第二十四話 秘密の部屋
「そんな……」
何か良くないことがあったのは明白でした。これほどまでに酷い現実を直視したせいで、ショックを隠し切れず……その場にぺたんっと座り込んでしまいました。
「一体何があったんだ……? 見張りはいないようだから、調べることは出来そうだ。シエル、立てるか?」
「……はい」
この様子では、ルネ以外の使用人の方々の安否は絶望的でしょうが……立ち止まる時間も、泣いてる時間もありません。とにかく何があったか、手がかりを探さないと。
「とはいったものの……一体どこから手を付けるべきか」
「瓦礫の山ですからね……」
とりあえず近くの瓦礫を退かそうと思いましたが、私の力では瓦礫を退かすなんて、出来るはずもありませんでした。
「俺が破壊してもいいが、さすがにこの規模を全て除去するのは時間がかかる。それに、もし手がかりがあって、それも一緒に破壊してしまったら終わりだ」
「……あっ」
どうするべきか考えていると、ふとルネが私に伝えてくれた言葉を思い出しました。
「ローランお兄様の、秘密の部屋」
「それは、彼が言っていた言葉だな」
「あれだけボロボロになってまで、私に伝えてくださったお言葉ですもの。きっとそこに手がかりがあるのですわ!」
「可能性はあるだろうが、その部屋の場所はわかるのか?」
「それが、わからないんです……秘密の部屋があるというのは伺っておりましたが、場所までは……」
いや、ルネがわざわざ私に伝えたということは、私がわかると思って伝えてくださったのでしょう。
ということは、どこかにヒントがあるはず……考えて、私。絶対に見逃しているヒントがあるはず!
「それにしても、秘密の部屋か……いかにも冒険譚で出てきそうなものだな。冒険譚が好きで探検をするくらいなのだから、ローラン殿はよほど冒険譚が好きだったのだろうな」
「冒険譚……?」
そういえば……あの物語の中で、主人公とヒロインが寝泊まりをしていた、秘密の部屋が登場しておりました。
その場所は、大きな木のうろが入口となっている、何とも冒険心をくすぐられるもので……!
「エヴァン様、素晴らしい着眼点ですわ!」
「し、シエル? 急にどうしたんだ? その、突然手を握られると……」
「あ、ごめんなさい! 興奮してつい……」
ほんの少し慣れてきたような感じではありますが、いまだに触れると緊張するエヴァン様が可愛い……じゃなくて!
「エヴァン様の今のお言葉のおかげで、もしかしたらって場所が思いついたのです!」
「なんだって? それはどこなんだ?」
「こちらです!」
私は、一旦廃虚となった屋敷を離れて、森の中に入っていきます。そして、その森で一番大きな木の所までやってきました。
「子供の頃、ローランお兄様と一緒にここに来て、秘密基地にして遊んだことがありますの。きっと何か手掛かりが……あっ!」
うろの中に入ってみると、地面と見分けがつかないようにカモフラージュするために、茶色の布がかけられているのを見つけました。
それをそっと退けると、地下へと続く怪しい階段を発見いたしました。
「これが秘密の部屋への道のようだな」
「ええ、おそらくそうでしょう」
先程の抜け道と同じように、壁にかけられていた松明に火をつけて、ゆっくりと降りていきます。
かつん、かつんと響く階段は、驚くほど急でした。手すりもありませんので、油断したら一番下まで転げ落ちてしまうでしょう。
「シエル、ここまで来たら焦っても意味は無い。だから、気をつけて降りるんだ」
「はい。エヴァン様も、お気をつけて」
互いを心配しながら、更に歩みを進めていくと、ついに一番下へと到達出来ました。
そこには、私達の侵入を阻むように、大きな扉が鎮座しておりましたわ。
「……? この扉、鍵がかかっているのか、開かないな。秘密の部屋というくらいだから、当然といえば当然か」
「鍵……? エヴァン様、この扉には鍵穴がありませんわ」
「言われてみれば、確かにそうだな。なら、どうして開かないんだ? 仕方がない、俺の剣で――」
「いえ、それには及びませんわ。きっとこの扉は……」
私は扉のノブに手をかけると、押すでも引くでもなく、真上に向かって力を入れました。
すると、ずっと沈黙を保っていた扉は、驚くほど簡単に私達に道を示してくれました。
「こんな仕掛けとは……単純だが、案外気づかないものだな」
「この扉の仕組みも、冒険譚に出てきたものですの。だから、気づけましたのよ」
偶然か、はたまた必然かはわかりませんが、ローランお兄様と読んだ冒険譚の知識が、役に立つとは思っていませんでしたわ。
もしかしたら、この先にあるものも、その知識が活かせるかもしれない……そんなことを思いながら、秘密の部屋に入ると、そこは小さな書斎でした――
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