茨城にいざ参る!
8月某日。
迎えに行くと行ったけれど自分一人で出向くと言うので住所を教えれば、約束ね時間の20分前にもうすぐ着くとメールがきた。
門で待っていたらビシッとスーツ姿で現れました。
この暑いのに、何故?ああ、謝罪しに来てるからですか。真面目ですね。不良の親玉なのに。
久しぶりに見る鷹明さんは、見慣れない姿のせいか、大人びて見えます
「梓?」
「ああ、すみません。あまりに素敵なので見惚れてしまいました。」
「っ!それは、嬉しいけど、熱いから早く影に入ろうぜ?」
「あ、そうですね。どうぞ」
「すんげー日本家屋なんだな。梓の着物姿がすげーしっくりくるわ」
「ちょうど、午前に家族でお茶を頂いてましたので。普段は洋服ですよ」
「お茶…そんな上品なもん出来ねー」
「点てるのは難しいですが、頂くだけなら簡単ですよ?今度お教えしましょうか?」
「…ああ、今後、必要になりそうだから、頼む」
「分かりました。さ、どうぞ」
***
「お邪魔します」
梓の後に着いて家の中へ。
静かだな。使用人もいないのか?
連れて行かれたのは随分と奥の部屋。
膝を付くと襖に向かって「梓です。藤堂さんをお連れしました」と声をかける。
あ、俺も座らなきゃか!
「失礼します」
とりあえず、頭を下げて待つ。
「どうぞ、お入りになって」
女性の声に顔を上げると、妙齢の女性。(着物の柄から母親だろう)がニコニコとこちらを見ていた。
その横には今にも飛びかかって来そうな怒り顔の若い男。これがお兄さんか。
その横には、明るめの髪をした気の強そうなお姉さんと、大和撫子!って感じの梓に似たお姉さんが座ってる。
「失礼します」
ともう一度頭を下げて、中へ入る。
座布団には座らないで膝を付く。
「本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」
頭を下げる。
「あらあら、お呼びしたのはこちらなのよ?そんなに畏まらないでちょうだい。さ、お座りになって」
母親らしき人がそう言ってコロコロ笑う。
でも、俺には先に言わなきゃいけない事がある。
「俺のせいで、梓さんを危ない目に合わせて、すいませんでした!」
***
土下座です。リアルに土下座です。
家族を前に、横に私がいる状態で土下座されると、なにやら
「まるで、結婚のお許しをもらいにきたみたいねぇ」
「なっ!梓は嫁にやらんぞぉ!」
「柊さん、落ち着いてね?
ねぇ鷹明さん?ケンカの事なんかは梓から聞いてるわ。貴方はちゃんと一人で梓を助けてくれた。梓も無事だし、あんまり気にしないで頂戴?」
「…ありがとうございます」
「ふふ、お礼が言いたいのはこちらよ?私にしてみたら、梓さんが仮とはいえ恋人を連れて来てくれたなんて夢みたいだもの」
「そ、それこそ本当にすみません!」
「あらあら。貴方にとって梓との縁はすまないこと?」
「!そんな事ないです!」
「なら、謝らないでちょうだい?傷物にされたなら分かるけれどそうじゃないのだから」
「は、はあ」
「ね?鷹明さんが思う何倍も母たちは気にしていませんよ。分かったでしょ?」
「あ、ああ。許してもらえて何よりだ」
ホッとしたように表情を緩めた。
「俺は許してないぞ!」
「柊兄さんは黙ってて」
「酷いぞ棗!」
「聞いてた話と違って、中身のある良い男じゃない!」
「本当ねぇ結婚式はいつかしら~」
「その前に結納ねー」
「顔合わせでしょ」
「姉さん達。そんな話はしていません」
「あら、つれない」
「そうよねぇ、まだ学生だものねぇ」
「二人とも、高校生じゃあ、無理よぅ。大学を卒業したら顔合わせかしらぁ」
好き勝手喋る女性陣の話の内容に慌てふためく鷹明さん。可愛い。
「…梓?あのっ」
「相手しないでいいです。好き勝手話してるだけなので」
「あら、そんな寂しい事言うなら、お母さん。藤堂さんのお宅にお手紙出しちゃうわよ?」
「かまいませんよ」
「うふふ、流石、梓さん。お見通しなのね。もう、手配しちゃったけれど」
「えっ!?」
「大丈夫ですよ。私が鷹明さんのお宅を訪問するのと同じ件での話ですから」
「あ、ああ。そうなのか?なら良かった」
「ふふ」
「梓!兄さんは許さないぞ!こんな男なんか!貴様!梓を誑かしよって!私自ら成敗してくれる!そこになおれ!」
「柊兄さんは、私が選んだ方が気に入らない、と?」
「!?梓?」
「私の目が節穴だと仰るのですね。」
「い、いや、そんな事は」
「この方は、柊兄さんのように、私の危機に身一つで多勢に無勢の中助けに来れる方ですのに。」
「!そうか。私のように…君!鷹明くんと言ったな」
「え、はい」
「梓をよろしく頼む!」
「えっ!?」
「君は学園で一番強い男なのだろう?梓はこの通り、見目も良ければ物腰も柔らかく優しい子だ。不埒な輩に蹂躙される事がないよう護ってくれ!」
「はい!それに関して全力で護ってみせます!」
「本当に梓を大切にしてくれてるようだな」
「え?あ、はい。俺は梓さんを信頼できて大事にしていきたい人だと思ってます」
「…そうか」
「あらあら。なんだか良い関係を築けてるみたいねぇ」
「…仮にも私の恋人で旦那さんですから。真っ当な相手でないと話しになりませんよ」
「あら、梓さんが奥さんなの?」
「学園でも彼のご実家でも私は嫁扱いですよ」
「まぁ、あちらまで??それはそれは。私はなんの話しも聞いてないけれど」
「今度、あちらのお宅に訪問しますから、話し次第ではなんらかの話しをされるんじゃあありませんか?」
「…梓さん、貴方。」
「ええ。母さんの思う通りです」
「そう。やはり申し込みは殿方にしてもらわないと格好が付かないから、がんばってもらわないとねぇ」
「なかなかに照れ屋さんなので大変です」
「お父様もそうだったのよ?交際も結婚の申し込みも何度失敗したか」
「あの、お父様が?」
「20歳を越えたら顔合わせかしら?」
「…本当に、良いのですか?」
「家は柊さんが継いでくれるし、婚約者には柳さんが行くと言ってくれてるもの。本当に大事な人となら反対しないわ。幸い藤堂家なら文句も出ない家柄だし」
「ありがとう、ございます」
「ふふ、がんばってね?」
「はい」
「ふふ、梓さんの照れた顔が見れるなんて思わなかったわ」
「…私もですよ。」
本当に狂わしてくれる。
そんなとこも好きなんですよねぇ…




