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愛の逃避行

「藤堂さんに告白されまして、お付き合いする事になりました」

なんて自分から言える訳もないので濁しましたが、週末明けには、私が藤堂鷹明さんと交際していると言う噂が号外でもって報道され、話しが飛び交うようになっていました。

視線が痛いです。


「藤堂様ったら、僕たちの方が可愛いのにっ!」

「あんな地味なののドコがいいの?」

なんていう事は、予想していた通りですね。

まあ、彼、見た目は良いですもんね。


ん?なんだか廊下が何か騒がしいですね?

おや、あれは…



*** サイド鷹明


(クソッ、気持ち悪りぃ)

ゆきしろに会いに本校舎に入れば女みたいに小さくてなよっちい奴らが、甘ったるい香水をプンプンさせて、化粧まみれの顔で迫ってくる。

拷問だ。

囲まれるなら、そいつらの背後でガン飛ばしてくる野郎共の方にして欲しい。


「藤堂さまぁ、どうしてあの子なんですかぁ」

「僕たちの方が、藤堂さまを喜ばせて差し上げられます!」


お前らみたいな見た目な地点で俺は嬉しくなんかねぇ!

(あー、クソッ!動けねぇ!っかゆきしろの教室どこだよ?)

邪魔するチビ共を蹴散らそうかと考えた瞬間、ゆきしろの声がした。


「鷹明さん?お昼休みはまだですよ?」


探してた、ゆきしろの姿が目に入るだけで固く握り締めてた拳から少し力が抜けたのを感じて、少し自分が情けなくなる。

「ゆきしろっ」

思わず駆け寄り抱きつけば周りがギャーギャーうるさい。

今は臭いから逃げるのが先決だ!


「どうしたんです?本校舎にくるなんて」

いきなりの俺の行動にも動じず、ポンポンと背を叩いてくれる寛大さに涙が出そうだ。


「ちょっとアンタ!藤堂様に馴れ馴れしくしないでよ!アンタみたいなブス認めないんだからね!」

「今は、僕たちが藤堂様とお話ししてるんだよ!邪魔しないでよ!」


ゆきしろの何処が、ブスだと!?

顔は美人だし、性格だって良いぞ?

服だってアイロンがキッチリかかってて洗剤の良い匂いしかしないぞ?

チビ共が近寄って囲むせいで、せっかく逃げれた臭いが鼻につく。

っか、やべ、気分悪りい。


「どうぞ?」

ナイスタイミングで差し出されたハンカチを迷うことなく受けとり鼻を塞ぐ。

ゆきしろのハンカチは洗剤の匂いしかしなくて安心できる。

やべー、本当、ゆきしろ様々だ。


「皆さんが、私より、見目が良く、鷹明さんに好意をお持ちなのは分かりますが、廊下で騒ぐのは止した方がよろしいですよ?後、いくら良い香でも、付けすぎは気分を害します。鷹明さんは甘い香水がお嫌いなので、控えて差し上げてください。」


ゆきしろは、やつらの反論を聞く事なく、俺の手を引いて外に向かう。

進んでいくのは中庭…じゃなくて校舎裏の雑木林。

おいおい、俺みたいなのとこんなとこ入ったら、普通恐喝か暴行だぞ、オイ!


「…気分はどうですか」

「あ、あぁ。おかげでだいぶマシ…っか俺、お前に香水苦手って教えたか?」

「いいえ。ただ、何度も鼻を触ってたから、そうなのかなぁ、と。ま、アレで控えて来ないなら次から、臭いから近寄るな!って言えますよ」


なんだよ、それ。

(俺の事を考えてくれたのか?)


獣道が急に開けると、古ぼけた四阿と小ぶりな池が姿を表した。

「先代の理事長の趣味で作られたそうなんですが、今は放置。校舎からは離れてて見えもしませんが来るまでも大変なので悪い事をする人も知らない、穴場ですよ?」

「確かに、助けこねーな。声も届かねーし、ケータイ…もダメとは」

「ゆっくりするには良いでしょう?」

「ベンチは使えんだな」

「ええ、たまに手入れしてますから」

「あ?なんだよ、ココゆきしろのテリトリーなのか?」

「はい。教えたのは鷹明さんだけですから、レアですよ?」

珍しく笑いながらそんな事言われたら、ちょっと嬉しくなるじゃねーか。

「…良かったのかよ?俺が不良組連れてくっかも知れねーのに」

「それはどうでしょう?貴方だって、1人でゆっくりしたい時はあるでしょうし、それに」

「…それに?」

「道、覚えていないでしょう?」

「ぅわっ、ゆきしろ、テメー策士だな!学校で遭難とかマジカッコ悪りぃ!」

「ふふふ、あ、そう言えば、何故あんな所に来たんです?」

「…。弁当…本当に作ってくれたか、気に、なって」


ガキみてーで恥ずかしい…ぜってー顔赤いわ俺。

ゆきしろもびっくりしてんじゃねーか

「…それは、それは。そうですか、心待ちにして貰えて嬉しいです」

「…弁当作ってもらうなんて、初めてなんだよっ!悪りぃか!」

「いえいえ。初めてのお弁当が私ので、すみませんが。卵焼きは一つ丸々入れてきました」

「マジで?」

「はい、鷹明さんの分」

ゆきしろのより倍はある弁当箱が渡される。

「こんなデカイ箱、持ってたのか?」

「隣接のスーパーで買いました。本当、なんでも置いてるものですねぇ」

「え?」

「折角のお弁当なのにタッパーは味気ないでしょう。それで足りそうですか?」

「あ、ああ。…サンキュな」

「構いませんよ、仮にも『お付き合い』してる間柄じゃないですか」

「っ!」

ああ、そうか、ゆきしろは俺に付き合わされてるだけだったよな。

ゆきしろが怯えたりしないから忘れかけてた。

本当の事言われただけなのになんで胸が痛いんだ?

これじゃ、まるで…


「鷹明さん?」

「あ?」

「どうしました?顔色が優れませんが」

「あ、いや、なんでもねー!」

「もしかして、以前毒でも盛られた事が?」

「いや、あ、媚薬は…いっそ毒だな」

「そんな事が」

「ああ、でも、ゆきしろはそんな事しないって思ってるぞ」

「?どこにそんな信頼要素がありました?」


首を傾げる程不思議らしい。

ああ、俺も不思議だ。

「ゆきしろは、なんっうか、本気で嫌なら嫌って言える奴だろ?」

「…私が、貴方とのお付き合いもお弁当を作るのも本当は嫌じゃない、と?」

「嫌だろうけど、しゃーねぇけど相手してやるかくらいには嫌じゃねーんじゃね?」

「まあ、当たらずも遠からずですね」

「ん、だから。俺になんかしても、ゆきしろに利益?は、ねーだろ?」

「そういう考え方なら納得です」

一つ頷いて自分の弁当を取り出し始めたから、ちょっと早いけどやることないし腹減ったから食お!

開けたら、黄色い甘い卵焼きにウインナー。唐揚げにブロッコリー、ミートボールに野菜の煮物。ご飯には梅干し。

ガキの頃から憧れた普通の手作りの弁当。

柄にもなく浮かれてしまう。

まずは卵焼き、うん。いつもの味だ。

「すんげー美味い!こんな、普通の弁当食いたかったんだ!ありがとな!」

「そんなに喜んでいただけるとは思いませんでした」

「お袋は料理作れねーから、手作り弁当って憧れてたんだよな」

「そうですか」

「材料費とか払うから、また作ってくれないか?」

「別に金銭は必要ありません。ただ…」

「なんだ?」

「残さず食べてください」

「あ?こんな美味いのに残せねーよ!もう一つあっても食っちまうって!ゆきしろは優しいよな、ハハ!」


*** サイド雪白


子どものように、嬉しいと笑う姿に心が揺れた。

睨んでばかりのくせにそんな顔出来るんですね。

急にそんなにコロリと態度を変えられたら困ってしまいます。


なんでしょうか、凶暴な動物に餌付けして懐かれたらこんな感じなんですかね?


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