13、新たなる道を行くから
彼女は...というか。
満里奈はもがいている。
俺的にはそう思う。
だけど幾らもがいているとはいえ。
満里奈がした事が消える訳じゃない。
「...」
俺は授業中に外を見ながら欠伸をする。
それから俺はぼんやり考えているとスマホがバイブした。
俺は「!」と思い時計を見る。
時計の時刻はあと何分かで授業が終わるのを指し示していた。
少しだけ待った。
そして授業が終わり俺は挨拶をしてからスマホを見る。
(有紀さん。お姉ちゃんですけど梅毒でした)
(...梅毒か...)
(梅毒は繰り返し襲ってくるので深刻だと思います)
(...検査したのか)
(ですね。血液検査して判明しました。...彼女は自覚症状が無くて...まあその。初期の初期らしいですけどね)
(俺達はそんな事をしたことが無いから分からんが...そうなのか)
(病院のお医者さんはそう言ってました)
俺は盛大に溜息を吐きながら(これからどう動く?)と聞く。
すると(お姉ちゃんには重々反省してもらいたいですが...相手の事も気になります)と詩織は書いてくる。
俺は(確かにな)と答える。
詩織は(じゃないと話にならない部分もあるので。それにうつした奴はやり逃げですしね)と怒る。
(まあな)
(捕まえるとかはしませんが。...心底許せないです)
(だろうな)
(私のお姉ちゃんを汚して逃げるその根性も...腐っていますがね)
(まあそうだな...)
その言葉を見てから俺は(今どこに居るんだ)と聞く。
すると(はい。...今は治療薬を貰って服用、学校に来ました)と書いてくる。
俺は(お前も学校行ったか?)と書く。
詩織は(はい。なのですいませんが外しますね)と書いてくる。
(気を付けて学校行けよ)
(はい。頑張ります)
それからメッセージは途切れた。
すると教室のドアが開いた。
その事にドアの方を見るとそこに...満里奈が立っていた。
俺は驚きながら「満里奈」と声をかける。
満里奈は「話が...あるんだけど」と俺に言う。
「それは詩織の事か?」
「違う。私の...事だけど」
「...分かった」
俺はざわざわする教室の中で隆道に後処理を頼んでから満里奈に付いて行く。
そして俺達は屋上にやって来た。
満里奈はドアを閉めてから風を感じつつ俺に向く。
「...私が初めの頃、潔かったの覚えてる?ファミレスの件だけど」
「ああ。お前が浮気した直後な」
「私は...あの時、混乱したの」
「つまり俺にバレたのが、か」
「...濃厚なキスをしたっていう話もしたよね」
「したな」
「あれは私の意思じゃないんだけど...まあその説明はどうでも良い。...私は彼に依存していた」
「...」
「快楽を求めすぎた。...間違えた道を選んだ」
「...ああ」
「私、貴方に見せたいものがある」
その言葉に俺は満里奈が見せたスマホを見る。
俺は「?」を浮かべて満里奈を見る。
満里奈は「今から変わる決意を見せる」と言ってからどこかに電話をし始めた。
そしてスピーカーにする。
「はい」
「もしもし。鶴弥?」
「ああ。満里奈か。どうした」
「話があるの」
「...話?」
「私、貴方と別れる。そしてもう会わない」
俺は「!」となってから満里奈を見る。
満里奈は「連絡先も消す。そして何も残らない様にする」と話す。
すると相手の鶴弥という男は「あ?お前ふざけんなよ」と豹変した。
優しそうな口調が暴言と化す。
俺は静かに見守る。
「お前の事、ネットにばらすぞ」
「鶴弥。そしたら貴方の事もネットにばらすよ。そこらへんにへこへこする奴だって」
「ふざけんな。殺すぞ」
「...」
満里奈は覚悟していたかの様な顔を見せる。
表情を浮かべながら言葉を慎重に選び言った。
「大体先ず貴方も貴方でしょ。私、梅毒になったんだけど」と息を吸い込んでから吐く様に話す。
すると鶴弥は「知らんがな」と言った。
「お前、彼氏が大切だって事か?俺の事は遊んだらポイかよ」
「貴方の事も大切だった。...だけど私は...新しい道を行く」
「...はぁ。...それで消えろってか?ふざけてんなオイ」
「鶴弥。貴方も分かってよ」
「分かるかクソボケ」
俺は溜息を盛大に吐く。
そして満里奈を見る。
満里奈は通話を続ける。
「私、足を洗うの」と言いながら。
すると鶴弥は「またしようぜ。そんな事言わずによ」。
いやいや闇バイトの指示役かなにか?コイツ?
「あー。もしもし」
俺は堪らず声をかける。
するとその鶴弥は「...なんだお前は」と凍てつく様な声を上げる。
俺は「俺の名前なんぞどうでも良い。俺は満里奈の彼氏だ」と声をかける。
鶴弥は「お前...ああ。成程な」と言う。
「テメェなんぞの為に満里奈は俺の下から去るってか?」
「どうでも良い。いい加減に諦めろよ。未練がましいぞお前。女かよ」
「...嫌だね。俺はアイツが好きなんだ」
「...お前のやっている事は犯罪だ。脅迫行為だぞ」
「は?悪人と悪人のやっている事なのに脅迫行為もある訳ないだろ」
それは確かにな。
だがコイツはそれ以上に酷い。
そう思いながら「お前のやっている事はあくまでしつこさがある」と言う。
それから「諦めろよ」と声をかける。
すると鶴弥は少し考えてから「...諦めるつもりは無いね。まあ覚えておきな」と言ってから電話が切れた。
「お前がしたかったのはこれか」
「うん。関係を断絶するつもりだった」
「お前はこれで良かったのか?」
「...私は贖罪をする。だからその前に必要な事だった」
「...意思表明をするのにか」
「こうでもしないと...貴方の感じじゃ無理だったから」
「...だな」
それから満里奈を見る。
満里奈は外の景色を見ながら「...忙しい中、私なんかに付き合ってくれてありがとう」と言ってから苦笑した。
そして屋上のドアに手をかける。
俺は静かにその姿を見てから口角を上げた。




