第二十六話 トラルキル家の末路
「あ、主様! シエル様!」
無事に屋敷に帰ってきた私達の元に、エレンが血相を変えて飛んできました。
「どうかしたのか?」
「ルネ様が、目を覚まされたのです!」
「本当ですの!? エヴァン様、早く行きましょう!」
急いでルネがいる客間へと向かうと、そこにはボーっと天井を眺めているルネの痛々しい姿がありました。
「ルネ、目が覚めたのですね。私のこと、わかりますか?」
「……シエ、ル……様……」
ゆっくりと震える手を私に伸ばしてきたルネの目からは、一筋の涙が流れ落ちました。
それにつられて私の涙を流しながら、ルネの手を優しく握りました。
「本当に無事で良かったですわ……右手は動きそうですか?」
「…………」
ルネは小さく首を横に振りました。
やはり、右手はもう治らないということですのね……もっと私に力があれば……。
「私……どうして……ここは……?」
「ここは、シャルディー家の屋敷ですわ。あなたはフィルモート家の領地にある森に倒れていたところを、領民が助けて……色々あってここに運ばれてきたのですわ」
本当は、もっと詳しく事情を説明してさしあげたいけど、まだルネはぼんやりしているみたいなので、細かい話を理解出来なさそうですわ。
「ルネ殿、俺達は先程、廃虚となったトラルキル家の屋敷に行ってきた。そこで、ローラン殿が残してくれた、フィルモート家の罪の証拠を見つけたんだが……屋敷でなにがあったかまではわからなかった。もし話せるようなら、何があったか話してくれないか?」
エヴァン様のお願いに頷いたルネは、ゆっくりと話し始めてくださいました。
「私も……詳しいことは、わかりません。ローラン様が亡くなられて……屋敷が混乱していた時に……突然襲われました」
「襲われたですって? それは、一体どこの誰ですの?」
「わかりません……ただ、兵の中には……国の軍に所属している人間もいたので……おそらく、国の兵だと思います」
国の兵士? どうして国がトラルキル家の屋敷を襲って……そうですわ、確かフィルモート家は国に賄賂を渡して、その見返りとして国は悪事を見逃していたのでした。
それを、残った人達に広められるのを恐れて、襲ったのですね!
「その指示をしていた人物が……ステイシー様と……アイシャ様……でした……」
「お義母様とお姉様が!?」
「私は……ローラン様から、彼女達について少し聞いてましたが……まさか、あそこまで残忍とは……」
一体何をしたのでしょう……聞くのが怖いですが、現実から目を背けていては、何も解決しませんわ。
「お二人は、一体何を……?」
「逃げ惑う人間、立ち向かう人間……平等に亡くなるまで徹底的に……いたぶったのです。生かす条件として、口に出すのも憚れるような……おぞましいことをさせて、最後は殺した時のあの笑顔は……まさに悪魔でした」
「っ……!!」
なんですの、それ……トラルキル家の方々が、一体何をしたというんですか!? 全て、悪事を働いていたフィルモート家と国が悪いのに……!!
「トラルキル家の人間は……全員殺されました。私は、なんとか隙を突いて逃げだして、何とか川に飛び込んで……気が付いたら、どこかの岸に流れ着きました。そこからまた逃げたのですが……」
「力尽きてしまったと。それを、フィルモート家の領民が見つけたのか」
それが、トラルキル家が崩壊していた理由だったのですね……ああ、頭が……体が、怒りでどうにかなってしまいそう。
「事情はわかった。病み上がりなのに、無理をさせて申し訳ない」
「こちらこそ……看病などさせてしまって、申し訳ございません」
「人として、当然のことをしているだけだ。では、俺達はそろそろ失礼する。なにかあったら、我が家の使用人に遠慮なく声をかけてほしい。シエル、行こう」
「……はい。お大事にしてください」
私はエヴァン様に連れられて、客間を後にしました。
あのままでは、私はあそこで怒りを爆発させてしまったかもしれません。
そんなことをすれば、ルネに余計な負担をかけてしまうかもしれませんでした。話を終わらせてくれたエヴァン様には、感謝しかございません。
「人様の家族のことを、どうこう言う趣味はないが……あまりにも酷い。本当に、同じ人間のすることなのか……?」
「あの方々は、そういう人なのです。このままでは、いつ犠牲者が増えるか……早速行動をしようと思います」
「それは構わないが、何か方法があるのか?」
「はい」
お父様、お義母様、お姉様の三人への復讐。そのうちの二人への復讐方法は、頭に浮かんでおります。
ただ、この方法を取るには、協力者を得なければいけません。
「エヴァン様、以前ご協力いただいた商人様のご連絡先を、教えていただけないでしょうか?」
「彼の力をまた借りるのか?」
「厳密に言うと、彼の商人仲間とお話をしたいのですが、それを円滑に進めるために、まず彼とお話したいのです。なので、私から文書を送ろうと思った次第です」
「俺が送ろうか?」
「お気持ちは嬉しいですが、私がしたいことのためですから、私からお願いするのが筋ですわ」
「わかった。それじゃあ、一旦俺の部屋に行って、そこで教えよう」
……さあ、ここからやっと私の復讐が始まる。絶対に、今まで犠牲になってしまった方々の敵を、そして私の積年の恨みを晴らしてさしあげますわ。
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