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第二十五話 ローランの最後の言葉

「ここは、書斎のように見えるが……」


「私にも、そう見えます」


 秘密の部屋というのですから、もっと凄いものがあるのかとおもってましたが……地下だから窓が無い以外は、屋敷でも普通にありそうな、小さめの書斎ですわ。


「あっ、この絵懐かしいですわ。トラルキル家にお邪魔した時に、描いてもらったんですの」


 壁にかけられた絵には、子供の頃の私とローランお兄様が描かれておりました。


 一体どこにやってしまったのだろうと思っておりましたが、まさかここに飾ってあっただなんて、思っても見ませんでした。


「そうなのか。ん? ローラン殿は、どうして本を持っているんだ?」


「あれは、先程少しだけお話した、私達が大好きだった冒険譚の絵本ですの。私は字が読めなかったので、ローランお兄様がよく読んでくださったのです」


 ここに来るまでに、冒険譚の話をしていたら、また読みたくなってきましたわ。字が読めるようになってきた今なら、私一人でも読めますしね。


「あ、これですわ。ローランお兄様、まだ持っていてくださったのですね」


「これだけ多くの難しそうな書籍がある中、絵本を取っておくとは、よほど好きなのだな……ん? シエル、最後のページに何か挟まっていないか?」


「本当ですね。この紙はなんでしょう……?」


 小さく折りたたまれた紙には、机という一文字しか書いてありませんでした。


「机……? えっと、このメモは一体……??」


「こんなところに挟むものにしては、あまりにも不可解だ。もしかして、この部屋の机のことを指しているのか?」


「ローランお兄様が、無意味なことをするとは思えません。確かめてみましょう」


 さっそく、書斎に置かれた机を調べてみたのですが、何も怪しいものは入ってはいませんでした。


 それならぼ、机の下に何かあるかもと思い、二人で一緒に持ち上げようとしたのですが……。


「ん~~~~!! お、重くて動きませんわ……」


「確かに、ビクともしない……地面に縫い付けられているようだ」


「なにか仕掛けがあるのかもしれません。もう少し机を調べてみましょう」


 ここにもきっと仕掛けがあるのでしょう。だってここは秘密の部屋……簡単に見つかったら、秘密がバレてしまいますもの。


「……この机の裏にあるこれは、何でしょう? 出っ張っていて、押せるようですが……」


「本当だな。俺が押すから、君は少し離れていてくれ」


「そんな、私が押しますわ!」


「いや、俺がやる。俺なら何があっても、対処できる」


「……わかりました。お願いいたします」


 机の出っ張りを押すと、机が鈍い音を立てながら動き出しました。


 その動きは直ぐに止まったのですが、代わりに机の下から、古びた箱が出てきましたわ。


「この箱は一体……中身は……書類と、手紙?」


「随分と多いな。俺が書類を確認するから、シエルは手紙を頼む」


「わかりました。えっと……」


 ――シエルへ。君がここに到着してこの手紙を読んでいるということは、僕は君の傍にいないのだろう。


 僕は前々から、フィルモート家の悪事のことを調べていた。その調査の結果は、手紙と一緒にあった書類にまとめてある。


 調べれば調べる程、君の家族の悪事は出てきた。父君が徴税した金の一部を、賄賂として国王に渡していたり、君の姉君が君をいじめるのでは足らず、外部から奴隷を雇って嬲っていたようだ。


 極めつけは、母君が自分や姉君より美しい女は娼館に売り飛ばし、最悪殺してしまうこともあったそうだ。その中には、君の本当の母君の情報もあった。


 これだけの情報があれば、フィルモート家を潰すことが出来るだろう。だが、まだ僕にはそれをすることができない。今崩壊させたら、君が巻き込まれてしまうからだ。


 だから、君と正式に結婚をして、我がトラルキル家に来てから暴露するつもりだったのだが……どうやら最近、僕の命を狙う輩がいるようだ。


 もちろん、ただでやられるつもりはないが……これを読んでいるということは……そういうことだよね。シエル、一緒にいてあげられなくて、助けられなくて、本当にごめん。


 その資料は、君の好きにして良い。有効利用しても良いし、燃やしてしまってもいい。


 ただ、最後にお願いがある。


 過去や僕に縛られないで、シエルいう女の子として、幸せになってほしい。


 それと、君はとても素敵な女性だから、この先必ず素敵な人と出会えるだろう。それが伴侶だったり、友人なのかはわからないが、その繋がりを、大切にしてほしい。


 とにかく……君の幸せをこの目で見届けられないのが残念だけど、空の上から見守っているよ。


 シエル、君との時間は、本当に楽しかった。君に出会えたことが、僕にとって最高の宝物だ。もう一度になるが、僕のことは忘れて、必ず幸せになってね。約束だよ――


「……僕のことを忘れて、必ず、幸せになって……」


「…………」


「……その書類……私にも見せてください」


 受け取った書類は、フィルモート家が行った、違法な闇商人や娼館と行った取引や、徴収した税の記録の改ざん、賄賂の記録、多くの人の証言といった、フィルモート家が犯した罪の証拠が書かれてました。


 つまりこれは……フィルモート家の悪事そのものというわけですね。きっとこれでも、氷山の一角でしょうね……ははっ……。


「……シエル……」


「……は、はは……そうだったのですね……あはははははは!!」


 たかが外れたように、座りながら笑いつづけました。


 そうでもしないと、この体を灰にしてしまうくらい熱い怒りを抑えきることが出来ません。


 しかし、そのごまかしも長くは続きませんでした。次第に笑いは止まり、体中が怒りで真っ赤に染まり、体中に力が入りました。


「ローランお兄様は……自殺じゃなかった。殺されたのですわ……それも、フィルモート家に、こんなふざけた悪事を隠ぺいするために! 尊い一人の命を奪った!! 許さない……絶対に許しませんわ! ローランお兄様や領民の皆様の敵、そして私を絶望のどん底に落としたあいつらに……復讐してやる……!!」


 私は、血が出る程爪を手のひらに食い込ませて拳を作ると、その拳を地面に振り下ろしました。


 元々復讐はするつもりでしたが、この一件で完膚なきまで復讐しようと思えましたわ。

 とはいっても、殺したりはしません。彼らが最も長く、最も苦しむ方法で復讐をして差し上げますわ。


 ……ローランお兄様。私はまだ幸せになれませんし、あなたのこと……過去を忘れられません。私が復讐に成功して、はじめて過去と決別して、未来に進めると思いますの。


 だから……お叱りは後でいくらでも聞きますから、今だけは見守ってくださいませ……。


「エヴァン様、私……前からずっと、家族へ復讐をしたいと思ってました。その気持ちが、改めて強固なものになってしまいました。どうにかしないと、私は未来に進めません!」


「…………」


「復讐なんて、愚か者がすることでしょう。そんな愚かな人間は、あなたに相応しくありません。だから、あの時の答え……もうしわけないですけど、私はあなたと――」


「相応しくない、か。なら問題ない。その復讐、俺も手を貸そう」


 手を貸そう。その短い単語の意味を自分でかみ砕いて理解するまで、私はマヌケに目をパチパチとやって……数秒後、えぇぇぇぇ!? と大きな声を出した。


「な、なにを仰っているのですか!? これはエヴァン様には関係のないことですのよ!?」


「婚約者の家のことなんだから、無関係ではないはずだ。それに、俺が手伝えば、俺も君と同じ復讐者だ。これなら相応しくなれるのではないか?」


「エヴァン様……」


 こんな愚かなことに、自分から巻き込まれにいく必要なんて、どこにもない。

 だというのに、エヴァン様は全部私のためだけに、ここまでしてくださっているなんて……。


「本当にあなたという人は……どれだけ優しいのですか……」


「普通ではないか?」


「普通なわけないですよ、もう……! えっと……これが終われば、きっと私は未来に目を向けられると思うんです。今よりもきっと明るい未来に……その時になったら、今度こそ私の答え、聞いてくれますか?」


「もちろんだ。俺は逃げも隠れもしない。だから、俺と一緒にいてくれ」


 私は静かに差し出されたエヴァン様の右手を、ギュッと掴んで肯定の意を示した――

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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