最終話、空に奏でる祈り
頭にバンダナの満里奈とか7年近く前。
懐かしい話だ。
そう考えながら思い出す。
結婚した詩織が「お姉ちゃんって極端だよね」と言いながらクスッと笑う。
俺達はいつものマンションに集まっていた。
高校を卒業し詩織は女医になる為に医学部に入ってから猛勉強をしている。
反対に満里奈はスクールソーシャルワーカーを目指して勉強している。
俺はというと...今、資格を取る為に頑張っている。
「確かに極端だけどさ。あまりなんか言わないでよー」
「いやいや。あはは」
「確かにな。極端さは変わらずだわ」
それから俺は苦笑する。
すると詩織が「私...良かった」と言った。
俺は「?」を浮かべながら詩織を見る。
「有紀もお姉ちゃんも変わらない」
「一番変わったのは詩織だね」
「皮膚病が治るなんてね」
詩織は腕を見る。
実は詩織の腕からアザが無くなった。
皮膚病が完治してから丁度1年が経つのだがその分、1年前から腕のシミが無くなっている。
俺はその腕のごく微妙に残っているシミを見ながら詩織に向く。
すると詩織は手を触りながら「うん。みんなのお陰だね」と柔和になっていた。
「ああ」
「...有紀と結婚してから...1年だね」
「確かにな。丁度婚約してから1年が経つよな」
「有紀と結婚出来た事が幸せ」
「見せつけてくれるね。あはは」
満里奈は苦笑しながら俺達を見る。
俺は「お前も今度婚約するじゃないか。満里奈」と告げる。
すると満里奈は「だね。こんなに幸せになると思わなかった」と言う。
「満里奈も頑張ったな」
「...私は頑張ったというよりかは...みんなのお陰だよ」
「みんなのお陰って...私は何もしてない。...全てお姉ちゃんが頑張ったお陰だよ」
そして詩織は「色々あったけど。...梅毒も完治して...お姉ちゃんは必死に頑張った。誇って良いんじゃないかな。それは」と言う。
満里奈は「私は頑張ったつもりは無い。だからみんなのお陰だね」と話す。
そうして笑みを浮かべあっていると電話がかかってきた。
それは隆道だった。
「ああ。隆道か」
「うす。隆道だ。何してんだ今」
「お前の婚約者諸共に集まってるぞ」
「あー。そうなんだな。んじゃまあ俺も行くか」
「おう。来いよ」
「とりあえずもう少しかかるからさ」
それから隆道は電話を切る。
俺はスマホを仕舞いながら「満里奈。隆道が来るってよ」と言う。
満里奈は「うん。ありがと」と言う。
俺は「愛しい恋人が来る感想は?」とニヤッとする。
満里奈は「冗談はやめてよー」と苦笑い。
「ははは」
「詩織も黙ってないでなんか言ってよ」
「まあね。あはは」
そして暫くしてから隆道が合流。
俺達は立ち上がりある場所に向かう。
それは...中本さんの所に。
☆
半年前に中本さんは都合により第一線から退いてから今は別の仕事をしている。
中本さんは成長した俺達を見てから笑みを浮かべてから「やあ」と変わらない感じで声を掛けてきた。
喫茶店。
俺はその言葉に「中本さん。お久しぶりです」と言ってから中本さんを見る。
詩織、満里奈、隆道も頭を下げた。
「それで...早速ですまないけど...父親の近況はどうかな」
「...彼は本当に重々に反省しているそうですけど私達は彼とは絶縁します。今までの事もあるし...それに彼には私達は要らないんです」
「...そうか。...分かった。君達も彼も決意はしているんだね」
「はい。私、あくまで決意は固いです」
「...彼は子供じゃない。だからこそその選択肢はアリだと思うよ」
「子供ではないですね」
「家族が再生するにせよ。どちらに転ぶにせよ私達は彼には要らないでしょう」
「確かにね。君達はしっかり考えたんだね」
「中本さんは...」
「僕は区切りは一区切りだけど既についている」
そう答える中本さん。
俺達は中本さんを真剣な顔で見つめる。
中本さんは「...僕は...母さんのお墓に報告したよ。墓前にね。やっと一区切りかなとは思う」と答えた。
そんな中本さんに詩織と満里奈は「...すいませんでした」と謝る。
中本さんは「謝らないでくれ。君達は何も悪くないからね」と言った。
「君達は被害者だ。だから君達には謝る必要は無いよ」
「しかし...」
「君達が謝る必要は無い。...だけどまあ彼には一言なり謝罪は欲しいね。罪を認め一生をかけ償うべきだ」
あくまで中本さんは家族を強姦され殺された。
その事を考えるとその言葉には深みがある。
考えながら俺達は話をした。
それから時間は経ち...。
☆
家に妻の詩織と帰宅した。
それから俺は詩織を見てみる。
詩織は俺に複雑な顔をしていた。
俺は電気を点けてから「詩織」と言う。
すると詩織は顔を上げた。
「気にするな、とは言え無いけどさ」
「うん」
「...だけど気にしても仕方がない事もある」
「だね。有紀。分かってるけどね」
「...今度さ。中本さんのお母さんの墓参りに行かないか?」
「うん。絶対に行きたい」
「ああ」
それから鼻息を荒くする詩織。
俺はそんな詩織に笑みを浮かべながら居ると詩織が俺に向いた。
そして「今日は何を食べる?」と聞いてくる。
俺は「そうだな。ハンバーグが食べたい気分だ」と答える。
詩織は「はい」と言いながら台所に向かう。
そんな姿を見つつ俺は窓から外を見た。
結論から言ってやっと落ち着いた様な気がする。
自殺したりした糸水達の墓参りも今度行こう。
今の状況が落ち着いたら。
fin




