19、お姉ちゃんのした事は許せません。...だけど
取り調べを受けていた満里奈達の父親は。
結論から言ってかなり前の強殺の被告だった。
つまり犯人だった。
あまりの衝撃に俺は「...」と無言になる。
満里奈もショックを受けていた。
それから翌日。
「...来てくれてありがとうね」
俺達は中本さんに呼び出されて警察署に来た。
中本さんは苦笑しながら相変わらずの笑みで迎えてくれた。
俺は「...中本さん」と声をかける。
中本さんは「...言わなくとも分かるさ」と笑みを浮かべた。
「...大変だったね」
「大変なのは中本さんと詩織達でしょう。...俺は」
「確かに僕は思うところはある。だけどね」
それから膝を曲げて詩織に目線を合わせる中本さん。
そして中本さんは「...詩織さん」と声をかけてから安心させる様な声音を発する。
俺は無言でその光景を見ていた。
詩織は中本さんを見る。
「はい」
「絶望するな、とは言えない。...だけど悪は裁かれなくてはならないから」
「...はい」
「本当になんとも言えない心情だ。僕もね。だけど希望を失わないでほしい」
「...」
じわっと涙を浮かべる詩織。
それから涙を流した。
すると中本さんは詩織に優しくハンカチを差し出した。
詩織はゆっくりそのハンカチを受け取り涙を拭く。
そして詩織は「...私は...希望は持ってます。でも私は死んだ方がマシな気がします」と言う。
「...詩織さん...」
「私は何の為に...」
「詩織。落ち着いて」
それから俺は詩織を抱きしめる。
すると詩織は縋りながら涙を浮かべた。
俺はそんな詩織を見てから居ると「個人的に」と中本さんが切り出した。
中本さんは「...俺は...犯人を恨んでいるけど...でも怒りはもう無いんだ。寧ろどうしてそういう行動を取ったのかが気になるんだ」と言う。
「心理学の問題だけどね」
「...私は許さないです」
「そうだね。基本的にはそうなるだろう。だけど本当にそれが全てなのか?って思っている。...まあ仕事の性かもしれないけどね」
「中本さんはすげーっすよ」
「俺はそんなに凄い人間じゃない。ただ怒る考えをすげ替える。変えているだけだよ」
「それを世間では凄いと考えるかと」
そんな話をしていると中本さんに「父をしっかり裁いてほしいです。一切甘えは要らないです」と告げた。
中本さんは「分かってる。でも裁く判断をするのは警察じゃない。裁判所の様な司法だからね」と笑みを浮かべる。
「君達を見ていると...本当に心が暖まるよ」
「そんな。私達の方です。それは」
「...個人情報に当たるかもだけど君達は...カップルなのかな?」
「はい」
詩織が驚く。
それから赤面した。
俯いたその姿を見ながら笑みを浮かべる俺。
そして中本さんを見る。
「俺達は愛し合ってます」
「...そうなんだね。...俺は君達の様なカップルを見た事がない。本当にお似合いだね」
「ありがとうございます」
詩織を見る俺。
これ以上無いぐらいに詩織は幸せそうな顔をしていた。
それから俺の顔に気付きゆっくり赤面していた。
そして中本さんはにこやかに立ち上がり扉に手をかける。
「じゃあ...今日は来てくれてありがとうね」
「俺達も近況を聞けて良かったです」
「私も...思います」
それから俺達は部屋を出る。
その際に中本さんが「時に」と言った。
「例の犯人も必ず捕まえるから」と真剣な顔で言う。
俺達は顔を見合わせた。
それから頭を下げる。
「宜しくお願い致します」
と言う。
それから俺達は警察署を後にし。
また迎えに乗った。
☆
逮捕された満里奈達の父親はニュースで報道された。
だが名前は伏せられていた。
諸般を考慮して、とはなってはいたが。
まさかこれも中本さんが?
な訳無いか。
「有紀さん」
「?...どうした?詩織」
詩織は俺の家に来ていた。
俺に寄り添いながら不安げに話している。
そんな詩織を見ながら俺も話を聞いていた。
「私は...殺人犯の娘。...幸せになれますかね?」
「満里奈もそうだが。...俺は必ずお前らの事を守りたい」
「...アハハ。ありがとうございます。感謝します」
「全ての因縁に決着つけないとな」
「...ですね。私、有紀さんと幸せになりたいので」
それから詩織は笑みを浮かべる。
だけどまだ不安が取れないらしい。
俺はその姿に肩を強く抱く。
それから詩織を抱く。
「私、世間の目が怖いんです」
「気持ちは分かる」
「どうなるんでしょうか」
「何があっても守る。必ず」
「...はい」
そうしていると満里奈から(忙しい時にごめん)とメッセージが入ってきた。
俺は(満里奈。どうした)と聞く。
すると満里奈は(詩織...大丈夫?)と書いてきた。
俺はその言葉に(ああ。大丈夫だ)とメッセージを打つ。
(落ち着いてきたから)
(...ありがとう。有紀。その役目は私じゃ厳しいから)
(ああ。分かってる)
(...ありがとう)
そして画面を眺めていると詩織が「貸してもらえますか」とスマホを貸すように要求した。
俺は詩織に渡す。
すると詩織は(詩織です。お姉ちゃん大丈夫)と書いた。
満里奈は(詩織...)と書いた。
(お姉ちゃんは反省し。父親は地に落ちた。それだけだね。お姉ちゃん。頑張ろう)
(うん。分かってる)
(お姉ちゃんのサポートも無いと厳しい)
(...分かった)
その姿を見ながら俺は画面を見る。
そうしていると詩織は「私ですね」と切り出した。
それから「お姉ちゃんのした事を許さない。だけどお姉ちゃん自体を許そうと思うんです」と俺を見る。
まさかの言葉に俺は驚愕する。
「だけどお姉ちゃんのした事は許しませんよ」
「...成程な」
「はい。...でも大人げなく苛つくのも子供っぽいですから」
「...」
俺はその言葉に詩織を見る。
詩織の頬に右手を添えた。
そして笑みを浮かべた。
「大人だな。詩織は」と俺は柔和になった。




