやユキちゃんのが可愛いし遊ぶのも楽そーなのに」
好き勝手話す男達に怯えるふりをして周りの男を確認していると
鞄を漁っていた男が近寄ってきた。
「ケータイ。持ってんだろ?」
ポケットから出し差し出せば
「お前あいつの番号知ってるよな?」
そりゃあ、一応お付き合いしてる仲ですから連絡先は交換してますよ。
ピンク頭が率先して交換しやがりましたからね
「電話かけろ。出たらよこせ」
「は、はい」
初めてかける電話がコレとは少々悲しいですね。
3コール程でコール音が止まる
「ゆきしろ?どうした?」
相手の声を確認して、目の前の男に差し出すと横の男が電話を奪った
「もしもーし?藤堂くーん?」
「誰だ、テメー?」
「あらん、忘れたのー?テメーにやられた『オーガ』だよ」
「ああ、ハゲ頭んとこか。ゆきしろのケータイっー事は人質かよ?ダセーな」
「あんまり、ふざけた事ぬかすと大事な恋人ちゃんが可哀想な目にあうぜ?」
「…何が、目的だ」
「簡単な話だ。校舎北の倉庫に1人で来な。落とし前つけてやる」
「人質使ってリンチかよ、下衆が。まあ、いい。行ってやる。ゆきしろには手だすなよ」
「あんまり、おせーと分からねーがなあ?」
スピーカーで話されたので内容は全て把握してしまいました。
私の立場ヤバくないですか?
あの野郎、恋人にはどんな話すんだろな?と弱点探しでもしたいのでしょう。携帯を見ていた男が私を見て同情した目を向けました。周りのやつらがどうした?と聞くほどの。
「いや、だって、コレ」
と、ピンク頭が「ちょっとくらい恋人らしいことしなきゃね!」とわざわざ用意したラブラブカップル(俺様で束縛的な藤堂と健気に尽くす従順な私)のメールを読み上げると気温が下がる。
そして、さらに「げ、マジで?」と周りの奴らに見せ出す。
「どうした?」
あまりの騒ぎにボスすら気にされましたよ
「あ、いえ、こいつのケータイに、通話相手とか居場所とか全部監視するアプリが入ってたもんで」
その場の雰囲気が、更に冷えました。
「え、何?藤堂が入れたの?」
「藤堂ってそんなヤンデレ?」
「そんなに、そいつが、好きって事か?」
「え?あ、ああ。そうなるッスね」
「なら、他人の手垢がつきゃ悔しがるだろうなぁ?」
ニヤリと下卑びた顔。
やっぱり、そうなりましたか。
最初から、この男は私をいかがわしい目で見てましたもんね。
敵なのになんと同情的な視線ばかりでしょうか。
私のひ弱さは目に見る限り明らか
先のメール内容やアプリの件で、私が藤堂に付き合わされ、束縛されていると分かった上でのこの状況。
私を不憫に思わない訳ないですよね?
屈強なスキンヘッドの男に組み敷かれ、やめてくださいと哀願する華奢な少年。
わぁ、なんて、いやらしい本みたいな状況でしょうか。
演技しながら、攻撃しないよう、ギリギリの力で抵抗するのは骨が折れます。
早く来てくれませんかね?
必死で溜めてる涙が零れそうです。
そしてコンクリートの床が痛いです!
「ゆきしろぉっ!」
今、ドア外れませんでした?




