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第二十話 絶対に諦めませんわ!

「ルネ、どうしてあなたが……!?」


「シエル、彼は確か……ローラン殿の家に仕えていた人じゃないか? パーティー会場で、何度かローラン殿と一緒にいるところを見たことがある」


 エヴァン様の問いに、私は小さく頷いてみせました。


 このお方……ルネは、私がローランお兄様と知り合った時から、トラルキル家に仕えていたお方です。誰に対しても紳士的で優しく、私にも優しくしてくださいました。


 そんなお方が、どうしてこんなことに……!?


「誰が……一体誰がこんな惨いことを!?」


「シエル、落ち着くんだ。まずは彼の治療を優先しなければ」


「エヴァン様……はい。その通りですわ」


 私は、エヴァン様のおかげでなんとか怒りを静めてから、ルネの怪我の具合を確認いたしました。


 ルネの怪我は、想像を絶するほど酷いものでした……体中は傷だらけで、特に右腕と喉の傷が酷いです。これでは腕を動かすことも、まともに喋ることも困難でしょう。


「シエル、治せそうか?」


「出来る限りのことはやってみますが……この右腕は治りませんし、喉の傷も酷いです……残った手足も、動くかどうか……」


「そんな、シエル様の力でも無理なんですか!?」


「聖女の力は、多くの病気や怪我を治せますが……あくまでそれは、自分で治癒が出来る範囲のものしか不可能なのです」


「なるほど……例えば軽いものなら切り傷、重いものなら骨折といったものでも、自然に治癒するものなら治せるということか?」


「はい。しかし、切断された腕や、機能が完全に死んでしまった器官を治すといったことは、私にも出来ません」


 聖女の力といっても万能ではありません。悔しいですが、治したくても治せないものは、どうしようもありません。


 ですが、やる前から諦めるなんて、したくありません。


「エヴァン様、約束の時間まで、あとどれくらいありますか?」


「大体、一時間くらいだ」


「一時間……わかりました。全力で、彼の治療をいたします」


 私はいつも降ろしている銀色の髪を後頭部で一つにまとめてから、集中して聖女の力を使う準備を始めました。


 このお方には、たくさん優しくしてもらった恩があります。だから、絶対に救ってみせますわ!


「…………」


 ゆっくりと息を整えて、自分の力をルネに注ぎ込むような感覚で、聖女の力を使っていきます。

 すると、体の傷が少しずつではありますが、塞がっていきました。


「傷が……いいぞ、頑張れシエル!」


「はい……!」


 ――その後、出だしは順調でしたが、段々と傷の治りが遅くなっていきました。


 それほど傷が深いというのもありますが、私の体力が無くなってきているというのも大きいです。


 聖女の力というのは、使用者の体力を使って発動させる特別な力。なので、長く使っていれば体力が無くなり、力が弱くなっていくどころか、最悪使用者が亡くなってしまうこともあります。


「シエル、凄い汗だぞ……大丈夫か?」


「だい、じょうぶ……!」


 強がりと自分への鼓舞を同時に行いながら、最後の力を振り絞って治療にあたります。


 もうどれぐらいの時間が経ったのでしょう? 十分? 三十分? わかりませんが、これ以上時間をかけていたら、私の体力が持たないでしょう。


「これ以上は無理ですよ! 残りの治療は、また後に……!」


「駄目ですわ! この怪我はあまりにも深い……今生きていることが奇跡に近いのです! こんな状態で治療を先延ばしにしたら、もう彼は耐えられないです!」


 絶対に、絶対に私が助けてみせる。そう思ったのも束の間、急に体力の限界を超えてしまったのか……体から力が抜け、目の前が霞んできました。


「あっ……そん、な……」


 私の体が、力なく後ろに倒れていくのがわかりました。


 ああ、このまま私は倒れてしまう。体を強く打ち付けて、意識を失って……結局何もなしえない。私はなんて弱い人間なんだろう。


 そんなことを、驚く程ゆっくりに見える天井を見ながら考えておりましたが……何かに背中を支えられて、床に激突することを防いでくれました。


「シエル、頑張れ! 君なら出来る!」


「エ、ヴァン……さま……」


「大丈夫だ、俺がついている! 俺が君のことを支えるから!」


「……はい……!」


 何の根拠もない、何の飾り気もない応援の言葉。しかし、今の私にはそれが支えとなり、体に力を与えてくださいました。


 その力を使い、今までで一番強い光が部屋の中に広がり……収まった頃には、彼の傷は塞がり、ゆっくりと目を開きました。


「ルネ……! よかった、目が覚めたのですね……!」


「あ……ああ……シ……エ……さま……?」


「無理に喋らないでください……! それ以上喋れば、喉に更に負担が……!」


「ロー……ン……ひみ……へ、や……」


 その言葉を最後に、ルネは再び眠りについてしまいました。


 あれだけの怪我だったのですから、著しく体力を消耗してしまっているのでしょう。このまま、もう少しだけ眠らせてあげましょう。


「シエル、大丈夫か!?」


「なんとか……エヴァン様のおかげで、なんとかやりきれました……」


「俺は何もしていない。全て君が頑張ったからだ。だが、今日は帰って休んだ方が良い。申し訳ないが、村長殿の家に来るはずの男性に、ここに迎えに来てもらうようにお願いしてきてもらえないだろうか?」


「わかりました、お任せください!」


 ここまで案内をしてくれた男性は、勢いよく小屋を飛び出していきました。


 一時はどうなることかと思いましたが……なんとかルネが助かって、心の底から安心しましたわ……。


「ごめんなさい、エヴァン様……私、少し疲れたので……休んでもいいですか?」


「ああ、もちろんだ。あとのことは俺に任せておけ」


「ありがとう、ございます……」


 エヴァン様に優しく頭を撫でられて、ホッとした私は……そのまま全てをエヴァン様に委ねるように、意識を手放しました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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