18、事情聴取
「有紀さんには感謝しかないんです」
「...感謝?」
「はい。...私を救ってくれた感謝。そしてお姉ちゃんを救った感謝。ありのままの感謝です」
「俺は別に満里奈を救った訳じゃないぞ。...ただ...奴が頑張っているから報酬をやっているみたいな感じだぞ」
「世間一般から見たら手助けです」
その言葉を詩織は言う。
そして俺の手を自らの手で優しく包んでくる。
俺はその姿に「...」と考えながら詩織を見ていると詩織は「こんな醜い私が貴方を好きになっても良かったんですかね」と卑下する。
俺はぺちんと詩織の頭にデコピンをした。
「お前がナイーブになってどうするんだ」
「...でも私、皮膚も弱いですし」
「お前が俺を好きになってくれて感謝だよ」
「...ですかね?」
「ああ。...俺はもう絶対に恋をしない、好かれないって思っていたしな」
「...あはは」
そして歩く俺達。
すると詩織が「有紀さん」と俺を見てくる。
俺は「ああ。どうした」と言う。
詩織は「貴方を好きになって良かった」と笑みを浮かべる。
俺はそんな言葉に「...」となる。
「お前の親父は...その。屑だけどさ」
「...はい」
「お前という存在を産んでくれた事には感謝だな」
「...!」
「実はなんだけど。...俺は...お前を好きになりつつある」
その言葉に固まる詩織。
そして「え?」となって俺を見上げる。
俺は「...俺はもう二度と恋はしないって思った。...だけどお前という存在に段々惹かれていっている」と話した。
すると詩織は「え...それ本当ですか?」と驚きながら目を丸くする。
「...詩織。もし良かったらだけどさ」
「はい」
「俺なんかで良ければ付き合ってくれるか」
「...勿論です」
そして詩織は俺を柔和に見上げる。
涙を浮かべた。
俺はその顔を見ながら「じゃあ恋人同士だな。晴れて」と言う。
すると詩織は「はい。恋人同士ですね」と俺に抱き着いてから涙を浮かべた。
「...愛してます。有紀さん」
「ああ。有難う。俺も愛してる。詩織」
そんな感じで抱き合ってから詩織は離れる。
それから俺を見上げてくる。
「...お父さんと分かち合えるとは思いませんが彼をどうにかしないといけません」と言ってから俺を見据える。
俺は「...そうだな」と返事をした。
「それも...」
そこまで言った時。
俺のスマホに電話がかかってきた。
こんな時に。
だがそれは...中本さんからだった。
え?
俺達は「まさか」と言いながら心臓をバクバクさせてスマホに出る。
「もしもし。こんにちは。〇〇警察署の中本です」
「...中本さん。こんにちはです。どうかされました?」
「...すまないが君には個人的な事で話が出来ないのもある。そこに詩織さんか満里奈さんは居るかな」
「はい」
俺は直ぐに詩織を見る。
そしてスマホを手渡した。
詩織は深刻そうにそれを受け取る。
それから詩織は「はい」と返事をした。
声は聞こえない。
何を話しているのだろうか。
「...え」
次の瞬間に人込みの中でその声だけ聴こえた。
その小さな呟きにも関わらず。
そしてギリッと歯を食いしばってから「...本当ですか」と返事をした。
俺はその顔を見ながら眉を顰める。
「...中本さん。その一部だけ空田くんにも話して良いですか」
「ああ。事情を聴いている事をね」
それから俺を見てくる詩織。
その詩織は涙を浮かべていた。
俺は「...???」と青ざめる。
詩織は「...お父さんが警察に事情聴取を受けています」と告白した。
俺は「は?」と更に青ざめた。
「容疑...殺人未遂容疑だそうです」
「...殺人未遂ってなんだ。...何をしたんだ?」
「...10年以上前に中本さんのお母さんを強姦、殺害した容疑での聴取だそうです」
その言葉に「...な」と声が出る。
締め付けられた様な感じの。
捻り出した様な掠れた声。
そして俺は「すまない。電話変わってくれるか」と慌てる。
「...中本さん。それは...」
「...この様な形になって残念だが。...だけど個人的な恨みだけじゃなくて。...僕は君達にしっかり配慮をするから」
「...」
「先ずは報告まで。...すまない」
そして俺は静かに電話を切る。
それから詩織を見る。
詩織は「...すいません。有紀さん」と俺を見上げる。
涙をぼろぼろ流しながら「私と別れて下さい」と言ってきた。
...は?...どう、いう事だ。
「まだ分からないですけど殺人犯の娘なんて結ばれる必要性は無いですから」
「待て。詩織。...それは...」
「犯罪者の娘なんて...有紀さんを傷付けるだけですね」
「詩織!!!」
俺は詩織を抱きしめる。
それから俺は「落ち着け。深呼吸してくれ」と言う。
詩織は「...」と無言のまま抱きしめられていた。
俺は「これからの事はこれから考えよう。...一先ず落ち着いて」と抱きしめる。
「...私は父親に何にも愛されず。...なんで生きてきたんでしょうね」
「...」
「情けない。あのクソ父親が」
そして詩織は号泣し始める。
人込みにも関わらず泣き始めるが。
雨が降るが。
詩織を抱きしめていた。




